5検査機関が支えるコンプライアンス

2003年02月27日 (木曜日)

企業がコンプライアンスを重視する。消費者にとって安全で高品質の商品を提供するには、その裏付けが必要になる。検査機関はそうした繊維製品の評価と技術の指導機関としての役割を担う。5検査機関の活動をまとめた。

評価と技術の高度化に対応/チャネル別対応は日系優位

国内で消費される繊維製品や海外へと輸出される繊維製品。グローバル化に伴い、こうした繊維製品の生産地は多様化する。その一方で、その品質性能、外観品質、表示事項などを客観的に評価し証明する役割が重要になっている。検査機関が取り組むのは、こうした機能である。

検査機関は49年に輸出品取締法に基づく登録検査機関として当時の通産省(現経済産業省)から認定された。日本の繊維産業が輸出で国力を充実させた時期である。

しかし、産業が輸出から輸入、その中心アイテムが糸やテキスタイルから二次製品へと移行するとともに、検査機関は輸入品の取り扱いが増え、二次製品の評価技術を充実させていった。さらに、製造業が海外へと生産基地を移すことで、検査における水際が、中国を中心とした地域を指すようになった。

こうした時代背景から、国内においてはメーカーの開発する新商品の評価測定をカバーし、海外においては不良品・粗悪品の日本国内への流入を防ぐことが検査機関の役割として重要になった。しかも、市場の変化に合わせて、試験、検査、検品業務もより迅速な対応を求められている。

とくに、日本はアパレル、量販店、百貨店が各社ごとに自社基準を設けており、チャネル別の検査が必要という特殊事情がある。こうした細かな対応を実行できるのは、日本の検査機関しかないというのが定評であり、それも強味といえる。

カケン/新機能評価、表示も点検/海外での試験業務拡大

カケン(日本化学繊維検査協会)は、企業のコンプライアンスを支援する。国内では、「新機能製品の評価問題に対応するため、研究部門で新機能の測定方法を確立し、メーカーにフィードバックする」業務を担う。

最近のヒット商品のひとつにマイナスイオン製品がある。カケンは、同心円筒型(ゲルディエン型)のイオンカウンターを導入し、マイナスイオンの測定を始めた。「マイナスイオングッズは、健康志向の中で注目されている。しかし、統一された測定方法や規格はない。業界で行われている測定方法に関する情報を収集、解析し、より適切と思われる測定方法を選んだ」という。

こうした機能性繊維の性能評価は、抗菌防臭、制菌、消臭から電磁波シールド、紫外線ケア、熱特性、吸水速乾性まで多数ある。「その裾野は今後も広がる」とみる。ビタミンや、アミノ酸、キトサン、PHコントロールといったものへの測定要望も強いという。

また、試験だけでなく、「店頭での表示の仕方についての依頼も増えている」。宣伝・販売促進助成物にも企業責任は問われる。表示関連法規には、家庭用品品質表示法、商標法、不正競争防止法、不当景品類および不当表示防止法、PL法、薬事法、消防法、消費生活用製品安全法、工業標準化法などがあり、これを順守することが求められているからだ。

一方、カケンは海外7地域に試験・検査室を設ける。海外生産においても「国内と同じ精度のデータが出る」よう基準、運用に注力し、納期短縮にも努めることで、水際での支援を行っている。

QTEC/二次製品試験中心に/上海、青島に試験センター

QTEC(日本繊維製品品質技術センター)は、93年10月に繊維雑品検査協会、日本メリヤス検査協会、縫製品検査協会の3つの検査機関が統合してアパレルから家庭用品、産業資材まで対象にした繊維製品の総合検査機関となった。「特徴は二次製品に強い検査機関」とし、スーツから羊毛布団まで製品試験を得意とする。

グローバル対応では、89年に設立した日韓検査センター(韓国ソウル市)を94年7月に日韓品質評価センターに名称変更した。韓国衣類試験研究院との業務提携だ。中国の上海市にも94年に進出し、96年4月には上海検験公司と提携し、SIC―QTEC品質評価中心として本格的に活動を開始。青島にも01年4月にSIC―QTEC青島品質評価中心を設立した。青島検験公司との業務提携である。

韓国の日本人スタッフは現在、1人。上海は8人で、青島は3人である。青島の施設はスタート時150平方メートルであったが、昨年秋に500平方メートルに広がった。

また、上海の8人のうち5人は工場指導などで出張が多い。出荷の最終検査、中間検査も行う。「上海は増員を検討するほか、850平方メートルの施設を今月末までにもう250平方メートル拡張する」という。さらに「中国では新しい試験センターの案件もある」と、積極的な姿勢である。

海外機関との交流では他に、政府開発援助事業(ODA)への協力、IDFB国際羽毛協会の認定検査機関としての活動のほか、IAF国際アパレル連盟との交流も行う。

ニッセンケン「エコテックス」150件に/南通で検品・検査・試験も

 ニッセンケン(日本染色検査協会)は、「エコテックス」認証事業を推進する。この「人に環境にやさしいエコロジーな繊維製品のラベル」は、エコテックス国際共同体として世界20カ国の検査機関(1国1機関が原則)が参加し、同一基準(エコテックス基準100)で繊維製品の安全性を審査するもの。

 日本ではニッセンケンが有害物資の分析を行い、認証ラベルを発給する。00年4月から事業を開始し、約3年を迎える。「当初は素材メーカーなど川上企業が多かったが、最近は主要アパレルの認証が増え、150件になった」という。

 アパレルはカジュアルウエア、ベビー・子供服、パジャマ、シャツ、インナー、インテリアなどで、縫い糸や付属品の大手もラベルの発給を受けている。

 また、同ラベルは欧州を中心に普及してきたが、最近は「対米向け織物輸出でも認証の要請がある」とも。人と環境にやさしい繊維製品ラベルとして、全世界的に普及してきた。

 参加3年にもかかわらず、本年11月(5~7日)の支配人会議は、日本が議長国として東京で開催される。日本での事業活動が、欧州勢にも認められたことを意味するものだ。

 グローバル展開では、南通に「南通天山紡織品検整有限公司」を設立。ファニーインターナショナル、南通進出口商品検験公司、南通東帝色織有限公司が合弁で設立し、糸、テキスタイル、二次製品の検品、検査、試験などを担う。現地でも「エコテックス」の認証を行う。

 現在、ニッセンケンは日本人スタッフを9人送る。「検査機関もただ試験するだけでなく、生産から流通までの1ラインとして入る時代。そのためにも、生産者の工程に入っていかないといけない」という考えだ。南通の事業所は日本向けが65%だが、「仕事が増えており、増設も検討」している。

ボーケン/青島に第3の試験センター/花粉対応など新評価測定も

ボーケン(日本紡績検査協会)は、メーカーの新開発商品の評価・測定に注力する。昨年夏には吸汗速乾素材の評価方法を改善。「人間の汗のかき方の実態により即した方法になった」。

また、秋には花粉のつきにくい性能の評価方法を完成。「再現性のあるものができた。今後はマスクを通過しないことの測定を手掛ける」という。今春は花粉グッズがブームだが、これを見込んでいたわけではない。「アパレルなどの要望もあってこうした新しい評価方法を確立」することが、顧客満足につながると取り組む。

グローバル対応では、昨年12月末に、上海試験センター、常州試験センターに続き、中国第3の拠点として「青島試験センター」を開設した。青島検験検疫技術服務中心との業務提携によるもの。日本人スタッフ3人に、現地スタッフ10人で業務を開始している。

 ボーケンは、「中国での生産の場が北上しており、日本のアパレルなどからの要望もあって、青島に第3の試験センターを設けた」という。業務は日本向け事前検査、一般検査、縫製品ロット検査など。山東出入境検験検疫局に近い青島市瞿トウ峡路45号 海富桜1階に設けた。

 業務提携先にはこのほかSGS香港、韓国原絲織物試験研究院、台湾に中国紡織工業研究中心がある。

「検査機関として不良製品を水際で止めるのが役割。そのためにも、海外の試験センターといえども国内と同レベルの試験品質で対応する」とし、ボーケンはグローバル化に応じて試験検査ネットワークを構築している。

メンケン/上海試験センター活用/迅速対応で顧客満足を

メンケン(綿スフ織物検査協会)は、上海検査・試験センターを有する。安徽三朕集団との提携により、上海申磬奈辛格(しんけいなっしんぐ)服装有限公司内で業務を開始した。糸から織物、二次製品までの検品、検反、試験を行う。

グローバル化で、「国内における産地直結の業務は数量が減少した」。このため、上海に拠点を開設したが、「海外生産でも短納期化が加速している。このため、検品、検反に時間をかけられない状態になってきた。不良品率が高ければ、補修・修正にも時間を要する」という現象が生じている。

その一方で、試験業務は品質保証の観点から「現地企業のほか、日系アパレル、テキスタイルメーカー、紡績、流通から依頼が増えている」という。こうした現地ニーズに合わせて、「迅速な対応で顧客満足」を満たすことをモットーとする。

また、現地では補修機能を付加することが必要とし、将来的には機能を付加したいという考えだ。現状は関連の提携先を紹介することで対応している。

「中国製の粗悪品を現地で止めることが、重要。量販店、アパレル、通販業者からの依頼も増えている。消費者への説明責任が問われており、国際的に認知された試験機関としての業務を推進する」という。ISO9002認証取得、JNLA認定取得機関でもある。

また、メンケンはこれまで国際協力事業団(JICA)が推進するタイ、スリランカの繊維関連品質向上プロジェクトの国内委員会事務局を受託し、調査・指導を行ってきた実績がある。これにより中国(上海)、スリランカ、タイのネットワークを活用することもできる体制である。