ジーンズ特集/アパレルメーカーがブランド訴求強化

2003年07月17日 (木曜日)

 ジーンズ専門店、カジュアル専門店向けブランドを手掛けるアパレルメーカーが、ブランド力強化に力を入れている。カジュアルウエアの低価格訴求が一部販路に限定されるようになり、ジーンズカジュアル専門店チェーンの復調に見られるように、単価は上昇傾向にある。そこではファッション性と品質、コーディネート性、さらにはファミリーターゲットの郊外型大型店における複合展開(メンズ、レディース、キッズ、雑貨)など、トータルの価値が求められている。それがブランド重視の背景である。

美濃屋/情報発信を強化/専門店向け5ブランド

 カジュアル製造卸の美濃屋(岐阜県羽島郡)が、5月末に東京支店にプレスルーム、6月末に本社にショールームを開設した。

 ファッション雑誌を発行する出版社が集まる東京では、同社がカジュアル専門店チェーンを販路に扱う「コンバース」「エアウォーク」「スミス・アメリカン」「UPレノマ」「PPリコリノ」の5ブランドで、情報発進力を強化する狙いがある。

 「ライセンスブランドのロイヤリティーを高めるため、雑誌媒体への露出を積極的に行いたい。カジュアル専門店チェーンでも、ファッション性とブランド力が重視されている」と木野村友広社長は話す。「ここ数年でマーケティングや開発、広報宣伝に3~4倍の費用を投資している」と言う。

 商品開発のために、昨年から実験小売り店舗を約1000平方メートルの規模で本社に開設したのも、その一端だ。

 東京プレスルームは約500平方メートル。前記5ブランドのサンプル展示に加え、デジタルファッションに開発を委託したバーチャルコーディネート(仮想試着)ソフトを使った、デジタルプレゼンテーションを行う。

ハワード/自社企画100%!/専門店の期待に応える

 カジュアル製造卸のハワード(東京都板橋区)がジーンズカジュアル専門店を中心に展開している「ハンテン」と「ウールリッチ」が好評だ。「ウールリッチ」が「認知され、軌道に乗ってきた」ことで「春夏はサーフブランドの『ハンテン』、秋冬はアウトドアテーストの『ウールリッチ』でバランスが取れてきている」(山口綾男常務)と言う。

 同社の展示会には、毎回全国から500人規模のバイヤーが訪れる。「これだけの人数が集まる展示会はほかにないのでは」と山口常務。要因は、「例えば秋冬展では、各型全色サンプルを用意して1000アイテムを出展する。このうち継続品番はわずか4~5品番で、残りはすべて新規企画」という質・量充実にあるようだ。

 しかも、同社企画は外部委託を一切行わない。自社企画100%という、今どき珍しい真正アパレルメーカーである。品ぞろえの同質化を避けたいバイヤーが期待を持って来場するわけだ。加えて、「リーズナブル価格での売れ筋作りと保証品質」も山口常務は強調する。

 2ブランドの売上高はこの春で約3割増。「今後も2~3割増のペースが見込める」と話す。伸びを支えているのが、好調な大手ジーンズカジュアル専門店チェーンで、女性客増が大きな要因になっていると言う。郊外大型店など、レディース売り場を持つチェーン店舗では、春夏の「ハンテン」の実績から、秋冬には「ウールリッチ」も導入するケースが多いためだ。

 今後は雑誌とのタイアップ広告や店頭販促物も充実させ、更に認知度を高めていく方針という。

豊島東京本社東京三部/強みの素材で優位性守る

 豊島東京本社東京三部は今春夏商戦も堅調な推移を見せた。春夏シーズンは引き続き精彩を欠くメンズ分野に対して、レディース分野がメーンとして動いた。商品傾向としてサテンやきれいめ系にこなされたカラー物の台頭とともに、それに相反する要素となるムラの葛城タイプや後加工(サンドブラストやヒゲタイプ)など、両者が同一売り場で売れた。これらは秋冬も発展していきそうな流れにある。

 色はアースカラーが基本となり、立ち上がり当初はピンク・サックス・グリーンなどでのグレイッシュパステルが良く、シーズンを通しては白やライトグレーなどが動いた。素材はサテン、葛城、綿ナイロン、綿ヘンプに加えて、久々にテンセルが浮上。この場合はソフト感がポイントになった。このほか光沢感訴求ということで、フィラメント使いが動いた。全般的にデニムは堅調な推移を見せた。

 デザインはひも使いやファスナー使いといったワーク系が主流となった。ただトレンドデザインがワーク系に終始したことから、最後には値崩れを起こした。秋冬については「ワーク系が供給過剰になっており、見通しは不透明」としているが、ワーク系ときれいめ系を2本柱にカラーバリエーションを豊富にした打ち出しをベースに展開していく考え。

 三部は原料段階からの素材開発から物流対応、さらには企画力のある製品提案までのトータル展開を強みとしているが、とりわけ素材開発についてはここにきて市場での差別化対応として効果的に波及している。 中でもデュポン社との取り組みによる「コーデュラ」はこれまでレディース対応のデザイン物を優先して具現化してきたが、今後はメンズ分野での打ち出しを図ることなどで拡大志向を強めていく考え。

 また「コーデュラ」はカバンの吉田(「ポーター」ブランド)にも生地提供している。「衣料品切り口での素材提案が、カバン分野では新鮮に受け止められた」としており、今後も引き続きその取り組みを深めていく。今後も素材開発には注力していくスタンスで、来春夏をめどに布帛での新素材開発にも着手している。

 なお豊島東京本社東京三部は1日付けで組織変更を実施し、それまでの3部2課を2課と4課に細分化した。2課は主に小売り(SPA含む)のOEMもしくはPB対応で海外生産のカットソー&ニットを担当しているが、今回これを顧客別に分類した。 

 「対象を細分化することで、これまで見えなかったことが見えてくる」(高塚俊英部長)とし、レディース・メンズ・キッズ各分野での更なる深耕を図っていく考えだ。なお3課は、国内外素材による布帛ボトムスの企画生産を中心に行っている(1課は休眠中)。