レンチングとテンセル/リヨセル販売戦略検討へ

2004年05月28日 (金曜日)

 今月4日、英国テンセル社の買収を発表したオーストリアのレンチング社は今後数カ月以内に、両社の具体的な経営方針や精製セルロース繊維リヨセル、テンセルの生産・販売戦略を固める。両社素材の相乗効果が発揮できる方向で現在調整を進めているもよう。テンセル・ジャパンは日本国内での展開を従来通り進め、6月9日、10日の両日、テンセル素材展示会を「テンセル・デー」として東京都内で開く。

相乗効果発揮 課題に

 買収を発表したレンチングは、テンセルとの間で統合に向けて「販売・マーケティング」「特許・技術」の2つのプロジェクトチームを発足させ、現在両者で協議を重ねている。

 市場関係者の間では、2年半前に、当時のアコーディスグループ(テンセル社の元親会社)とレンチングが合併合意にこぎつけたが、EU公正取引委員会の待ったがかかり、断念した経緯があり、以来両社の接近説が取りざたされていた。

 テンセル・ジャパンの住永憲治代表取締役は、レンチングの狙いについて、「(1)『テンセル』のブランド力(2)高付加価値イメージ(3)技術開発力(4)マーケティング力(5)生産能力(6)グループトータルとしてのモノ作り能力(例えば日本のテンセル会)――などを評価したのではないか」と指摘。また、世界戦略を考えるうえで欠かすことのできない中国市場への取り組みも「大きな魅力になったのは間違いない」としている。

 現在、両者間で今後の戦略の詰めが行われているもようだが、両社素材の組み合わせによる新たな素材開発に期待も集まる。レンチング年産4万トン、テンセル8万トンの合計12万トンのリヨセル原綿生産力を背景に、どのような戦略が打ち出されるのか関心は高い。

 関係者によると、テンセルではA100、A200という新しいタイプの原綿に対する市場の評価が高く、レンチングでは0・9デシテックスのマイクロリヨセルが注目を浴びる。

 マイクロリヨセルにはスタンダードとローフィブリルタイプの2つの原綿があるが、このマイクロタイプはテンセルにはないもの。「(戦略の統一によって)素材開発などあらゆる面で相乗効果が期待できるし、マーケットはさらに広がるのではないか」(小島幹人テンセル会理事長=豊島常務)という声に期待がこめられる。

6月9日からテンセルデー

 テンセル・ジャパンは6月9日から、05春夏素材展示会を東京・表参道の青山ダイヤモンドホールで開く。今回展には織物、ジャージなど開発テキスタイル約150点を、欧米、日本で店頭展開しているアパレル製品見本を交えて展示紹介する。

 服地コンバーター、アパレル、百貨店・専門店などのバイヤーを招く。会期は10日までの2日間。