04春季総合特集・トップインタビュー/豊島社長・豊島俊明氏

2004年04月23日 (金曜日)

「皆が幸福になる」商売を他社に負けない機能持て

 6月決算に向けて順調に走行している豊島。ニット衣料が好調に推移している。クオータ撤廃を控えて、米国向けの外国間展開も加速しつつある。「商社のサバイバル合戦は2回戦に入った」と豊島俊明社長は話す。ビジネス競争の激しさが増すなか生き残り策は着々と打ちつつ、「皆が幸福になる商売」を志向している。

好調なニット衣料/外国間取引、拡充へ

――貴社は決算期が6月ですが、現段階での見込みはいかがですか。

 業績は前期並みを維持する見通しです。売上高1500億円、経常利益30億円を目標にする計画に照らし合わせて、大きく逸脱していることはありません。ですから、不満はありません。ただ、夏物の二次製品の出荷はこれからですので、この動向次第では業績に影響を及ぼすこともありえます。

――どういった分野が好調でしたか。

 末端の店頭を見ても分かるように、セーターやカットソーが順調に推移しました。また、東京に拠点を置くSPA(製造小売業)向けなども引き続き好調を維持しています。こういったカジュアル分野では好調、不調の繰り返しという側面があります。提案力、コスト、短納期の三位一体となった仕組みを強化するのはもちろんですが、常に「ここは他社に負けない」部分を持つように指示しています。

――生産背景となる中国事業の今後は。

 情報を収集するために山東省などの北部地域に駐在させるかどうかも検討課題となります。現時点では生産面に投資する考えはありません。また、物流拠点を自社で出資して設立する計画も持っていません。

――一方、川上の原料分野は。

 わた、糸、生機に関しては市場が縮小している影響を受けています。取扱量が少ない加工反は苦戦も強いられました。たしかに製品化率は上がり、原料の売り上げを上回っています。けれども、その比率を何%にするかをとくに意識はしていません。

――中国を市場と見据えた動きが一般的に活発化しつつあります。

 中国での内販のノウハウは当社にはありません。ですから、内販よりもまず外国間取引の方が手がかりがつかみやすいと考えています。来年からクオータが撤廃されるので、二次製品の米国向け輸出を計画していて、すでに若干量は流れ始めています。

婦人ベターゾーンを開拓/サバイバル合戦、2回戦突入

――国内市場に関しては。

 利益を追求するため組織の効率化を進めると、どうしても人材増強が後手に回る嫌いがあります。人的先行投資の強化は必要でしょう。また、単なるモノ作りだけでは売り先のアパレルへの訴求力が弱いので、素材を含めた提案型を強めていかなければなりません。

 各課がなにか一つ秀でた機能を持たなければ、その課の存在価値はありません。もし二つ以上の機能を有せば、課が「細胞分裂」することになるでしょう。機能によるアパレルとの取り組みの成功事例は、企画力や情報力で東京のSPAに入り込めたことです。

――新規開拓はどの分野になりますか。

 「布帛の豊島」や「カジュアルの豊島」といった呼称があります。逆に考えればその他の分野が弱いということになりますので、ニット衣料やベターゾーンを攻めなければなりません。当社はメンズカジュアルが得意分野ですが、ようやくレディースのベターゾーンにも入り始めました。カジュアルの強さを維持しつつ未開拓分野にいかに踏み込めるか、が課題です。

――人材育成は非常に重要です。

 直近の収益だけに目を奪われていると現状の方法論に固定される懸念があり、次の展開が遅れかねません。ですから、戦略的発想は必要ですし、そうした能力を鍛えるための研修も行ってきました。これは意識面ですから数字に表れづらいもので、どれだけの成果につながったのかと申し上げるのは難しいですが(笑)。

――商社の競争は激しい時代です。

 各社の合理化は一巡し、商社のサバイバル合戦は2回戦に突入したとの認識です。このなかで新しいことにチャレンジしなければ勝ち残れません。しかしながら、当社だけが利益を上げるような商売の方法を採るつもりはありません。仕入先や販売先、業務委託先も含めて、皆が幸福になるような商権を扱っていきます。

友を語る/高校から上京して

 豊島さんは高校入学時に愛知県から上京し、下宿生活を始めた。高校からの一貫制で大学を卒業して25年になる。この高校・大学の青春時代の友人たちが、気の置けない仲間だ。

 卒業25年生は、今年の卒業式にゲストとして招待された。「昔の仲間と会えて楽しかった」と豊島さんは話す。友人たちは年月を経て各地に散らばり、会う機会はまれにしかない。卒業式はその意味で貴重なひとときになった。「豊島さん」ではなく「旧姓で呼んでくれると当時の思い出がよみがえる」と、商売以外の話ができる旧友との時間を楽しんでいる。