個性光る原糸群(12)「月桃」(クラボウ)

2004年04月16日 (金曜日)

 月桃は、東南アジアに広く分布するショウガ科の多年草で、日本では琉球列島に多く見られる。その葉には抗菌性・防虫性があり、乾燥した月桃の葉をタンスの虫除けに使用するなど、沖縄の人々にとって日常生活でなじみの深い植物だ。

 クラボウは、月桃の茎の部分を開繊し、綿との混紡糸を03年5月、北条工場(愛媛県北条市)で開発した。月桃生地の特徴は、適度なハリ・コシと、発色性の良さ、清涼感などで、独特の表情を見せる。

 生地の販売では、沖縄県衣類縫製品工業組合が取り組む「かりゆしウエア」の素材として同組合に全面的に販売。原料供給、衣料品の縫製・販売を沖縄にゆだね、沖縄の産業振興に協力する。ちなみにかりゆしウエアの「かりゆし」とは沖縄の方言で「おめでたい」という意味だ。

 同社は、開繊も自社で行う。そのため、植物の皮や茎専用の開繊機(紡績可能なわた状にするための機械)を設計し、特殊天然繊維の紡績を得意とする北条工場に据えている。

 最近、北条工場ではラベンダーの茎や、レモングラスの葉から抽出した繊維と綿の混紡糸の商品化にも成功。今後もどのような天然素材を扱った商材が同工場から誕生するか、目が離せない。