個性光る原糸群(20)「モルフォテックス」(帝人ファイバー)
2004年04月28日 (水曜日)
南米のアマゾン川流域にはモルフォ蝶という不思議な昆虫がいる。光沢を持つメタリックブルーの羽が特徴的なこの蝶、実はこの羽には、青い色は付いていない。羽には“鱗片”と呼ばれる粉のようなもの付いており、その鱗片の複雑な構造が、ある波長の光だけを反射させ、鮮やかな青色を見せているのだ。
その蝶を研究し、日産自動車、田中貴金属工業、帝人の3社が共同で開発した世界初の「構造発色」繊維が「モルフォテックス」だ。着色してないにもかかわらず、青、緑、紫、赤などの色がついているように見える。これは屈折率の違うポリエステルとナイロンを数十ナノオーダー単位で61層を重ねた構造になっているため。その層の重ね具合によって、特定の部分が反射し、繊維があたかも発色しているかのように見える。油膜が虹色に見えるのと同じ原理と思えばいい。
モルフォテックスは、光発色繊維のため染料や顔料が不要。染色工程を経ないためにエネルギーの浪費を抑え、産業廃棄物排出の削減にもなる。
ただ、クリンプを掛けたり、強い撚糸にしたりすると、キラキラ感がなくなり、同糸の魅力を引き出せない。糸面のそろっている方がきれいだ。混率が半分近くなら光沢感を主にした表現になり、25%程度であれば色の深みを出す“隠し味”的な使い方もできる。
基本データ
素材:ポリエステル・ナイロン
展開番手:120D
用途:衣料、インテリア、副資材など
備考:パウダー化により塗装用途(車、スポーツ用品など)、化粧品、印刷、光学分野などにも使用 赤、青、緑の3色を販売