アジア特集2「共生時代のアジア戦略」~中国軸に市場創造へ~

2004年03月23日 (火曜日)

 世界の繊維産業に君臨する中国。この中国を軸にアジア共生の新時代への歩みを進める日本企業は、各地で事業の布石を打っている。新しい商流開拓、市場構築、機能強化に向けて、各社はどのような対策を取っているのか。アパレル、コンバーター、縫製機器、検査機関を例に事例を研究、報告する。

イトキン/ビル改装で客層変化

 イトキンは上海の直営ファッションプラザを昨年3月に全面改装した。このリニューアル後、目標通りに客層を変化させることに成功し、一時のSARS禍を乗り越えてからは順調に売り上げを伸ばしている。

 同店はカードによる販売比率が高まり、4階以上に配置しているインポートブランドの売り上げも伸ばした。「目標とする客層はつかめた。後は客数を増やすことだ」と、上海中絲伊都錦有限公司の後藤満総経理。上海でも日本と同様、来場客の2~3割で売上高の大半を占める。メンバーカードを持つ、これら上顧客を増やすことが、売り上げ増や安定につながる。「これは小売りの鉄則だ。一朝一夕にはできないが、ブランドの魅力や接客、店作りなどで差別化でき、顧客の支持を得られるように努力するほかない」という。

 客の年齢層は25歳が中心。坪当たりの販売効率は「エル」がもっとも高いが、売上高では「クランプリュス」がトップ。次いで、「オフオン」と「a.v.v」が並ぶ。靴やスカーフ、バッグなどの雑貨の売り上げ比率も高まってきており、全体の15~25%ほどになった。日本と同じように、今後はさらに雑貨の比率が高まると予想している。「ブランド、コーディネートに合った必然性のある雑貨小物の企画、価格設定が重要だ」と、後藤総経理は強調する。

 3月から新たに、ブラウスブランドの「バーゼ エ ヌオボ」を導入した。上代は390~800元とやや高め。しかし、TPOに合わせて装いを変える傾向が見られるようになったこともあって、予想以上に順調な立ち上がりを見せている。

デサント/04年度に75億円へ

 デサントは05年3月期に、中国・アジア地域での売上高を75億円にすることを目指す。従来は同期目標を65億円としていたが、10億円引き上げた。韓国48億円、中国10億円、その他17億円の計画だ。これを小売価格で換算すると162億円に達する。

 同社が中国市場へ投入するのは、「デサント」「マンシングウェア」「ルコックスポルティフ」「アリーナ」の4ブランド。このうち「デサント」は、アジア最大のダウンウエアメーカー、波司登集団などとの合弁企業の江蘇迪桑特が担う。03年10月の設立で、3月に直営一号店を上海に開店した。また、「ルコックスポルティフ」は、中国有数のアパレル、杉杉集団などとの合弁の寧波ルコック服装を通じて展開する。このほど設立し、年内に10店に拡大する。

 「マンシングウェア」はすでに中国内に32店を展開、来年3月末までに50店に増加する。「アリーナ」は現状9店で、2年以内に10店舗増やす。現地アパレルとの合弁事業に先立って03年1月に、営業活動の司令塔となる上海迪桑特も設立した。

 過去2年で急速に進む中国市場への進出は衰える気配がない。田尻邦夫社長は「3~4年後には中国・アジア地域で100億円」の売上目標を掲げており、同市場での販売を拡大する。

ミズノ/07年の中国販売100億円に

 ミズノは07年に中国での販売額目標を100億円に置いている。このため戦略商品を徐々に増やしており、昨春からは新たに「スピード」水着の販売を始めた。販売目標額達成のために同商品の販売店舗数を拡大している。

 すでに現地百貨店のコーナーを中心に33店舗を展開している。今年はこの「スピード」水着店舗数を、倍の約60店舗にする計画である。

 ミズノの中国戦略商品は「スピード」水着のほかに、ランニングシューズ、スポーツウエア、ゴルフクラブ、野球グラブと野球の硬式ボールがある。

 売上高は現状、合計35億円。売り上げ構成比はランニングなどのシューズが30%、スポーツウエアなどのアパレル55%、残り15%がゴルフと水着、アクセサリーとなる。

 「スピード」水着の売上高は昨春からのスタートだったが、目標通り昨年末までに約1億円を達成した。同社としては、水着は5年後には約200店舗、売上高で10億円(出荷ベース)を目指している。生産はいずれも同社の上海直営工場で行い、日本に輸出もしている。

 同社の北野周三・中国ビジネス担当取締役は「戦略商品を充実して中国販売を強化し、ブランドの知名度をさらに高めたい。今年はシューズがとくに伸びると見ている」とし、中国販売による売上高は約15億円増えて約50億円になる見通しだ。

コロナマルダイ/シャツ芯地、増産へ

 シャツ芯地製造販売のコロナマルダイ(大阪市中央区)が中国でのシャツ芯地生産に本格的に取り組み始めた。

 昨秋から中国で生産を始めた紳士ドレスシャツ用接着芯地の主要販売先の現地日系アパレルから需要が増え、当初予定していた月産10万メートルから今は3倍の数量にまで増産している。

 芯地は中国製のコーマ糸を使用し生機に加工。日系アパレルの現地調達に応じている。ブランドはコロナマルダイの高級芯地「コロナエース」。中国製に比べて不良率が少ないと評価は高い。

 また、日本産と同レベルながら安価である点が需要の増加につながっている。色数も当初の3色から5色に増やしている。

 紳士シャツ芯地以外に「芯地の王様」ブランドでカジュアルシャツやパジャマ用の一般芯地ニーズにも対応する。秋には別工場で一般芯地の生産を始める。

 中国で芯地生産を行うため02年10月に上海オフィスを設けた。紳士ドレスシャツ芯地の中国生産比率は約50%あり、順調な推移にある。メーカー機能を強めながら近い将来には中国内販にも取り組む計画だ。森澤章雄社長は「05年には現地法人化を考えている」と話している。

ペガサスミシン製造/技術・サービスで支援

 ペガサスミシン製造のアジア市場おける販売は、主力の中国の活発な動きに加え、全般的にアジア市場が好調を持続している。

 国内で生産するミシンは輸出向けが95%以上を占める。このうちアジア市場は7割を超える。主な市場は香港経由中国、シンガポールをキーステーションに、最近はインド、バングラデシュ向けの伸びが著しいほか、スリランカ、タイ、パキスタンなども堅調に推移。中でもバングラデシュは欧米への縫製品拡大に向けた対応で設備投資が活発化している。また、インドネシアの繊維産業が芳しくないといわれる中、、同国のミシン販売は比較的健闘している。

 アジア市場ではスタンダード機種のオーバーロックM700安全ミシンシリーズが浸透し販売台数も多

い。加えて昨年11月から販売の機能が良く安価なNXシリーズが好評。最近では日本向けや、とくに欧米からの縫製受注を拡大するために、自動機やEXシリーズ、ハイグレード機種で4本針FS700シリーズの引き合いが増え、インドやタイで導入されている。背景には縫製の品質・レベルアップや、発注バイヤーが工場に対し使用機種を指定する。このため今後こうした動きに注力していく。

 アジア市場は従来、価格一辺倒機種による販売競争だった。しかし、最近は海外品との住み分けが進む一

方、むしろ日本メーカー同士の競合が著しい。同社ではより一層の技術・サービス面でのフォローに注力する。

カケン/データベース化進める

 カケン(日本化学繊維検査協会)はグローバル化に対応し、アジア8地域に試験・検査室などを設ける。85年のプラザ合意による円高を背景に、88年には香港と韓国での海外業務を開始。中国では94年の上海科懇服装検験修整有限公司での業務をスタートに、01年以降は毎年試験室を設置している。

 01年10月に設置したのは青島試験室。海外で生産された百貨店や量販店などへの納入品の納入先基準による試験・検査を行う業務が中心だ。02年11月には大連試験室、03年8月には寧波試験室を設けた。本年も「中国にもう1カ所設置を検討中」である。

 上海科懇服装検験修整有限公司は、中国に最初に設立された日系試験検査機関で、01年にはISO9001/2000の認証も取得。そのシステムを依頼業務に反映する。

 また、素材の差別化に応じて、機能性素材の性能評価試験を実施するほか、衣料品以外の傘、靴、バッグなど雑貨用品についても性能評価試験を行う。さらに、GB基準に基づく中国国内販売商品の試験・検査にも対応する。

 試験・検査業務においても、納期は重要である。正確で迅速な対応を進めるには、データをいかに早く顧客に届けるかも課題だ。このため、カケンは昨年、本部に専用サーバーを設置し、上海、青島、大連、韓国と日本の事業所の試験結果をデータベース化する試みにも着手している。パスワードで自社のデータを開けるシステムで、完成すれば検査機関として新たなサービス提供となる。

ストーブリ/ジャカード出荷3000台

 ストーブリ本社が全世界に向けて出荷した昨年の電子ジャカード(JQ)は約3000台、一方、ドビー(カム機含む)が約2万7000台だった。JQの最大市場はトルコ向けが1000台超。続く中国は昨年末に低下したため1000台弱でトップをトルコに譲った。

 ストーブリ・日本が扱う開口装置は、ジェットルーム(JL)メーカーの大量輸出に合わせる形で増えた。中でも輸出は中国向けドビーで、織機メーカーへの出荷が7000台強、うち半数がカム機だ。商社扱い分は2000台弱。主力機種は積極ドビー2861や、カム機1661など。

 他方、ストーブリ全体の中でストーブリ・日本が扱ったJQは、日本国内向けをはじめ韓国、台湾など含め全体の約10%。JQは一昨年好調だった韓国向け輸出が停滞している。台湾はニードル織機に載せる小型JQに一定台数の需要があるが、大型JQ需要が減少したほか、日本国内も伸び悩みJQの需要は全体として厳しい。

 今後も主力市場は中国。しかし、今年は金融引き締めや増値税還付の引き下げ、原料高、電力不足などが重なり、ほぼ終わった上半期成約は前年に比べ減少し厳しい状態だ。ただ、後半はこれらが緩和され回復するものと期待を寄せる。

 また、新たに開発したリージングマシン「オパル」は多品種・小ロット生産向きの機械として注目されており、開口装置以外の販売で期待する。

QTEC/中国は3拠点で活動中

 QTEC(日本繊維製品品質技術センター)のアジアにおける品質試験業務は、中国3センター(上海、青島、無錫)と韓国で行われている。中国では、上海に日本人スタッフ8~9人と現地スタッフ54人、青島に日本人4人と現地19人、無錫に日本人4人と現地8人が働く。

 現地スタッフの半数は繊維・化学関係の大学を卒業し、「日本との貿易関係に興味を持っており、意欲がある。仕事の覚えが早いしスキルも高く、定着率もいい」という。昨年6月に無錫出入境検験検疫局と提携して新設した無錫試験センターも既に軌道に乗り、日本国内と同様の精度とスピードで報告書発行を行う。

 無錫にセンターを開設した理由は、「繊維縫製企業が上海から長江をさかのぼって上流に向かう方向にある」からだ。「日本向け製品の生産拠点は、一時期中国南部から北部にシフトするという話があったが、最近はむしろ上海周辺に集まってきている。日本アパレルは、北部の品質管理とインフラ整備に不安があるようだ」と話す。

 QTECの業務からは離れるが、「製品の品質チェックだけでなく、生産工場の品質システムを見極めてから取引する傾向」が日本アパレルに強まっているという。とくにホームファッション製品でこの傾向が目立ち、「納品先(日本の小売業)の品質基準要求が高まっていることが背景にあるのでは」と推測している。

 無錫では今後、羽毛の品質検査も行う方向で検討しているという。日本メーカーと現地提携先からの強い要望があるためだ。