遠州・三河の染色加工企業/地元に密着して情報発信

2004年06月28日 (月曜日)

 遠州(浜松)と三河(蒲郡)の両産地では、産地密着型の染色加工企業が、個性を生かした事業を展開している。遠州には織物の浸染、染、晒加工を行う染色加工場が7社ある。綿紡のテキスタイル、商社、生地商、アパレル、コンバーター、地元産元と全方向型の受注を行うとともに、加工提案を発信する。三河産地では、鈴寅、艶栄工業、藤浜染工(糸染め)などが産地テキスタイル産元を支援する。インテリア、合成皮革の基布、資材、衣料をこなす資質と能力を持つ。

新加工を全国に提案/遠州産地7社が競う

 浜松市および同市に隣接する磐田市の大和染工・磐田工場を含め、浜松産地には7つの加工場がある。静岡県織物染色協同組合(鈴木悦司理事長)に属する。東京のアパレルと生地商は、同産地加工場の発信する新加工提案がテキスタイルの活性とファッションの源泉の一つだと語る。毎年5月に開かれるハママツコレクションへは、大和染工、今枝染工、鈴六染工、東海染工浜松事業所の4社が、地元産元とともに参加している。

 浸染では今枝染工、鈴木晒整理、鈴六染工、大和染工、日本形染、東海染工浜松事業所がしのぎを削っている。晒しでは、三弘晒浜松(本社京都)。捺染の最大手としては、日本形染がある。このほか鈴六染工や大和染工も捺染で、一定の評価を得ている。スクリーンやローターなど各種の捺染機器が活躍している。

 染色加工は基本的には受注型加工場であるが、それぞれの自社の得意加工をベースにオリジナル加工によって情報を発信し、それぞれの存在感を示している。

 各社とも毎年着実に償却して、体質の強化に努めている。例えば今枝染工は、01年3月~03年3月で5億7600万円、大和染工は01年5月~03年5月の3カ年で3億8900万円、それぞれ償却した。日本形染は、01年4月~03年4月の3年間で3億8900万円を償却。コンパクトな鈴木晒整理でも3カ年で6300万円の設備投資を行っている。

多様な用途に対応/三河産地 織物・先染めで8社

 三河産地の染色団体は東三河染色協同組合(阪下治理事長、艶栄工業社長)であり、三河織物工業協同組合、三河繊維産元協同組合と並んで、川中主要3業種の一角を占める。この東三河染色協組には、糸染め4社、織物染色4社の合計8社が参加している。

 織物染色では、鈴寅の企業規模が群を抜いて大きい。とくにスパッタリング加工は全国唯一。染色をベースにした同社の事業多角化は、将来の方向性を示している。艶栄工業は、起毛の組み合わせとグラデーション、そしてニドム加工機を使った揉み、たたき、酵素加工など衣料分野への深耕が目立つ。このほか、アオタケ、三ツ輪晒染工場が織物染めを行っている。

 糸染めでは、藤浜染工がリーダー企業だ。同社の受注先構成は地元70%、それ以外30%。桐生、石川、西脇などにも定着した得意先を持っている。

 糸染めの用途は、衣料、インテリア、資材、車両関連など多岐にわたる。先染めカーテンを主力とするインテリアの受注量の変化による影響がとくに大きい。

 三河産地のある産元は、「織物染色、糸染めとも、地元密着型で、産地の要だ。織布―産元―染色の川中3業種の一体感が強く、いわば運命共同体だ」と言う。「相互補完しながら産地を守っている姿を、どうしても残していくべきだ」(同)と期待する。

染色の一層の協力を期待/豊島浜松支店

 豊島浜松支店は、二、三課合計で、年間約8億円の加工賃を染色加工場に支払っている(二課70%・三課30%。このうち約80%が地元浜松、20%が県外)。主な染工場は、今枝染工、鈴木晒整理、鈴六染工、大和染工、東海染工(浜松・名古屋)、日本形染(五十音順)である。

 取扱品の用途は、カジュアル、ユニフォーム、資材関連、非衣料分野、マイルウエアなど多岐にわたっている。自社リスクによる定番無地染めのほか、無地・捺染とも、東西の有力加工問屋の染色代行(=加工ゴーダウン)を主な仕事としている。

 豊島浜松は、「染色加工場」との協働による産地立脚型の支店として、企画・生産情報など多岐にわたる情報を地元各企業と共有して存在感を高める。同時に、東西集散地に「はまとよ」の商材提案を広く、深く、浸透させるよう努めている。

 同支店は、生機売りと加工ゴーダウン向けに独自商品を構え、常に即納対応ができるようにシステム作りを行っている。取引先からの発信と、豊島浜松からの提案による双方向で商品のリスクを構えている。

 綿織物、ポリエステル綿混織物が主たる素材であり、遠州産地物に加えて豊島浜松開発商品群(輸入品、他産地品)など、多様なテキスタイルの供給も可能だ。

 “生機と加工品”の組み合わせ提案でもある。05春夏に向けて、「05SSはまとよ」見本帳には、約100マークのサンプルを掲載。主な取引先に配布予定であり、テキスタイルの通信販売方式と対面販売方式によって、販売量(額)の向上に努める。

 戸松憲司浜松支店長は「地元加工場の協力により、生機と加工の組み合わせ提案で、商圏を40年以上維持してきた。これからもこの方向で商圏を拡大し、ニーズウオッチ、ニーズ対応に機敏にフォローしていく。当支店では、当産地の染色加工場で使用される生機の2分の1以上の取り扱いを目標として努力中であり、染色各社のさらなる協力に期待したい」と語っている。