ひと/伊藤忠商事・繊維カンパニープレジデントに就任する 岡藤正広氏

2004年03月09日 (火曜日)

 1974年(昭和49年)入社。64年入社の現プレジデント加藤誠副社長から、年次で言えばちょうど10年の若返りである。

 高級輸入服地部門から商社マン生活を始めた。第1次石油ショック後の不況、安宅産業の吸収合併などで新卒採用が控えられた。このため後輩が入ってこず、受け渡し担当が4年半と長かった。明けても暮れても輸入ラシャの伝票管理。単調な仕事に嫌気がさしたが、取引先問屋の番頭さんに諭された。

 『人間、先を見るのも大事やが、目の前に与えられた仕事だけをやらなあかん時もある』。目からウロコが落ちる思いがした。

 営業に出てからは輸入繊維畑一筋で歩み、“夢”の実現に前を向いてがむしゃらに走ってきた。「身の回りすべてのものを扱う」というこの人の夢は「G・アルマーニ」など海外ブランドとの提携だけでは収まらず年々ふくらんだ。今では「食」の世界にまで踏み込み、伊藤忠の新たな市場を切り開いてきた。

 年間純利益100億円を超える繊維カンパニーの収益を支えてきた自負心は強烈だ。「繊維は中小企業が大半。その中小企業を大事にし、その力を伊藤忠の総合力と合わせて共に幸せになる」という姿勢は、輸入服地を扱っていた時代と変わらない。

 繊維原料という伊藤忠の祖業から世界を股に掛けたグローバルなビジネス、そしてこの人が開いてきたファッションの世界まで繊維カンパニーのフィールドは広い。ざっくばらんな大阪弁の一方で、綿密な計画に基づく市場創造への布石。伊藤忠は新たな個性を得て真のリーダー企業へ飛躍を期すことになる。