東レ「ハイブリッド合繊」
1998年12月14日 (月曜日)
八〇年代末から九〇年代初めにかけて婦人服地市場を席けんした「新合繊」。しかしバブル崩壊後の市場低迷と化繊複合ブームなどもあって、ポリエステル長繊維100%素材にはなかなか〝追い風〟が吹いてこないのが現状だ。これを打開しようと東レは99春夏から「フェミノス」、99/00秋冬から「セルシオン」を打ち出し、これらをポスト新合繊=「ハイブリッド合繊」と名付けた。
東レは婦人服地市場におけるポリエステル素材開発の歴史を次のように振り返る。第一世代が五八~六三年のれい明期、六四~八七年の第二世代が「シルック」に代表される天然繊維に向かう進化。第三世代の新合繊は八八~九七年で、合繊独自の新しい質感を追求した。その十年間は快適新合繊からニューナチュラル新合繊、新感覚新合繊と進化した。そして「ハイブリッド合繊」が第四世代に相当し、そのコンセプトは天然繊維の上質感とテクノロジーの融合によるカジュアル素材の開発である。
ハイシルキー素材「フェミノス」の場合、ポリマーと製糸段階でも独自技術が基礎にある。「ハイブリッドポリマー技術」は繊維軸方向にミクロレベルのフィブロインサーフィス構造を発現させ、高級な絹の持つ〝きしみ感〟と上品な光沢を表現する。「形状記憶製糸技術」は結晶化制御技術を駆使し、繊維の分子構造をソフトタッチが得られるようにし、さらに高次加工段階で布帛に空気を最大限含ませる形態を記憶させた。このため、着心地の良い膨らみと仕立て栄えのするハリ・コシが得られる。
「セルシオン」は新梳毛調素材。「フレキシブル構造原糸」と「高収縮発現原糸」とを組み合わせ「ループ状形状記憶加工技術」との融合で、高級感とカジュアル機能性を併せ持たせた。
この二つの素材で三年後には二十四万疋という計画数量をみても分かるように、名実ともに戦略素材と位置付けている。