不織布列伝/織らない布の魅力(8)

2003年07月11日 (金曜日)

綿SLが精製セルロース

 スパンレース不織布(SL)大手であるクラレ、ダイワボウとは対極的なSL2社がある。綿100%SLを手がける日清紡とユニチカだ。日清紡は92年、ユニチカは93年に事業化とSLメーカーの中では比較的新規参入の部類に入る上、SL主要原料であるレーヨン短繊維ではなく、綿という今まで少なかった原料でSLを事業化した点に特徴がある。

 しかも、綿紡績大手の日清紡、ポリエステルSB最大手のユニチカの2社ともあえて、新事業として綿100%SLに挑戦した。

 衣料の世界で綿はメジャーだが、こと不織布においてはマイナーな存在。85年に衛材メーカーの丸三産業が世界初の綿100%SLを事業化したが、その後に続くSLメーカーはほとんどなかった。

 それだけに事業化以後、2社は苦戦を余儀なくされる。綿100%SLの弱点は他素材使いに比べ高価格である点。なぜなら、晒しという工程(現在、ユニチカは晒し綿、日清紡は後晒し中心)が必要になるからだ。もう一つは検反。レーヨン短繊維やポリエステル短繊維とは異なり、どうしても異物が残るので検反に人手が必要になる。このため、いくら原反の生産スピードが早くても検反が遅いため、生産性は悪くなる。結果、単価が高くなる。

 これにより、使い捨てのおしぼり(JR新幹線のグリーン車で配られる)など用途展開が限られ、2社とも稼働率50%という時代が何年か続くことになる。ただ、その間の地道な商品開発と用途開拓が実を結ぶ。

 2社は02年、倍増設を行い、ユニチカ「コットエース」は年産5000トン、日清紡「オイコス」は同2400トンに拡大した。高価格という弱点を克服し、次のステップに踏み出したわけだ。数年前から女性の生理用品などでコットン100%使いというTVCMが流れたのをご存知だろうか。

 肌に直接触れる商品だけに、綿という素材が再認識され、化合繊主流の衛材でにおいて綿が風穴を空けたわけだ。これが追い風となり、2社とも1号機をフル生産に持ち込み、増設に踏み切った。

 ただ、2社とも綿100%だけでは昨年の増設分を埋め切ることは難しいと判断。続く柱として精製セルロース繊維使いSLに本腰を入れる。日清紡は蘭アコーディス社製「テンセル」、ユニチカはオーストリア・レンチング社製「リヨセル」を採用。ユニチカは綿100%と区分けするため「ルベナ」という新ブランドも設けた。

 先行する日清紡では03年度は月15~20トンを「テンセル」使いとする計画。ユニチカでは「リヨセル」使いで03年度100トンを目指す。

 両社が狙うのは工業用ワイパーや医療用ガーゼ。しかし、この分野は旭化成のベンベルグ長繊維不織布「ベンリーゼ」が高いシェアをもつだけに、いかに違いを打ち出せるかが課題。さらに、大手SLメーカーも精製セルロース繊維には触手を伸ばしていることから、先行する2社も楽観はしていない。