原宿・千駄ヶ谷地区に進出する~テキスタイル関連業者

2004年01月27日 (火曜日)

 市場により近く、アパレルにとっての利便性を一層高めるため、川中のテキスタイル関連業者が最近、原宿・千駄ヶ谷地区に進出している。各社の現況を紹介する。

千駄ヶ谷3丁目・シキボウ/新オフィスに拡大

 シキボウのファッション衣料部がJR代々木駅近くのマンションに千駄ヶ谷オフィスを設けたのは、01年1月だった。カジュアル、レディース、スポーツアパレルを対象に大阪から出張販売していた。しかし、日本橋の東京支社を拠点にして回るのは時間的に効率が悪い。荷物置き場にと、マンションを借りた。

 滞在拠点のつもりが、サンプルを置くと、周辺のアパレルが夜でも見本を見にやって来た。同社にとってこうしたアパレルは新規開拓分野。このため、「当初は門前払いもあった。しかし、自家糸にこだわった素材を根気強く提案し続けた。それに共感したデザイナーの口コミもあって、次第に認知され、オフィスに集まるようになった」(国司正三ファッション衣料部長)という。

 先染めのサンプルを5万点以上常備し、西脇の配送センターと直結することで、翌々日までにサンプルカットを届ける体制となる。価格志向から素材の差別化に転換するほど、アパレルからの要望が強まり、オフィスとしては手狭になった。現在の千駄ヶ谷3丁目のニワビル1階に移転したのは昨年の3月である。

 スペースは3倍ちかい60坪に拡大。見本もハンガーで5000~6000点、ニットも300点を加え、製品サンプルも置く。人員も2人から6人に増員した。

 しかし、自社素材80%以上という当初方針は変えない。コンバーターではなく、あくまでメーカーであることがユーザーの信頼を生む。「従来のビジネスに比べ効率は悪くても、一つひとつのビジネスを拾っていく。末端情報が入るから生産にもフィードバックできる」。「これがベストとは限らないが、新しいビジネスモデルの模索」であることは確かだ。

千駄ヶ谷1丁目・日東紡/

 「アパレルとのコミュニケーションをとる上で、原宿・千駄ヶ谷地区にコラボを開設した効果は大きい」(梅田真之コラボ千駄ヶ谷GM)。日東紡と日本ハスケルは昨年10月1日、東京都渋谷区千駄ヶ谷に、芯地試験と縫製技術サービスを行うコミュニケーション・ラボ「コラボ千駄ヶ谷」をオープンした。

 「コラボ」は約160平方メートルのスペースを作業場、オフィス、オープンスペースに3分割。作業場にはローラープレス機、フラットプレス機、洗濯機、ミシン、アイロン台を設置。ドライクリーニング機も2月に導入する。

 これらのハード設備を使って、8人のスタッフがアパレルの芯地試験や縫製技術サービスを行う。4カ月弱の間、適切な芯地の選定や縫製仕様の相談などに応じてきた。相談で多いのは、(1)ストレッチ素材のカーリング問題(2)洗い加工に関するトラブル(3)薄地の染み出し問題だ。アパレルからの相談は、「次の開発のテーマアップにつながる」という。

 オープンスペースでは、開設時に04春夏内見会を行ったが、2月16日から2週間、日本ハスケルとのコラボレーションで、プリント柄を使用素材に融合させる表皮材「シンフォニーフェイス」の商談会を開く。「アパレルに向けた勉強会や小セミナーを開いていく。気軽に立ち寄れるサロン的な雰囲気」を目指す。

 営業時間は午前9時から午後8時くらいまで。その間、アパレルの生産・技術担当者や副資材関係者が訪れる。また、本社営業マンが営業拠点としても利用するようになった。販促の拠点でもある。

神宮前6丁目・カケン/コンビニ的ラボ目指す

 「産地に近いところに検査機関を置いてきた。東京をとらえたとき、事業所は川口市。都内との距離感があった」。カケン(日本化学繊維検査協会)の原宿ラボラトリーが設置されたのは、00年3月。佐伯宏一同ラボラトリー長は、千駄ヶ谷地区にアパレルが集積し、ひとつの産地を形成していたことを進出の理由に挙げた。

 周辺にはイトキン、ワールド、サンエーインターナショナルなど勝ち組アパレルが林立。「そこに供給されるテキスタイル、製品の試験、検査や相談業務」を行う。

 海外生産が増えて国内の試験・検査業務は減少するかと思われた。しかし、「デザイナーも現物を見ないと安心できない。サンプルを空輸してきて現品を見る。そのデータを求められる」という状況だ。

 また、アパレルの社内では品質管理を担当するスタッフが減っている。このため、「品質に対する問い合わせやラベル表示などへのアドバイス」を行い、機能補完する。9時~5時15分の営業時間だが、2交替制で、10時すぎまで対応。「使い勝手がよく、QR対応する。いわば、コンビニエンスストア的なラボ」を目指す。

 開所当時は9階だけだったが、昨年10月から8階のフロアも使う。2・5倍の250平方メートルに拡大した。スタッフも15人から40人に増員した。「スペースを拡大したことで、新たに24人収容できる会議室を設けた。春をめどにミニセミナーや新入社員向け勉強会を開き、周辺のアパレルへの情報サービス機能を一層高める」予定だ。



神宮前2丁目・丸萬商店

 丸萬商店は昨年12月25日、東京市場強化のため、東京オフィス(122平方メートル)を開設した。ショールーム機能も持つ。

 丸山恒生社長は、「周辺にはアパレル、SPAが多い。ビジネスが大阪を通り越して東京に向かっており、播州産地といえども、東京市場に直接出る必要があった」と語る。

 実際にオープンすると、「毎日、来客がある。やっていける」という手応えを得ている。大阪支店に置いてある3万~4万点のサンプルの一部を東京オフィスに移した。

 これまでは出張ベースで対応していたが、その都度見本を運ぶわけにはいかない。また、出張では原宿周辺のサンプリング活動も行っていた。原宿駅から5分という立地は、アパレルだけでなく、同社にとっても情報収集しやすい場所だ。

 同社は牧村織物と先染め織物の小ロット生産販売を実現する新ビジネスモデルを構築し、今年度の自立化事業にも採択された。小規模アパレルにも販売できるこのシステムと新オフィスを連動していく。素材提案だけでなく、製品納入でも商社とのコラボレーションによって実現できるという。