微起毛素材に注目/ポリエステルナイロン 割繊糸使い

2003年12月12日 (金曜日)

国内展開拡大へ

 東レが02年8月から本格展開しているナイロンとポリエステルの割繊糸を使用したコンパクト織物「アーティローザ」が好調だ。高度技術を背景にこれまでにない、ハリ感と微起毛によるソフトタッチを実現した同素材は中わたアイテムやコートを主体に評価された。クラレトレーディングも婦人向けにナイロンとポリエステルの割繊糸「ランプ」の国内での本格展開を再開する。

東レ「アーティローザ」/クラトレ 「ランプ」

 従来のポリエステル織物による微起毛素材は糸を切ることによって表現していたため、起毛するとハリ感が失われていた。「アーティローザ」に使用する割繊糸は、中央に8つの角を持つ星型断面のナイロン部と、円形から星型を除いた部分である8つの扇形のポリエステル部に分割される。これをナイロン部のみ圧縮させることで、“ハリ感”と圧縮させないポリエステルが織物表面にループ状に飛び出すことによる“微起毛”を両立させた。

 同社によると「台湾品にも割繊糸を用いた微起毛素材はあるが、ナイロン圧縮工程を経ないためハリ感がなく、へたる」という。裏を返せば「海外では入手できない素材」だ。

 このような従来にない素材感が注目され中わたアイテム、コートなどで使用、初年度5000疋を達成した。今年度は、綿との交織物も開発しジャケットなどにもアイテムを拡大、1万疋を突破し1万5000疋に迫る勢いだ。シーズンは秋冬が主体だが、スプリングコートなど春物の受注もあり、3シーズンで対応できるのも特徴の一つだ。11日からきょうまでスパイラルホール(東京・南青山)で開催の来秋冬素材展でバリエーションを強化して披露。今後はボトムス用途の開拓のため、ストレッチ版も開発中だ。

 一方、クラレトレーディングは04秋冬からポリエステルとナイロン割繊糸使いの織物「ランプ」の国内本格展開を再開する。

 これまで欧州を主体に年間約6000疋を販売してきた。欧州ではスプリングコートや冬物のキルティングブルゾン、ボトムスなどで使用されている。国内は1000~2000疋と小規模であったが、国内本格展開により、これを4000疋に拡大、「ランプ」全体で1万疋とする計画だ。

 このほど同社が開催した婦人向け素材展では、綿複合や、ストレッチタイプなどバリエーションを拡大して出品。主にキャリアゾーンを視野に入れ提案し、ナイロンに起因するしなやかさや異成分によるシャンブレー調の外観が好評だった。同社は「ランプ」以外にもマイクロファイバー使いを主力に据え、ポリエステルマイクロファイバー織物「エルモザ」や、「ソフィスタ」の割繊タイプ「ソフィスタMC」を使用した織物を提案。「エルモザ」で2万疋、「ソフィスタMC」で5000疋を販売する計画だ。

 「特化技術を背景とした商材でないと生き残りは難しい」(クラレトレーディング)。インターテックス上海で日本の高度技術を産業挙げて訴求したが、前出の素材群の好調は典型的な好例だと言えそうだ。