今注目を集める繊維・加工／ストレスケア素材一覧
2004年06月29日 （火曜日）
人それぞれによってストレスの感じ方は異なる。そんな多くの悩みを抱える現代人に少しでも役立つような繊維、加工が日々生まれている。“衣”食住の言葉から分かるように、もっとも身近な部分だからこそ、メーカーもストレス解消を意識した素材開発を真剣に取り組む。
ダイワボウ「サプリメント」シリーズ／“癒”で４つの加工を提案
ダイワボウは、“オンタイム、オフタイムをやさしくアシスト”する様々な生地加工方法を「サプリメント」シリーズとして打ち出した。その中でも“癒”をテーマにした加工を４つそろえる。
「レイポリー」は、人工血管、コンタクトレンズ、化粧品などに使用するリン脂質ポリマーを付与させた繊維加工。繊維そのものが素肌と類似した物質であるため、衣服が“第２の皮膚”に近くなり、安全性が高く、洗剤に使われる界面活性剤などの刺激物質から肌を守ることもできる。
また、合繊との混紡、交織生地を基布としたレイポリーの場合、帯電防止性、再汚染防止性、保湿、吸水性も付与される。
森林の中の心地よさを表現する「セドロール」は、杉やヒノキなどの針葉樹から採れるシダーウッドに含まれる天然の香気成分を繊維に付与。産業技術総合研究所関西センター（大阪府池田市）に委託して行った試験では、未加工生地使いよりも、セドロール加工生地使いのふとんに寝ている時の方が、体温が低くなる傾向を示した。つまり、セドロールの“安眠効果”を示唆していると言える。
「アロマハート」は生地表面に香料入りのマイクロカプセルを付与した芳香加工。ローズ、せっけん、バラ、ラベンダーなどのいろいろな香りを選ぶことができ、軽くこするとカプセルがつぶれ、においが出る。
天然鉱石の持つミネラル成分と健康によいと言われるマイナスイオンを帯びた加工に「カルサー」もラインナップ。いずれも“癒”に効果を期待する加工だ。今後も、その加工群に新たな商材も組み込む考えだ。
オーミケンシ「サンダイヤ」／注目高まる光触媒繊維
「地球・環境・人にやさしいモノ作り」を掲げるオーミケンシは、レーヨンをＥＣＦ（エコロジー・クリーン・ファイバー）と位置づける一方、様々な天然成分を練り込んだ機能レーヨンも開発している。
その中でも、注目を集めるのは光触媒酸化チタン「ジュピターＳ」をレーヨン繊維に練り込んだ機能性素材「サンダイヤ」だ。
光触媒酸化チタンに光が当たると、酸化チタン内部で電子（ｅ）と正孔（ｈ）が生成。この電子と正孔が有機物の分解に関係する。つまり、電子が酸化チタンの表面の酸素と反応しスーパーオキサイドアニオンを、正孔が酸化チタンの表面の水と反応してＯＨラジカルといった活性酸素を生成する。
これらの活性酸素を利用することで有機化合物を炭酸ガスや水に分解し、無毒な物質に変えることができる。この活性酸素は光と水・酸素が供給される限り発生し続ける。まさにサンダイヤは半永久的な機能性を持った素材だといえる。
サンダイヤ使用生地は純綿生地と比べて紫外線の透過が少なく、紫外線を吸収する。サンダイヤ使用製品を着用すると、人体に有害な紫外線をカットする効果もある。
また、黄色ブドウ球菌、肺炎かん菌、大腸菌、ＭＲＳＡなどの菌に対しても、晴天時５時間程度日中に干すだけで殺菌作用ある。
さらに、アンモニア・酢酸・ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トリメチルアミンなどのにおいに消臭機能も持ち、太陽光下、蛍光灯下でも「ＳＥＫ」基準を満たす抗菌防臭性を発揮する。
今後、１兆円規模になるといわれる光触媒市場。まだまだ業界での注目度は高い。
日清紡「モイスキン」／健康・安全・快適がテーマ
日清紡は、ナノ技術を応用した生地加工シリーズ「ナノサイエンス」を発表したが、天然由来を利用した加工にも力を入れている。
その中でも、一般的に安全性が認められる天然成分のキトサン、天然アミノ酸をテキスタイルに付与した加工「アミノモイスト」は、“さわやかさ”“安心”“やさしさ”“クリーン”という４つの面で、優れた機能性を持つ。
被服を着装し快適に感じる際の被服気候（人体と被服の間に形成される空気層の気候）は、通常３２±１℃、５０±１０％の範囲と言われる。
モイスキンは、ムレ感、暑熱感を感じる“不快”領域になればなるほど、優れた吸湿性を発揮し、さわやかさを保つ。
安心感という面で見れば、天然由来である限り安全性は高いと言える。キトサンはエビやカニの甲殻に含まれ、人工皮膚や手術縫合糸、基礎化粧品などにも使われ、人体に適合性がある。
天然アミノ酸も人体を構成するたんぱく質構成要素であり、角質層の潤いを保つために必要な物質として知られる。経口毒性は１キロ当たり２０００ミリグラム以上と全く問題のないレベルだ。
繊維のｐＨをコントロールすることから肌にも優しい。健康な肌に近い弱酸性へ、アルカリに対しても中性方向へコントロールする緩衝機能を備える。
さらに、黄色ブドウ球菌が繊維上で増殖することを抑制。抗菌防臭効果も期待できる。まさに健康・安全・快適をテーマにした、健康快適加工といえる。
シキボウ「カウンターペインＰ」／花粉対策を万全に
今年は花粉の量は比較的少なかった。しかし、来年、花粉の飛散量が大幅に増えるという話もある。不治の疾病と言われる花粉症の人々にとって、今から戦々恐々としていることだろう。 そんな人々に応えた商材がシキボウの「カウンターペインＰ」だ。花粉アレルゲンバリア成分である天然ミネラルを固着させ、ナノテクノロジーで繊維に平滑な花粉付着防止皮膜を形成し優れた洗濯耐久性を持たせた。
何よりも一番の特徴は、花粉が付きにくく、かつ脱落しやすいことに加え、残った花粉から出る花粉アレルゲンを吸着する機能を付与したところだといえる。
さらに、杏林大学の宮澤博博士の協力を得て、カウンターペインＰの花粉アレルゲン吸着能力の高さを確認。スギ花粉アレルゲンを用いて測定した結果、同アレルゲンの約８０％を吸着し不活性化したという。
ふとん地やカバー・シーツ素材として０４春夏商戦向けに発売。洗濯して乾かすときに花粉が付着する可能性も高いという視点から、来春夏向けにはインナー素材としても提案を進める。
花粉症の原因は、スギ花粉だけはない。５～７月にはカモガヤ、オオアワガエリ（チモシー）や、８月中旬～１０月にはイネ、ススキなど、８月中旬～９月下旬にはブタクサ、ヨモギなどの花粉も飛び交う。そのような花粉に対してもアレルギー反応を示す人もいることから、通期対応型の商材としてもアピールする。
富士紡「Ｖ―アップ／Ｃ＋Ｅ」／欧州からも注目される加工
富士紡の「Ｖ―アップ」が誕生してから、ちょうど３年が経とうとしている。メーカーが発表した商品が本当に末端の消費者に認知されるまで３年掛かると言われる。Ｖ―アップは消費者にとってもなじみが深い「ビタミン」をコンセプトにするだけに、「分かりやすさ」があり、市場への浸透も順調だ。
ビタミンは大変不安定で水に溶けやすく、繊維製品への応用は困難だった。肌から吸収されるとビタミンに変わる、脂溶性のビタミンＣとＥとの前駆体となるプロビタミン剤を同社は採用。特殊加工技術で生地に付与した。洗濯耐久性も３０回まではプロビタミンが残存するというデータを実証済みだ。
そのＶ―アップの認知度は海外にも高まってきた。技術面、品質管理などから国産が中心になるためコストが高く、高級品ゾーンの衣料として採用するケースが多いものの、台湾をはじめ、香港、韓国、中国でも広がりを見せる。
“これから”ということで販売量はまだ少ないが、今秋のインターテキスタイル上海展でＶ―アップを強くアピールすることで、アジア市場での拡販を目論む。台湾や中国のバイヤーは日本市場での売れ筋をよく見ており、また、健康関連商品の興味も高いことから、“ビタミン”という切り口のＶ―アップは注目を集めることになる。
さらに欧州でもスペイン、ドイツ、イギリスなどの国々からの問い合わせも増えてきた。「ビタミンを着ることができる」――その発想は世界に少しずつ広がりつつある。
ダイワボウレーヨン「ヴィレイ」／諸特性生かした高強力レーヨン
再生繊維のレーヨンはパルプが原料。風合いが良く、吸水・吸湿性に優れる。逆に短所は、強力に乏しくシルケットなどの後加工に適さなかったことだ。
ダイワボウレーヨンは、レーヨンの諸特性を生かしたまま、強力を高めた「ヴィレイ」をこのほど開発した。従来品より、強力は２０～２５％高い。抗ピリング性にも優れ、フライスで４級を実現するのも可能だ。また、生地収縮率も３ポイント改善した。なにより重要なのは、風合いも従来品より柔らかい。衣料や資材向けに、わた・紡績糸販売を行い、年間１００トンの生産で開始する。
同社は８９年に、レーヨンの特性をそのままに強力を高めた「スーパーコロナ」を発表。ジーンズや婦人服素材として好評を得た。その用途を広げるために研究を重ね、「ヴィレイ」に結びつけた。
天然硫黄の微粒子を練り込んだ「優ＳＲ」もストレスケアに欠かせない。ニキビや吹き出物の原因となるアクネ菌、水虫の白癬菌、においを発生させる黄色ブドウ球菌などに対する抗菌作用がある。
用途は非常に幅広く、インナーやパジャマなどの日常衣料は言うに及ばず、シーツやまくらカバーの寝装品、タオルやハンカチ、スリッパなどの生活必需品、さらには保湿シートといったスキンケア用品にも対応する。織物用途だけでなく、乾式・湿式不織布素材にも使用できるのが用途拡大の強みだ。
同社が力を注ぐのは、レギュラー品のレーヨンで難燃・防煙機能を付加すること。レーヨンでの同機能は再評価されているため、同社は期待を掛けている。