進化したウール素材/ウールの魅力、色々

2003年11月13日 (木曜日)

日本毛織/「スポーツウール」の拡販

 「スポーツウール」は、ザ・ウールマーク・カンパニーが保有する商標。海外のスポーツ衣料市場では、以前から有名だった。日本でも日本毛織が、同商標を冠した糸、生地、縫製品の製造販売権(縫製品についてはOEM供給)を01年12月に取得。その普及に努めている。糸についての権利を有しているのは世界でも同社を含め3社、生地についても3社だけだ。また、糸と生地の両方について権利を有するのは同社だけである。

 「スポーツウール」素材を使用できるのは、製品の販売ライセンスを得た企業だけ。日本では、日本毛織を含む20社が同販売ライセンスを持つ。日本毛織はこれら企業へ素材を供給すると同時に、一部用途で縫製も請け負う。海外市場の開拓も狙っている。

 同社が提供する「スポーツウール」生地は多様だが、そのほとんどは、肌側に羊毛、外気側にポリエステル繊維を配したもの。今年5月、このような構造の「吸湿速乾性および水分拡散性を有する複層丸編み生地」について実用新案を取得した。

東亜紡織/コンパクト糸を国産で

 トーア紡グループの衣料事業部門である東亜紡織は今夏、紡績子会社の宮崎トーアに梳毛式コンパクト精紡機を1台(約400錘)導入。コンパクト純毛糸「コンパクトファイン」を商品化した。同精紡機を導入したのは、日本では同社を含め2社だけだ。

 コンパクト精紡法は、繊維束を空気流で乱れのない状態に収束し、毛羽をラップ状に包み込みながら撚りをかけるというもの。毛羽立ちが少なく、なめらかできれいな糸に仕上がるため、生地の肌刺し感を軽減できる。光沢があり、発色性も高いため、柄を鮮明に表現するにも適する。

 40単から72双の「コンパクトファイン」糸を、エクストラファインウール使いで生産。これを使った織物を、04春夏紳士服素材として企画した。スーツとして店頭に登場する見込みだ。

 婦人服用には防縮加工ウールを使用して86双、72双、72単の「コパクトファイン」糸を試作。これによる編み地を、04秋冬素材として提案中だ。

東洋紡/「マナードW」が拡大

 「マナードW」は、ポリエステルなどの長繊維束の間に羊毛の繊維束を挿入するという特殊な方法で紡績した糸。この方法を採用すると、表面に羊毛が配され、内部に長繊維が潜む構造の糸に仕上がる。長繊維が潜んでいるため、細番手化が容易だ。薄い生地を作るのに適する。長繊維は羊毛の毛羽を押さえる役割も果たす。

 長短複合糸製造技術を移植し、マレーシアの梳毛紡子会社、東洋紡ウール・マレーシア(TWM)でも生産できるようにした。結果、東洋紡グループの「マナードW」月産規模は、前年度比5割増しの30トンに拡大した。うち25トンをTWMが、残りを東洋紡テクノウールが生産する形になっている。

 羊毛の風合いを損なわずに薄手生地に仕上げることができることや、合繊使いでありながらも深みのある色を表現できることなどが評価され、春夏のブラック・フォーマル素材として強い支持を得ている。スーツ素材、カジュアル・パンツ素材としての拡販も狙う。

クラボウ/アンゴラ混生地が好評

 クラボウ・羊毛事業部のアンゴラ10%・羊毛90%混梳毛糸、「アンゴラーナ」を使った生地が03秋冬商戦で好評を得た。04秋冬商戦向けには、製造方法の工夫などにより、よりリーズナブルな価格で提案する。

 アンゴラの繊度は平均14.5ミロクンと細い。内部は、竹の節のような中空構造になっている。非常にデリケートな構造を持つ繊維だ。「アンゴラーナ」は、このアンゴラにダメージを与えないように紡績した素材で、柔らかく、軽いことが売り物。

同事業部の羊毛テキスタイル部は、60番手と40番手の「アンゴラーナ」糸を合計5トン備蓄して、今秋冬商戦に臨んだ。ワールドの「アンタイトル」に、同糸使いの圧縮ジャージが採用されるなど、売れ行きは良かった。生地販売用に備蓄していた糸を使い切り、糸売り部門が備蓄していた糸も生地販売に充てるほどだった。合計10トンの「アンゴラーナ」糸を生地販売用に使う結果になった。

伊藤忠/コンパクト糸を本格販売

 伊藤忠商事・繊維原料事業部は、ウールでも毛羽の少ないコンパクト糸を開発、名古屋繊維部を通じ、「ラナ ルネサンス」(ラナはイタリア語でウールの意)のブランドで本格的に売り出す。

 名古屋繊維部は今年6月から、中国陽光集団を主力に、ドイツのZKS、ズットボーレの3社のコンパクト梳毛糸を試験的に販売、これまでに契約数量が10トンを超えた。番手は40単糸が中心で、このほか60単、双糸は48番手から90番手をそろえた。

 価格は紡機錘数が全世界でも1万錘強しかないため高く、40単で1キロ当たり2300円(需要家入り値)と通常糸の2倍近い。このため、ベターからアッパーゾーンを手掛けるテキスタイルメーカーに供給、でき上がった織物は来春物から「ポロ ラルフローレン」など有力アパレルに採用が決まった。

 名古屋繊維部は、このコンパクトウールの販売を今下半期に数十トン規模に拡大する計画。

カネボウ繊維/環境に優しい防縮ウール

 「Z―AOX」は、塩素系薬剤を使用しないで防縮性を付与した純毛糸。カネボウ繊維の鈴鹿工場(三重県鈴鹿市)で生産している。同薬剤を使用しない防縮加工を商業ベースで行っているのは、世界でも同工場を含め二つだという。

 塩素系薬品には、羊毛本来の風合いを損なうことに加え、吸収性有機ハロゲンという塩素系タンパク質を排出するという欠点がある。このような欠点がないことに加え、抗ピリング性が高いことが「Z―AOX」の売り物。「プレーンな天竺なら、4級以上の性能がある」という。既にニット素材として販売している。織物も、来年の学生服素材として提案中だ。

 鈴鹿工場の防縮加工設備は、加工槽を10槽並べた連続加工機だ。この種の設備は世界唯一。既存のこの連続処理設備を用いて生産していることもあって、「Z―AOX」の価格は、通常糸比1キロ当たり200円高い程度にとどまる。04秋冬向けに50色を備蓄、1キロ単位でも販売する。