ひと/伊藤忠商事執行役員に就いた 山田豊滋氏
2004年07月16日 (金曜日)
「ロマンがあるから我慢できる。我慢して初めてそろばんが弾ける」。“ロマン・我慢・そろばん”のあるべき順番は誰が何と言おうと譲らない。じょう舌を振るう姿が醸す雰囲気からしっかりと伝わってくる。
大阪に名所を作ろうとできた世界最大級の水族館、海遊館。5000トンの巨大水槽用アクリルガラスの受注獲得に成功した。82年からの最初のニューヨーク駐在時にほとんど“無”から“有”を生む作業だった商権、人脈作りの経験が米国でのメーカー探しで生きた。当時の大阪市の現場責任者には、水槽内の人工の岩、珊瑚、木などすべて納入してくれとさらに頼られることに。
繊維にあって繊維にあらず。そんな事業部にはあらゆる商材が集まる。多くの種を蒔いた一例を見せて欲しい。記者が頼むと、背広を脱がされ、「ヘリーハンセン」のダウンウエアを着て取材するはめに。「1分間待ってみて」。そうも経たないうちに暖かくなるウエアの中の羽毛は遠赤外線加工で今春特許を得たばかりの代物だという。
照れずに言う。「これだと思ったモノにとことん力を注ぐ勇気、情熱がいる。夢とロマンがないと男は生きられない」。そう信じて全力疾走してきたのは、入社時に配属された特需部の入札制ビジネスという原体験があるからだ。「一年間かけて山を登り、入札が終わるとまたふもとに戻って再スタート」。そんな風にたとえられる商売が“無”から“有”を生もうと常に考える気概を培ってくれた。
非衣料・資材は商材によってすべてビジネスモデルが違う。新しいモノを扱う度に勉強、勉強。将来の伊藤忠にとって大いなる遺産となるような成果を、が抱負。「Learn today, earn tomorrow(きょう学び、あす稼ぐ)」。韻を踏んだこの名言がお気に入りだ。
繊維資材・ライフスタイル事業部長 山田豊滋氏
やまだ・とよしげ 73年慶応義塾大商学部卒、伊藤忠商事入社。繊維資材貿易部繊維資材貿易第二課長代行、ニューヨーク駐在(伊藤忠インターナショナル)、繊維経営企画部長兼繊維カンパニーチーフインフォメーションオフィサーなどを経て02年4月、繊維資材・リビング事業部長に就任。03年4月から現職。04年6月から執行役員。休日は自宅近くを妻と散歩。兵庫・六甲山のハイキングも。囲碁は3段。家族は妻と2男。54歳。