減収に抗する/商社の9月中間決算(2)輸出・海外 SARSに翻弄
2003年11月21日 (金曜日)
利益の元となる売り上げを今上半期に容赦なく削ぎ落としたのはSARSだった。
丸紅は日本からの中国向けアクリルわた輸出など中国を中心とする原料取引で停滞を強いられた。伊藤忠商事も上半期の前半は出張規制などで意思疎通が十分に図れず原料が全般に苦戦。とくに羊毛は豪州羊毛相場が暴騰した昨年に手当てしたものが今年になって売れず、丸紅はタイウール、伊藤忠はイトチューウールリミテッドが大きな打撃を受けた。
テキスタイル貿易でも各社はSARS禍”に翻弄された。トーメンは、景気に揺さぶられにくく、1年半以上先のシーズンの契約に向けて商談を進めるスポーツ衣料用高機能素材こそ前年同期実績を上回る売り上げ、利益を上げた。しかし、婦人テキスタイルは輸出、海外間取引の両方で波をもろにかぶった。
この傾向は各社に当てはまる。輸出は、「機能材が好調」(三菱商事)、「スポーツ機能素材の欧米向けが好調」(三井物産)と付加価値が高く消費者心理に左右されにくい部分はSARSをはねのけたようだが、婦人テキスタイルを欧米向けに輸出するNI帝人商事、蝶理、丸紅などは輸出売上高が軒並み前年同期比2ケタ%の減収に陥った。
一方で、輸入売上高の減り方は緩やかになってきた。01年に年間30億点を超えてピークを迎えた全世界からのアパレル輸入は02年に減少に転換。それに歩調を合わせるように03年3月期には、三井物産を除いて輸入売上高が平均10%ほど前年より減っていた。今年の中国からのアパレル輸入(1~9月累計)は11%(数量ベース)前年同期を上回るなど再び増加。好調分野の一つにカジュアル衣料を挙げる三菱商事や、大手カジュアル専門店向けが底を打って増加に転じたうえ、ジーンズ専門店向けなどの販売が伸びているという丸紅など衣料品市況に回復の兆しが見える企業も出てきた。