最強列伝/新素材最前線/これは使える!不織布原料

2003年03月31日 (月曜日)

オーミケンシ「サンダイヤ」/光触媒練り込みレーヨン

 光を当てると光触媒により優れた消臭・抗菌防臭性を発揮するレーヨン短繊維「サンダイヤ」。オーミケンシが大手化学メーカーの昭和電工と共同開発した特殊な光触媒酸化チタン「ジュピターS」をレーヨン短繊維に練り込んだ。

 「サンダイヤ」は(1)抗菌性(2)消臭性(3)UVカット性(4)汚れの分解――などの特長を持ち、洗濯耐久性、安全性にも優れたエコロジー繊維。通常、光触媒酸化チタンは光が当たると繊維を分解してぜい化させるので、「ジュピターS」は繊維を分解し難くさせている。

 オーミケンシは機能レーヨン専用設備を有しており、「サンダイヤ」のほか、キチン・キトサンとセルロースを融合した「クラビオン」、紀州備長炭を練り込んだ「紀州備長炭繊維」、ホルムアルデヒドを吸着、消臭する「香澄」、化粧品成分のスクワラン(深海鮫の肝油)練り込み、保湿効果などを持たせた「パポリス」なども同設備で生産する。

 同設備は現在、月産30トン規模だが、5~6月には同40トンにまで能力アップする。

カネボウ合繊「ベルオアシス」/SAP繊維化し不織布に

 「ベルオアシス」は吸水ポリマー(SAP)に使われるポリアクリル酸ソーダ塩を繊維化したもので、高吸水性、高吸湿性が特長。英TAL社が生産する。カネボウ合繊は94年に独占輸入販売権を結び、「ベルオアシス」を使用した不織布を展開する。

 不織布生産は外部で行っており、生産目付は60~1500グラム、主な製法はニードルパンチ、エアレイド製法による。単価が超吸水性樹脂の10倍という高価格のため、100%使いはほとんどなく、ポリエステル短繊維と混綿する。用途は吸湿性を生かして精密機械の結露防止材、配管の止水材など工業資材、敷きふとんの下に敷く乾燥マット、タンスなどの除湿材、失禁パットなど生活資材に展開。工業資材と生活資材の比率はほぼ半々だが、今後は工業資材での増販を図る方針だ。

 「ベルオアシス」は衛生材料に使われる超吸水性樹脂に匹敵する吸水性と、A型シリカゲルの3倍という高吸湿性が特長。乾燥すれば吸水、吸湿性能は回復し、繰り返し使用が可能だ。生産するTAL社では生鮮食品などの吸水シートや衛生材料など向けに販売する。

クラレ「エクセバール」/溶融紡糸できるPVA

 「エクセバール」はクラレが開発した酢酸ビニル系(PVA)水溶性樹脂。PVA樹脂の主力である繊維糊材だけでなく、溶融紡糸が可能なことからその応用範囲は広い。とくに、スパンボンド不織布(SB)、メルトブロー不織布(MB)の原料としても期待される。

 すでに、衣料用繊維ではポリエステルとの複合紡糸により「ミント」シリーズとして商品化されており、自社のMB「ミクロフレックス」でも「エクセバール」による開発が進んでいる。

 「エクセバール」は水に溶けるが、いったん乾いて固まると(1)耐水性、ガスバリヤー性を発揮(2)低温における水溶液の粘度安定性(3)溶融成形性(4)生分解性――などの特徴をもつ。

 とくに、溶融紡糸が可能という特長を生かし「ミント」シリーズが商品化されたことはSB、MBへの応用も可能なはず。とくに、生分解性もある「エクセバール」だけに、廃棄処分が課題の紙おむつ用不織布において将来の可能性を秘めている。

ソロテックス「ソロテックス」/クッション材にも応用可能

 旭化成と帝人の合弁会社であるソロテックスが生産販売するPTT(ポリメチレンテレフタレート)繊維「ソロテックス」。

 PTT繊維はポリエステルの安定性とナイロンの柔らかさを兼ね備えた合繊で(1)ドレープ性に優れたソフトな新質感(2)少しの力で伸び、しっかり元に戻るストレッチ性(3)110~120℃で濃く、美しく染まるため、セルロースや天然繊維との複合にも適する――などの特長をもつ。

 先行する長繊維ではスポーツウエア、インナー肌着、横編セーターなどで採用され、サイド・バイ・サイドのコンジュゲート糸である「ソロフレックス」による織物での裏地、アウターへの展開を見込む。

 もちろん、資材分野でのスペックインも進めており、現在、ミシン糸、いす張り、レース、クッション材でも商品開発中。とくに、不織布と関連するクッション材では「ソロテックス」を使用すると、へたりがなく、振動減衰性にも優れると言う。

ダイワボウ「NBF―FG」/難燃性バインダー繊維

 環境に配慮しながら、熱融着繊維に難燃性を付与したのが、ダイワボウの「NBF―FG」。ポリプロピレン・ポリエチレン複合繊維にノンハロゲン系難燃剤を練り込んだ。

 ハロゲン系、リン系の難燃剤を一切使用せず、環境ホルモンなど有害とされる成分も含まれていないのが特長。添加されている難燃剤も少量であり、安全性も高いと言う。

 同社では家庭雑貨品、各種フィルター、テント地、合成皮革など様々な用途を狙っており、紡績、不織布など自社の加工技術を活用しながら用途開発を進めている。

 また、同繊維を使用する上、後加工も100%オレフィン系を使用すればリサイクルも用意で、無害に焼却処理できる環境に優しい製品になることから塩ビレザー代替も視野に入れる。

 同社はポリプロピレン短繊維大手であり、オレフィン系複合繊維を生産販売する一方で、自社のスパンレース不織布の原料に活用する。

東レ「アートレイ」/ナイロンPBT複合繊維

 「アートレイ」はナイロンPBT(ポリブチレンテレフタレート)複合繊維を使用したスパンレース不織布(SL)。

 ナイロンPBT複合繊維(ナイロン70%、PBT30%)を水流によって分割し、ナイロン部分が0・22Tの極細繊維にする。PBTを使用するのはポリエステル複合繊維だとカード段階で分割してしまうためと言う。

 この「アートレイ」使いで、東レと子会社の滋賀殖産で開発したのが布おむつ「ケアステージ」。肌が触れる部分は吸水速乾ニット「フィールドセンサー」、吸水層は「アートレイ」を6層重ね合わせ、外側はポリエステルで構成する。「フィールドセンサー」で瞬時に尿を吸水し、「アートレイ」が保水する構造だ。「アートレイ」の技術を活用しワイパーや人工皮革基布の展開も視野に入れている。

 同社は月産500トンのナイロン短繊維設備を持ち、この内300トンが複合繊維設備と言う。