合繊にみる原油高の影響/徐々に価格転嫁進む
2004年06月17日 (木曜日)
世界経済の懸念材料となっている原油高。このほど閉幕したシーアイランドサミットでも、原油価格への懸念が表明された。繊維産業で原油やナフサ価格の影響を受けやすいのは合繊メーカーだ。本紙は大手7社に緊急アンケートを実施し、繊維事業への原油高の影響をまとめた。
値上げ浸透に注力
最大手の東レは、「輸出先行で値上げが浸透中」とする。衣料用では今年に入って値上げが目立ち、「月を追って浸透」している。ナイロンとポリエステル長繊維は昨年からそれぞれ4回値上げ。短繊維はポリエステルとアクリルとも3月に1キロ当たり20円引き上げた。
産業用は、ナイロン長繊維は昨年4月以来、ポリエステル長繊維は同10月以来それぞれ据え置いている。「昨年からの積み残しを今年は確実に実行、現在着実に浸透している」。ただ、BCFナイロン糸は4月に同50円の値上げを行い、その浸透は「順調」だ。
帝人は衣料用のポリエステル長短繊維を3月に同20円値上げ。「現時点でかなり浸透」。産業用は同30円引き上げを表明して「ほぼ浸透」と回答した。
ユニチカは4月出荷分から10%の値上げを打ち出したが、浸透は「不明」とする。東洋紡は、価格改定の「必要性に迫られている」ものの、「大部分は交渉中」の段階。
クラレは、ポリエステル長繊維を4月から5%値上げしたが、5月までの浸透は3%にとどまる。逆に7月から1キロ30円引き上げる同短繊維は「理解が得られている」。ビニロンも「引き上げを行わざるを得ない」とする。
15日に産資用途ナイロンの値上げを発表した旭化成せんい。不織布用と合繊長繊維の値上げを発表しているが、「浸透状況はこれから見極める」と慎重な姿勢だ。
アクリル中心の三菱レイヨン。そのうち輸出が9割を占めるため、需給バランスが直接的に反映される。粗原料のアクリロニトリルが今年に入って、昨年10~12月期比で1トン当たり200ドル以上急騰した。アクリルの中国での実勢価格(CIF)は1キロ1・65~1・75ドル。同社品は市場価格より「5~10セント高い」という。
燃料上昇もコストアップ
重油などの燃料価格上昇も、コスト高要因で頭の痛い問題。ユニチカは「発電燃料の高騰」と回答。帝人は中国の石炭価格の暴騰を指摘。重油と併せて「ポリエステルの製造コストは数%上昇」した。逆に東洋紡は、「石炭の使用比率が高い」ものの、「すでに予算に織り込み」済みだ。このため、「他社より影響が少ない」と自信を見せる。
旭化成せんいは天然ガス価格上昇も含め「事業収益の圧迫要因」。クラレは燃料高騰に伴う運賃価格上昇を懸念する。
そろって高止まり予想
今後の原油価格動向は、各社そろって「高止まりで推移」と予想する。東レは4~6月の価格を1バレ ル当たり30ドルと予測。今期は現状の高値水準のまま推移し、「下半期に若干低下」と分析する。同社は、繊維事業以外も含めると、原料価格上昇は04年3月期決算で185億円の減益要因となった。
各社とも価格転嫁を行う方針を崩しておらず、今後も合繊価格の値上げは避けられないとみられる。