工場探訪(上)三菱レイヨン・富山事業所
2003年11月10日 (月曜日)
世界唯一のトリアセ工場
日本化学繊維協会が毎年行う、新聞社を招いての工場見学。今年は10月31日に三菱レイヨン・富山事業所、11月1日に東洋紡・庄川工場をそれぞれ見学した。
◇
三菱レイヨン・富山事業所は世界で唯一のトリアセテート繊維工場であり、日本唯一のジアセテート繊維工場でもある。事業所としては繊維のほか、アクリル樹脂板「アクリライト」、アクリル樹脂成形材料「アクリペット」、アクリル樹脂製プラスチック光ファイバー「エスカ」、デュポンとの合弁会社MRC・デュポンの人工大理石などの製造工場も敷地内に有する。
繊維はジアセテート長繊維「リンダ」(生産開始58年)、ジアセテート・トウ「カロラン・トウ」(同63年)トリアセテート長繊維「ソアロン」(同67年)の3素材を生産。生産能力はそれぞれ年産6000~7000トン、1万3000トン、3万3000~3万4000トンだ。3素材を合わせたアセテート全体の生産能力は世界第4位に位置する。アセテート複合素材を主体に展開する三菱レイヨン・テキスタイルにとって、要の工場と言っていい。
最近の操業度はトウで90~95%、長繊維で80~90%と高水準を維持している。「リンダ」は裏地用途が60%と主体で、ほかにアウターや生活資材向けに使用される。「カロラン・トウ」はたばこのフィルターが主要用途、「ソアロン」は婦人アウターが中心だ。
同事業所でのアセテート製造はジアセテートフレーク(またはトリアセテートフレーク)を溶解する段階から始まる。アセトン(トリアセテートは塩化メチレン)で溶解し“ドープ”という状態にして乾式紡糸する。紡糸する段階でアセトンと塩化メチレンは回収してリサイクルするなど環境負荷低減の取り組みも工程に含む。
こうした富山事業所で製造した大型素材がこのほど発表された。ミズノがゴルフウエアでスタートする「ダイナミックエアリー」がそれ(三菱レイヨンの商標は「ベントクール」)。ジアセテートとトリアセテートのコンジュゲート糸で、テキスタイルにした場合、大気中の湿度により糸同士の透き間が開閉する“通気量コントロール素材”となるのが特長だ。