三菱レイヨン/広がる「シルパロン」
2004年05月17日 (月曜日)
三菱レイヨンは、アクリル長繊維「シルパロン」の用途開拓に積極的だ。従来、横編み素材が中心だったが、ジャージ、織物にも提案の幅を広げている。中野義久シルパロン部長は、均染性ではまだ改善の余地が残されているものの「糸自体の品質改良や染色技術の向上で可能性が広がってきた」と話す。
シルパロンは主に春夏向け婦人服素材として需要が多い。3~4年前からヤング層をターゲットにしたブランドでも取り上げられるようになった。製品自体も薄くて軽いものが多くなり、セーター1枚当たり150~200グラム程度のインナーに近いものがファッションで好まれ、糸値が高くても製品市場価格の面で消費者が求めやすくなってきた。
シルパロン発展型商材として、ローゲージ扁平糸ではギヤ賦型加工による「コルピット」、ローラー賦型加工による「リーカス」も好調。月産5トンのペースで安定した販売量を保ち、一部、海外にも需要がある。熱を加えることで高捲縮にするバルキー糸「セボン」は、ボリュームがありながら軽い素材。これらの加工糸は、それまで春夏向け中心だったシルパロンを、秋冬向け素材として、用途開拓のきっかけを作った。
島精機のホールガーメント機でも使用可能な、伸度のあるシルパロン100%糸も今年から新潟や四国のニッターと共同で開発を進める。また、シキボウやカワボウ(岐阜市)などの紡績企業と取り組み、精紡交撚糸の商品化にも進展が見られる。
中野部長はシルパロンを「スパンの感覚でとらえがちだ」と話し、フィラメントのアクリルという感覚での認知度が低いと分析する。そのため、3月、上海でのスピンエキスポを皮切りに、4月東京、5月大阪、新潟と展示会を積極的に開くことでシルパロンをアピールする。
年間生産量2500トン(150D換算)のうち、輸出量が約半分を占め8割が韓国向けだ。上海、香港でも少しずつ定着。スペインのメーカーからも受注がある。イタリアの撚糸メーカーに働きかけるなど、「今まで以上の力を入れて開発、拡販する」考えだ。




