個性光る原糸群(46)「ソアロン」(三菱レイヨン)
2004年06月09日 (水曜日)
世界唯一のトリアセ繊維
アセテートの製法もビスコース=レーヨンと並んで古くから知られていたが、工業化されたのはキュプラより遅く、第一次世界大戦後の英セラニーズ社によって生産が始まった。これはアセテートの原料である酢酸繊維素が当時、布張りだった飛行機の翼の塗料として戦争中、もっぱらその方面で使われていたためだ。しかし、平和になるとアセテートが繊維として利用されるようになった。
日本でも50年代から数社がアセテート繊維の生産を開始したが、現在では三菱レイヨン1社のみとなった。しかも、トリアセテート繊維では同社が世界唯一の生産企業となる。その商標は「ソアロン」。トリアセテートは、ジアセテートより製造段階で酢酸の量を増やしたものだ。
トリアセテートは、強力が弱いという大きな欠点を持つ。しかし、軽い、熱に強い、美しい光沢感、適度な吸湿性、プリーツ性、発色性の良さ、W&W性があるなど、優れた面がその欠点を消し去る。
意外なことに添加剤を大量に加えても、原糸生産で何ら問題がないという面白い長所もある。その性質を利用し開発したのが、微細凸表面とランダム星型断面により、透明感や清涼感、ドライでパウダータッチを実現した「アドレム」だ。
また、複合性にも優れ、ジアセテートをトリアセテートで挟んだ三層構造糸「オプション」は、側面にミクロリンクル(溝)加工を施し、染色に深みを出せる素材として、今春新たに打ち出した。進化を続けるソアロン。その市場は着々と世界に広がりつつある。
基本データ
素材:トリアセテート
展開番手:84T中心
用途:高級婦人・紳士服など
備考:「ソアロン」の発展型商材として、深色性を高めた「オプション」、新質感シルキータッチ素材として「アドレム」を展開。テキスタイル展開が中心だが、一部糸売りも行う。