広がる繊維の技術/三菱レイヨングループ

2004年08月27日 (金曜日)

航空機から最先端医療まで

 三菱レイヨングループは、1933年にレーヨンステープルの製造会社として創業して以来、合成繊維や合成樹脂の高分子技術を応用した事業を展開している。ここでは繊維の技術を背景とした4事業について紹介する。炭素繊維、中空糸膜、プラスチック光ファイバー、DNAチップがそれである。

圧力容器などで拡大/炭素繊維

 三菱レイヨングループは、アクリル長繊維を原料としたPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維「パイロフィル」、パイロフィルを基材として織ったクロス、パイロフィルを一方向に引きそろえて樹脂を含浸させたプリプレグなどの中間素材、そして成形加工品に至るプロダクトチェーンを保有している。

 原料となるプレカーサを大竹事業所で生産して、豊橋事業所と米グラフィル社で焼成。豊橋事業所と米ニューポート社でプリプレグに加工している(いずれも400万平方メートルの年産能力)。

 強さと軽量性という特性を生かしたパイロフィルの用途は様々だ。生産の半分をスポーツ分野が占める。具体的にはゴルフシャフトや釣竿、テニスやバドミントンのラケット、アイスホッケーのスティック、アーチェリーの矢などがそれに当たる。こうしたスポーツ分野での加工は中国が主体となる。

 拡大基調にあるのは産業資材用途。酸素ボンベや圧縮天然ガス(CNG)タンクなど圧力容器が現在の主力用途だ。将来的には燃料電池自動車の水素タンクにも炭素繊維が使用されるとされ、圧力容器は期待の用途だ。

飛行機部材としてはエアバスA380の材料認定作業中で、05年度中に決定される見通し。このほか、風力発電機の羽根などの部材としても、炭素繊維が使用されている。

中国での浸透図る/多孔中空糸膜

 多孔中空糸膜技術を活用したのが水関連用途であり、浄水器、官需の上下水処理、産業排水処理を含む。浄水器は家庭用のほか、国内で70%のシェアを持つという病院向けが主力用途となっている。上下水処理は韓国、米国で実績があり、将来的にはシンガポールや香港での採用を見込む。産業排水処理は日本国内が主体だ。

 同用途に使用する多孔中空糸膜は、中空糸の側壁に無数に形成したスリット状の超微細孔で雑菌や赤サビなどを取り除く技術を根幹としている。同中空糸膜を束ねた状態が中空糸膜エレメントで、中空糸膜エレメントの集合体が中空糸膜ユニットだ。

 多孔中空糸膜の原料は、柔軟性と強さに富むポリエチレン。加えて今年4月には、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)を原料とする中空糸膜の量産体制を敷いた。これは耐久性に優れる素材で、下水処理用途での活用が主体となる。

 同グループは、中空糸膜を豊橋事業所で生産。中空糸膜エレメントにはMRC幸田(愛知県)と、02年5月に設立した中国での合弁会社「大連麗陽環保機器有限公司」で加工している。

 中国での水処理関連分野は急成長が期待されており、合弁会社設立はこうした背景を踏まえたものだ。現状、日本国内が主体の「クリンスイ」を代表とする家庭用浄水器については、中国向け輸出も視野に入れている。下水道の水処理でも清華大学と共同研究。上下水・排水の水処理用途の開拓も進めている。

情報通信、装飾用途で活用/プラスチック光ファイバー

 アクリルが主体となるプラスチック光ファイバー(POF)は、情報通信分野と照明などの装飾用途を主体に活用されている。光の屈折率の違いなどによって「エスカ」「エスカメガ」「エスカプレミア」などの種類がある。情報通信分野では軽量性と電気的ノイズの影響を受けない特性から工場用ロボットや、自動車に搭載するモニター、カーナビなどの情報伝達ケーブルとして使用されている。

 装飾用途では、光を伝える特性を生かした水中での照明や、紫外線などを通さない特性を生かした美術館照明などで活用されている。

 国立長崎原爆死没者追悼平和記念館外に設けられた水盤には長崎原爆の死没者の数である7万の灯火が水中で輝く仕組みとなっている。灯火の一つひとつが「エスカ」で、安全性の高さなどから使用されるに至った。こうした点を日本照明学会が評価、表彰の対象ともなった。

最先端医療に貢献/DNAチップ

 医療の革命を予感させるDNAチップにも繊維の技術は活用されている。現在、横浜技術研究所で事業化を検討中。

 この繊維型DNAチップは各々異なる遺伝子情報を入れた中空糸を面状に配列し、検査対象のDNAと反応したDNAチップ上の遺伝子情報入り中空糸の配置の組み合わせで病気の予知や薬剤効果、薬剤投与による副作用の有無などを把握できる。これは、オーダーメード医療の実現に不可欠な技術とされる。

 同グループが繊維技術を活用するのは、中空糸技術や配列および固定する技術など。入れ込む遺伝子情報については他社との提携を視野に入れる。今年6月に発表したインフォジンズ社との提携はこの一環だ。