春季総合特集/トップインタビュー/豊島社長・豊島俊明氏
2003年04月23日 (水曜日)
理想の組織は逆三角形
02年9月に豊島の専務から社長に昇格した豊島俊明氏。「私がしてきたことすべてを破壊しろ」と前社長からエールを送られてその席についた。すべてを任せた、とも取れる言葉を受け止めながらも「長い歴史の中で任された一時期。自然体で対応する」と力みはない。
各部各課が優位性を
――社長就任からすでに半年が過ぎました。この間、社員らに強調してきたこと、自ら留意してきたことは。
当社は営業主体の会社です。顧客に認めてもらえる価値をいかに創造していくか、現状に甘んじることなくどんな手をいかに打つか、社員はそうした実行力をこれまでにもみせてくれています。あえて言うなら、それを今まで以上に追求してほしいということでしょうか。
――前社長からは就任発表時に「私がしてきたことすべてを破壊しろ」とエールが送られました。
業界独特の商慣習と過当競争の中で、それを当たり前として勝ち残らなければなりません。もっと強い会社にしないとという気持ちはあります。ただ、前例を無視するわけではありません。創業から160年ほどの歴史があり、これからも続く会社です。長い時間の間で、短い一時期を任されたに過ぎません。ただ、その期間は少なくとも顧客に認められ、地域に貢献し、社員が幸せでいられるような企業にしたい。
――国内製造業の空洞化という構造変化に加え、国内消費の低迷という厳しい環境が続いています。“選択と集中”、リスクマネジメント強化などがよく挙げられる言葉ですが、商社経営のポイントをどうとらえていますか。
情報力、スピード、創造力の3つです。創造力は他社と異なる優位性を持つこと。ただ、こうしたひとくくりの言葉がありますが、各部各課で運営している事業は多種多様です。製品部門だけをみても、その発祥は様々で、それがかえって良い側面を持ちます。ある商売で先行した部が後発の部を補完するなどの機能も発揮できます。企業全体よりむしろ、各部各課が違う優位性を持つことが大切です。
――貴社は6月期決算です。02年7月~03年3月までの業績推移は。
ほぼ計画通り、前年並みの推移です。売り上げは必要以上には意識していませんが、川上、川中の構造変化の影響を受け減収の感触です。ここでは取扱量を下げないよう努力し、シェアの維持向上に取り組んでいる。綿花は米国内や三国間取引を徐々に進めています。製品部門は単価下落、小ロット化、発注の引き付けなど要求が厳しくなる中でよく頑張ってくれています。
――前々期、前期と製品化率が上がり、順調に見えますが。
確かに製品売上高が実際に増えていますが、それ以外の商権の縮小によって比率が上がっているとも言えます。製品事業をいつまでにいくらに拡大するといった目標はまったく立てていませんし、社内の人間もそれほど気にしていない。重きを置いているのは最終的な収益です。
変わる現状に正面対応
――浜松、尾州など産地に根ざした商いがあります。産地への対応、今後のスタンスは。
浜松産地は有力な染色加工と協力している部分があり、位置付けは依然重要です。この産地に置いている正社員の数ではどの商社よりも多いのではないでしょうか。
尾州産地はまさに地元であり、本体で原料、原糸、子会社で織物の商いがある。環境が年々悪化していることは否定できませんが、尾州産地の一員としてウールの尾州で春夏物の素材の開発、生産ができないかと研究を続けています。
――大手、専門商社問わず、さらに言えば日本の繊維産業全体が中国と向き合うことを要求されています。中国向けの販売など将来的な部分も含めて、今後どのように対応、または活用していきますか。
今注意している点は05年にクオータフリーとなった際にどういうビジネスが展開できるかです。米国向けの製品販売などではトライアルを始めています。
一方、中国地場消費を狙ったものでは、当社が持つ合弁会社の紳士スラックスを一部現地販売しています。ただ、法制度や与信など商売を進めるうえで不安な点が多々あるので、それらをどうやって克服するかが課題です。中国は、まずは欧米向け輸出品の生産基地、その後に消費市場として見ていくことになるでしょう。
――貴社は中期経営計画を発表されていませんが、現在進行中の計画の進ちょくは。
当社は中期経営計画なるものを立てていません。また、立てる気もありません。数値目標を立てると数字だけが先走りして、それに縛られることになりがちです。大まかな方向性はありますが、やるべきことは個々がやるというスタンスです。現状を正面から見据えた対応が一番大切なのですから。
過去、バブル隆盛の時期だったと記憶していますが、1度計画を立てたことがあります。しかし、その時は経済が過熱している中で、数値目標もいくぶん飛躍してしまっていた。やってみて、1年で社風にそぐわないと分かったようです(笑)。顧客が変化するのですから、それに柔軟に対応することです。5年、10年後という中長期でも、自然体で世の中に対応するだけです。
私が考える理想は、逆三角形の組織です。一番上に顧客、その次に現場の社員、経営陣や社長は一番下にいる。私の仕事はその三角形の一番下にある頂点で、それがどちらかに倒れてしまわないようにバランスを取ることです。当社は社員がある程度自由に仕事を進められる社風がありますから、各社員が仕事に打ち込める環境を作りたい。その一方で、顧客に商品を買って頂いて初めて商売が成り立ちます。社員がおごることのない、着実に収益を上げる会社にしたい。
ほっとTIME/娘のニコニコと自転車
娘がニコニコしながら話し掛けてくれるとほっとする。昔よりもなつかなくはなったけど、寄ってこられると甘くなりがちだ。お小遣い目当てかなと察したとしても、中学、高校に通う2人がくると弱くなるもの。
ここ3年くらいは自転車に乗るのもほっとするひとときだ。琵琶湖や浜名湖のさわやかな1周ツーリング。木曽川の堤防沿いに長島温泉までの往復は、ぶらりと一人で家を出て、75キロの道程、約4時間ペダルを踏み続ける。「考えごとをすると車にひかれるよ」(笑)と、瑣末なことは頭から消してしまう。




