日本企業の中国戦略/伊藤忠(1)点から線へ、線から面へ
2004年01月13日 (火曜日)
今や「中国」を抜きに繊維ビジネスは語れなくなった。中国で生産し、それを日本に輸出する、いわゆる“お持ち返り”の時代に別れを告げ、中国を起点にグローバルに見ていくときを迎えた。この項では日本企業の中国戦略を連載する。第1回目は商社の中で群を抜く活動を見せる伊藤忠商事。
◇
事業投資会社80社、投資額80億円――伊藤忠商事・繊維カンパニーのおおよその中国事業規模である。「点から線へ、線から面へ広げることが今後の中国戦略の最重要課題」と言い切る加藤誠副社長・繊維カンパニープレジデント。その視線の先には対日貿易偏重から中国内販はもとより、欧米・アジアなどマルチ方向をにらんだビジネス戦略がある。
その中国側における重要な担い手が「伊藤忠繊維(上海)有限公司」(略称ITS)である。世紀末の1999年1月、ITSの前身で、衣料を主に取り扱う上海プロミネント(上海PAL)が営業活動を開始した。3年後の02年1月、もう一つの中国における重要拠点である伊藤忠繊維原料(ITM)上海と統合し、ITSが誕生した。いわば繊維カンパニーの中国版である。
現在従業員235人(うち日本人駐在員19人=03年末現在)を抱え、総取扱高は年間6億ドルに達する。上海PALが約30人で産声を上げた当時と比較すると人員は8倍、取扱商品も原料・資材からテキスタイル・アパレル製品まで広がった。
また、ブランドビジネスにも積極的に取り組み、イタリアの高級紳士服メーカー、フォーラル社を浙江省寧波市に拠点を置く有力アパレル企業集団、杉杉に結び付けた「マルコアザーリ」ブランドは、2年目ですでに約20店舗を数えるブランドに育った。
「中国戦略は現地有力企業とのパートナーシップが不可欠。単なる取引の関係から取り組みに深め、共に手を携えて内販、あるいは欧米市場戦略に結び付ける」(加藤副社長)と狙いは明快だ。繊維カンパニーは、足場を日本に置きながらグローバルに展開を進めるのが基本戦略であることは言うまでもない。