マイクロファイバーに熱い視線/眼鏡ふきが洗顔用で過熱
2003年08月07日 (木曜日)
ただの眼鏡ふきと言うなかれ。マイクロファイバーを使ったテキスタイルの一用途に過ぎないが、この眼鏡ふき用途が3月放送の情報系バラエティー番組をきっかけに過熱。言わずと知れた“洗顔用クロスとしての転用”が注目されたからだ。これに伴いメーカー出荷量も大幅に拡大。一過性のものでないと見た東レは新事業部立ち上げにも踏み切った。
国内の眼鏡ふき市場は、おおむね東レとカネボウ合繊が席けんしている。東レによると、同社のシェアは約60%。またカネボウ合繊によると、眼鏡を購入すると付いてくる“サービス用”(それ以外は販売用)の同社シェアは約60%だという。東レは眼鏡ふき用「トレシー」として、カネボウ合繊は「ドットクリーン」(ワイピングクロス全体としては「ザヴィーナミニマックス」の商標を使用)として展開している。「トレシー」「ザヴィーナミニマックス」共に多様なワイピング用途があり、眼鏡ふきは用途の一つに過ぎない。“洗顔クロス”ブーム前の時点の金額ベースで「トレシー」の25%、「ザヴィーナミニマックス」の20%がそれに相当していた。
3月の番組放送を境に「トレシー」「ザヴィーナミニマックス」共に出荷量が急増。眼鏡ふき用「トレシー」の出荷量は昨年がおおむね月間約5万枚だったのに対し、放送直後の3月に20万枚を出荷した。その後も増加は続き、6月で25万枚、7月は40万枚となった。カネボウ合繊の「ザヴィーナミニマックス」も同様に3月~5月の月平均出荷数量が前年同月に比べ3倍となり(数量は未公表)、6月・7月は4倍となった。
出荷量増の要因は洗顔用への転用であることが明らかなため、両社とも“洗顔用”と銘打った商品を6月から7月にかけて発売。東レは眼鏡ふき用「トレシー」に縁取りなどを施した「トレシー洗顔クロス」(650円)を、カネボウ合繊は洗顔用とパッケージした「ドットクリーン」(500円)をそれぞれ販売している。
東レの対応は更に徹底している。8月1日付で社長直轄組織としてST事業部(ST=洗顔トレシー)を新設。ST事業部全般担当に益崎悟専務、ST事業部(新商流)担当に小野勝利取締役を配置した(事業部長は武田和成氏)。「トレシー洗顔クロス」を主体にコンビニやスーパー、ドラッグストアなどの流通開拓を実施する。同社が「NT21」で標榜するNVC(ニューバリュークリエーター)活動の一環として、更には新繊維ビジョンに掲げられた理念を踏襲する意思表示として同事業部を位置付けるのだという。
生産背景はどうか。カネボウ合繊は9月までに「ザヴィーナミニマックス」の生産能力を提携先のニッターの設備増強により60%向上させる。同様にヒートカットおよび洗浄用の設備も倍増させる方針だ。東レは糸量および北陸を主体とした織・加工スペースから見て、7月時点の出荷量の倍に当たる70万~80万枚の生産が可能だとしている。
こうした両社の動きの活発化は洗顔用途への転用が一過性のものではなく、今後も定着すると見込んだことによる。マーケティングのキーワードが女性の“美”に集約されつつあり、効果のほどが判然としない物も数多くある中で、マイクロファイバーという高度技術を背景とし「なぜ顔がきれいになるのか」を容易に説明できるこの用途はまず日本女性の定番となると言ってよさそうだ。