ホームファッション戦略をきく/伊藤忠商事「イルムス」、イオン
2003年05月29日 (木曜日)
伊藤忠商事「イルムス」/5年後20店・売上高100億円に
生活商品関連を重点分野に位置付け、衣食住のリテール戦略に積極的に取り組む伊藤忠商事。同社はこのほど西武百貨店から、北欧モダンインテリア専門店「イルムス」を展開するイルムスジャパンの発行済み株式85%を取得。住関連のリテール事業をさらに推進していく。生活資材・化学品カンパニー生活資材部門 物資部リーテイル事業推進課の林宏信課長に今後の戦略を聞いた。
「イルムス」を担当する、生活資材・化学品カンパニー生活資材部門 物資部リーテイル事業推進課は、住関連の木材や紙パルプ、ゴムといった素材から家具やタイヤなどの製品を扱っている。
林宏信課長は、「日本の消費市場や生活者の環境を考えると、住関連市場は今後も伸びる。一部で健闘しているインテリア・セレクトショップはあるが、まだビジネスチャンスはある。資材から製品まで部門の調達力を生かした戦略で展開していきたい」と話す。
とくに、イルムスのようにコンセプトが明確でハイエンド志向のインテリア専門店は日本には少なく、マーケットの競合度も低い。
イルムスジャパンは、デンマークのロイヤルスカンジナビア社100%日本法人であるロイヤルコペンハーゲン社との合弁事業として、池袋、東戸塚(オーロラシティSCの東戸塚西武内)、横浜(そごう横浜店内)―の3店舗を運営している。開業から4年が経過する1号店の池袋店は黒字化。他2店を含む3店舗全体でも03年度中に単年度黒字化の予定だ。
収益性の見通しがあること、ロイヤルスカンジナビアグループを背景とする北欧モダンという明確なコンセプトを持っていること、商材やデザインのリソースを受けられること―など、イルムス展開のメリットは多い。
そのうえで、伊藤忠のサプライソースを用いた商品開発、全社的インフラである共通プラットフォーム(情報システム、物流、店舗開発など)やデータベースの活用などで、さらなる事業性の向上を図り、5年後には20店舗・売上高100億円を目指す。
これまで出店政策は西武―十合が主体だったが、伊藤忠に移ったことによりフリーで新規出店できる状態になった。西武とは良好な関係を保ちつつ、幅広い視点で出店政策を進める。まずは「イルムス」の名前を市場に浸透させ、ブランド構築を図る。
池袋のような大都市の巨大商圏を筆頭に、首都圏周辺や全国の政令指定都市、次いで東戸塚店のような大都市と住宅地の中間的商圏も検討。店舗規模は池袋店型の200坪、東戸塚・横浜店型の120坪―を標準フォーマットに、立地に合わせフレキシブルに展開する。横浜店で好調な「イルムス・キッズ」も、商圏特性を踏まえながら強化していく方針だ。
商品構成は当面、(1)スカンジナビアグループから35~40%(2)北欧モダン・テースト商品の海外買い付け35~40%(3)PB20%―を目安に構成する。
徐々に海外買い付け商品をPBに置き換え、最終的にはPB比率を40%程度に引き上げる。PBの中には一部ファブリックを中心に、同グループのデザインをアジアで生産するものも出てくる予定だ。
ギフト開発は、ニーズの高い結婚式の「マリアージュ登録リスト」や引き出物などを拡充するとともに、西武百貨店でのギフトサロンにおける「イルムス ギフト セット」などの展開を進めている。
コントラクト分野では、伊藤忠のマンション開発や他社マンションデベロッパーなどとの共同で、「イルムス」仕様の内装を手がけていく。
インテリアの時代と言われて久しいが、日本に定着せず撤退した外資も多い。ただインテリア雑誌の増加に見られるように、消費者の意識は高まっている。同社は「イルムス」を通して、あこがれのライフスタイルと実生活とのギャップを埋め、市場全体の活性化にもつなげたいとしている。
イオン/「1部屋10万円」を提案
「トップバリュ」をはじめ、グループのシナジー効果を生かした衣食住のPB(プライベートブランド)戦略を推進するイオン。その中でホームファッション(HF)の02年度販売実績は、前年比30%増と好調だ。03年度はほぼ倍増の90億円を見込んでいる。長尾博昭取締役HF商品本部本部長に、今後の戦略を聞いた。
イオンは主力の「トップバリュ」をはじめ、各メーカーとの共同企画商品などを中心に、シーンごとのトータルコーディネート提案に力を入れている。
例えばベッド3種類に対し、テースト別のカバーリング7、8パターン、それらに合うピローやクッションという具合に展開を広げ、今春はカーペットやカーテンを加えた。ダイニング関連では新たにボーンチャイナの食器もコーディネートできるようにしている。
6月にはその発展形として「1部屋10万円均一」を打ち出す。リビングで2タイプ、ダイニングと寝室各1タイプで、合計4タイプ各100セットの販売を計画している。リネン関係は基本的にイオンの開発商品でそろえた。
価格面からターゲットは、イオンの主要顧客である35歳前後より一回り上の世代、45歳以上に設定した。テーストも和モダンを基調とする落ち着いた雰囲気でまとめている。店頭のボードとパンフレットを活用しジャスコ全店で販売する。
「1部屋10万円均一販売」に着手した背景には、昨年のドレープとレースのカーテン4枚セット販売の成功がある。
従来から同じセット販売をしていたが、カーテン売り場では珍しく平台で豊富なカラーバリエーションを表現。かたまりとして見せたところ爆発的にヒットした。1部屋10万円均一セットも、アイテム別の単品販売だけでなく、かたまりとしてコーディネート提案することで新たな需要を喚起すると考えている。
長尾博昭取締役は「初回は実験的な要素が強いが、そこからヒントを得、ブラッシュアップし育てていきたい」と抱負を語る。
トータルコーディネート提案の意義は大きいが、店頭の坪効率や在庫の問題がネックだ。
そこで同社は、在庫コントロールしやすい開発商品のア割合を高めるとともに、積極的なIT投資でODBMS(オープンデータベースマーチャンダイジングシステム)を導入した。
昨年7月の寝具、リビング商品に始まり、10月にはダイニング用品、そして今年6月には家具と家電でも稼動する予定だ。ODBMS稼動により、需要予測の精度が飛躍的に向上。店頭および倉庫の在庫回転数も改善し短縮化が進んでいる。同時に物流面でも生産地とのSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)システムを強化し対応する。
EDLP(エブリデー・ロープライス)政策の一環で、ホームリネン関連の8~9割は中国を中心とする海外で生産する。顧客がイオンのHFに何を期待するか―価格・トータルコーディネート性・オリジナルデザイン開発―のバランスを取りながら、その都度最適なソーシング先と組み、顧客の要望に応えていく。
店頭でのVP(ヴィジュアルプレゼンテーション)向上も欠かせない。初の都心型SCの核店舗である「ジャスコ品川店」では3台のベッドを置き、実際にコーディネート例を演出。リビングやダイニングなども新店を中心に今年中に大規模な実験に着手する。既存店でも「トップバリュ」をメーンに、壁面を利用したボードでイメージを提案していく。
また「トップバリュ」では、ふとんとの留め部分を6カ所にしずれにくくした掛けふとんカバー、首回りをU字型にし肩が冷えないようにした掛けふとん、低反発ウレタンを用いた枕、24色展開の弁当箱・はし・弁当袋・水筒―など、顧客の意見を一つ一つ具現化してきた。
今後も顧客の要望を形にする商品開発とトータルコーディネート提案で、イオンらしさを追求していく。