寝具側地特集/紡績寝装事業・新たな模索へ
2004年09月14日 (火曜日)
大手小売りによる海外からの直輸入、それに伴う安売り競争の激化、さらに末端消費の低迷を受けて寝具・寝装業界では厳しい状況が続いている。素材を供給する紡績も、その蚊帳の外にいるわけにはいかない。事業を安定させるために、機能素材の開発に力が入ってきた。最近は業際を越えたモノ作り、素材提案にも関心を見せ始めた。また、価格競争力をつけるために、中国に合弁進出した紡績もある。ここでは最新の紡績の寝具・寝装事業の動きをまとめてみた。
クラボウ/「草木布」で新販路
クラボウの寝具・寝装事業を担当するリビング製品課は、寝具・寝装だけでなく、住生活空間全体に視点を広げた商品開発を進める。現在、その取り組みを支えているのは同社の北条工場が開発した各種植物原料の開繊技術により繊維化し、綿混紡素材に仕上げた「植物楽園シリーズ」。この中からとくに今年は「草木布」を取り上げ、プレゼンテーションを強化している。
天然素材が持つ色彩を科学的に検証したところ、一般の色に比べ、草木布にはアルファ波の量が多く、癒し効果があることが分かった。天然素材を使った素朴さと、その機能を生かして商品開発に取り組んだ。
糸が太番手になるので、ふとんの側地には使いにくいが、クッションやバッグなどインテリア小物・雑貨を中心に、カーテン地、カバーリングなどへの用途提案を進める。同時に既存の販路では商品の特性上、売り場がほとんどないので、寝具以外の業界での提案に力が入る。販路開拓の戦略素材にもなっている。
シキボウ/中国合弁染工場が活躍
シキボウが昨年、中国に日本から設備を移転して設立した染工場、上海敷島福紡織品が軌道に乗ってきた。同社は日本レベルの加工を中国価格で実現するために設立した。
8月初めから2交替操業を行っているが、3交替24時間操業を近々始める。生活関連資材の注文が殺到しているからだ。今後も寝具にこだわらず、積極的に受注していく方針だ。
同合弁の出資会社でシキボウと取引関係にある上海幸福紡織印染の技術指導も行っているが、寝装側地分野で思わぬ効果が期待できるようになった。同社は280センチの超広幅機を保有する。中国や欧米の寝装用生地の幅は最低、250センチ必要。日本では対応できる設備がほとんどない。今回、上海で開かれたホームテキスタイル展で明らかになり、そのメリットが明らかになった。
すでに、欧米の業者がシキボウの技術力に支えられた同設備に注目し始め、注文も増えつつある。「合弁したころは技術、管理に問題があり、スペースが空いていることが多かったが、いまは満杯だ」(シキボウ・上元章生生活資材事業部長)。
日清紡/銀ナノ加工を全面提案
日清紡は現在、全社を挙げて新タイプのハイテク抗菌・防臭加工である銀ナノ加工「Agフレッシュ」の拡販に取り組んでいる。シャツ、ユニフォームなどの分野はすでに、今年で2シーズン目を迎える。各分野とも好評で、今年から寝具・寝装分野でも採用することを決めた。来春夏シーズンから同加工品が店頭に並ぶ。
「Agフレッシュ」はハイテク技術を駆使して開発した。繊維上の細菌の増殖を抑制し、臭いの元となる細菌の働きを抑える。寝具は毎日、洗濯するものではない。それだけ汗や皮脂が付着するし、湿気もため込む。細菌が発生しやすい環境にある。同加工を行うと細菌が発生しにくく、いやな臭いもしない。
銀をナノサイズまで粉砕して加工するので、粒子が繊維の中まで入り込み、洗濯したくらいでは落ちることはない。また、銀は経口毒性がないことを証明された安全な金属だ。
羽ぶとんなどの重寝具から綿毛布、タオルケットなど季節物の軽寝具まで要望があれば、全商品に施す。主要取引先に提案して、同加工の拡販を進める。
ダイワボウ/機能提案で需要喚起
ダイワボウは寝具・寝装側地にこだわって、需要の開拓を進める。機能素材の見直しと、充実に力を入れてきた。来春夏に向けてはとくに、軽量でウオッシャブル性に優れた素材、ナノテクノロジーを駆使したスキンケア素材などを打ち出す。
軽量素材は「ライトプルーフ」として訴求。重量は一般の高密度織物に比べ30%以上軽い1平方メートル当たり100グラム未満。洗濯を繰り返しても通気性を保つことができるウオッシャブル機能も特徴だ。緯糸にはポリエステル糸を使用し、速乾性にも優れた特性を発揮する。
ハイテク技術ナノテクノロジーを使った機能素材を「ナノワールド」でくくり、「レイポリー」「ビタキューテン」「ヒノガード」の提案を行う。とくに生体高分子加工である「レイポリー」の訴求に力が入る。同加工は生地の表面から外的刺激物を取り込み肌を守るバリア効果が期待できる。このほかに抗菌・防臭機能、保湿、汚れがつきにくいなどの効果を併せ持った多機能素材だ。
なお、「ビタキューテン」はビタミンC効果が期待でき、「ヒノガード」は花粉付着防止機能を持つ。
田村駒/こだわりの「MJ」企画
田村駒のホームファッション事業部は今年4月、日本製にこだわったインテリア、寝具・寝装、タオル、水回りなど家庭用繊維製品を「MJ」企画で提案することを明らかにした。今秋冬からカバーリングや毛布など一部商品の本格販売に入っている。
同社では「MJ」を日本製に加え、素材にこだわった家庭用繊維製品の総合企画として育てていく。MJはメード・イン・ジャパンの頭文字を使ったハウス・ブランドだ。
家庭用繊維製品は生産基地が10年ほど前から海外移転が続いた。今日では店頭に輸入品があふれ、国産品が少なくなった。一種の希少性さえ感じられるようになった。そのような市場の状況を背景にMJを立ち上げた。併せて、素材の見直しも進め、天然繊維と環境に優しい繊維にこだわった。
すでに和紙繊維を使ったカバーリングや毛布などが取引先のブランドに組み込まれて店頭に並び始めた。来春夏向けに、タオルケット、綿毛布、肌掛けぶとん、カバーリングなど季節商品の提案に入っており、新しく麻製品やタオル製品を打ち出す。
商品の特徴を生かす素材にもこだわっており、その種類も多い。綿ではオーガニックコットン、毛布ではカシミヤ、アルパカ、キャメル、シルクなどの天然素材をそろえた。そして新素材として麻を加える。
また、大豆タンパクやトウモロコシ繊維など、環境に優しい素材も積極的に採用した。その中には、王子製紙が開発した和紙繊維「OJO+(オージョ)」や「ササワシ」といった特殊繊維もある。
近い将来、MJのこだわりを輸出することも計画する。今月1~3日、中国の上海で開かれた「インターテキスタイル上海―ホームテキスタイル」に、MJ企画から王子製紙が開発した和紙繊維OJO+を使用した毛布、敷きパッド、日傘を出展した。同社のブースを訪れた多くのバイヤーが関心を示し、海外でも売れる感触をつかんだという。