特集「商社の素材開発」/発掘した素材、開発で幅出し
2004年09月15日 (水曜日)
糸が製品のカオ作る
商社が素材調達から製品までのOEM(相手先ブランドによる生産)を一貫で請け負う品目で最も取り組みやすいのがセーター、カットソーなどのニット衣料だ。布帛に比べると、糸を投入すれば最終製品に仕上るまでの工程が短いためで、ここで差別化する際には使われる糸がモノを言う。
蝶理はセーター用の高級原糸の発掘・開発に力を入れている。
イタリアの紡績企業グリニャスコ社のグループ企業から調達するレーヨン混は「サモア」(グリニャスコグループの商標)。マイクロレーヨン68%、PBT(ポリブチレンテレフタレート)繊維32%の精紡交撚糸(50双)で、春や秋に着る軽めのセーターに適した素材。ドレープ性が高く肌触りが柔らかい。
一方、今冬物で一部に採用が決まった「デュエ ロッソ」はカシミヤ70%、ソロテックス30%の紡毛混紡糸(26双と52双)。カシミヤ100%に比べてピリングを抑えられるほか、ソロテックスを使うことで形態安定性を持たせた。主に婦人ミセス向けに提案、05秋冬に向けて梳毛糸(52双)を加え、販売を本格化する。
蝶理はこうした素材の開発と販売で社内連携を進めるための「商材開発推進委員会」(委員長=坂田年男取締役)を7月に発足させた。10以上のテーマを設定、最低3つの部が関与するものに絞っており社内で情報共有、販売の拡大につなげる考えだ。
ペーパーヤーン「OJO+〈王女〉」やペルー産綿100%使用のコンパクト糸「アンデス物語」、「ソロテックス」、シルク、イタリアのサントニー社製無縫製丸編み機など現在12案件を抱える。
海外素材メーカーの糸の良さを日本の開発力によって表現しようとするのが兼松繊維。伊ニルスター社のナイロン66「メリル」を使った日本製テキスタイルは国内市場での広がりだけでなく、海外市場への期待も高まっている。
近い将来にも一大消費地となる中国がその一つ。メリル100%や綿、レーヨン、トリアセテート各混の日本製織物は、1メートル当たり10~20ドル弱という高価格帯にもかかわらず、関心が高いという。
現在、販売が見込まれている先は上海、広州、深せんの婦人アパレルなど8社。200~300店舗を展開する企業も含まれている。対中輸出は代金回収など一挙に拡大するには難しい面があるものの、「素材に対する反応は良く、巨大市場だけに期待できる」(重松守執行役員営業推進担当)として実績を積み上げていく考え。
一方、欧州発の糸が日本のモノ作りによって魅力を引き出されており、兼松繊維は日本での展開で契約しているイタリアのアウトドアブランドを手始めにミラノ店での営業活動を本格化する。米国向けも6月に始動した繊維現地法人「KTC USA」を通じ、現地のアウトドアアパレルへ提案するなど営業活動を活発化させている。マイクロファイバー以外にも一部扱っている紫外線防止、抗菌など機能糸、中空糸を用いた生地がウインドブレーカーやダウンジャケット用に関心を集めている。
豊島は各部が扱う糸や生地の差別化を加速させている。
一宮本店の一部はウールや獣毛の原料と糸を取り扱う。「中国との住み分けを意識したモノ作りが鮮明になってきた」と太田幸男部長は尾州産地の事情を語る。今秋冬物向けにツイードの荷動きが良かった中で、中国で作るには難度の高い、特徴ある表面変化が出せる商品への糸供給を志向。3、5、7といった太番手のロービングヤーンや麻、レーヨン、アクリル各混、篠杢合わせのスラブ糸などが好評だった。差別化糸比率は以前の3割から5割へと高まっている。
綿糸や化合繊糸を取り扱う二部は“メード・バイ・豊島”と呼べる独自の糸作りに乗り出した。
0・99デ シ テックス以下の細さの細繊度わたを使用したスフ糸でインドを本拠とするビルラグループからわたを調達、インドネシアの指定工場で紡績した糸の販売を近く始める。従来、ポリエステル混紡糸をバッキング材など産業資材向けに展開していたが、レーヨン100%糸を衣料向けに狙いを定めて売り込む。尾州産地のテーブルメーカー2社で試作したところ、「柔らかい手触りとしなやかさで評価が高い」(子安光徳部長)という。
差別化糸をシリーズ化
新興産業が輸入販売するインド産超長綿・長綿を原料とするニット糸「ソレイユ」。糸の仕上り具合などインドの有力紡績と丁丁発止のやり取りを重ねて作り上げた差別化糸であり、その販売量は、国内素材取引の縮小という逆風下で定番糸販売が縮小するのを尻目に伸びている。
レギュラー糸(20単~60双)と強撚糸(40単、60双、80双)、受注生産する複合糸のソレイユシリーズにはさらに、05春夏物向けからコンパクト糸、05秋冬物向けからインド産オーガニック綿花使用糸が加わる。
コンパクト糸は、毛羽が抑えられているため生地にすると表面がきれいになるほか、ハリ・コシがあり発色性にも優れる。
オーガニックわたを用いた糸は、しっとりとした手触りで肌に優しいソレイユの「ナチュラル&テンダー」のコンセプトに沿ってさらにこだわったモノ。オランダの認証機関、SKALから綿花と紡績工程の両方で認定を受けており、「地球に優しい」ことも売りにしたい考えだ。
受注生産品はパシュミナ混、インドのマイソール産シルク、マイソールペニー混、フランス産リネン混のそれぞれ混紡糸、精紡交撚糸、超強撚糸、超甘撚り糸。一般の甘撚り糸の撚り係数が3・0~3・2であるのに対し、同社の超甘撚り糸は2・2程度という。
差別化糸のシリーズ化によって糸のブランドを強化し、川下へその良さを訴えやすくする。親会社クラレの開発力を生かしてクラレトレーディングがそうした試みに取り組んでいる。
同社は、クラレが開発した糸を使い生地、製品で販売する役割を担う。クラレの独自ポリマーと紡糸技術によって開発された「ミント」シリーズの用途開拓・販売はそのうちの一つだ。
同シリーズの本格販売は02年春に始まった。水に溶ける酢ビ・ポバール系樹脂「エクセバール」と水に溶けない他のポリマーを溶融複合紡糸した糸は、海島型で海の部分をエクセバールにして後で溶かすことでマイクロファイバー、島の部分をエクセバールにすることで多孔中空糸ができる。マイクロファイバーはヌバック調織・編み物「エルモザ」、多孔中空糸は「エアーミント」として知られている。
有賀三剛クラレトレーディング衣料カンパニー衣料開発部長は「できる限り安定需要がある用途を中心に、その幅を広げたい」との同シリーズの販売戦略を語る。
発色が良くてドレープ性が高くストレッチ性もある「エルモザ」は婦人スカート、パンツ、ジャケットなどこの種の商品がよく使われる分野にはすでに浸透している。一方で、「紳士ブルゾンやジャケット、いす張り地などインテリア関連、ひいてはカーシート」といった分野にも広げようと、用途開拓中だ。
「エアーミント」も中空率40%による軽さや、熱を遮断したり保温したりする特性を生かしてスポーツ衣料などで認知されている。今後はさらにこれに加えて、緯糸にエアーミントを用いた軽量デニム、軽くて温かい毛布などへの展開も始めた。
単一素材 全ブランド採用
「大手アパレルの全ブランドに採用された」(渋谷龍一住金物産開発営業部長=別項記事参照)。大手染工場の協力を得て超撥水・防汚のナノ加工を施した綿100%天竺中心の丸編み地は今春夏、大好評だった。
「ソロテックス」を用いた用いた素材開発も進む。レーヨン、スーピマ綿、ウールとの撚糸または混紡糸は自社全額出資の編み立て・染色・縫製一貫工場、青島美金針織服装に持ち込む製品事業へとつなげている。糸自体は先週6~9日に上海で開催された「スピンエキスポ」に日系紡績の軒を借りて出品した。
中国大手企業との関係も太くなりつつある。
香港系の大手織布・染色加工業者、ウィニーテックス(浙江省杭州市)は綿ストレッチや一部合繊を扱い「起毛・バイオをこなせるなど染色加工の水準が高い」(渋谷氏)。03年は量販店系の有力アパレルなどに50万ヤードの織物を販売。今年6月にはウィニーテックスが主催する形で東京で素材展を開催したところ、大手総合アパレルから高い評価を得て自社で社内展を開きたいと要望が寄せられた。今年は日本向けに250万ヤードを見込む。
ウィニーテックスは欧米向けの販売が多く、日本向けは全体の1%ほど。住金物産は対日輸出強化を狙う同社の販売代理店の地位を得つつある。素材調達の現地化が進む中で、同様に綿ストレッチなどの加工が得意な山東省の染色加工業者とも素材開発に取んでいる。
テキスタイル貿易で有力商社の一角を占めるトーメン。昨年来、営業現場レベルの協力関係を深めてきた豊田通商と新素材の輸出に乗り出す。
豊田中央研究所が開発した紫外線だけでなく可視光線にも反応する光触媒「V―CAT」(図参照)。防汚・抗菌・消臭の働きがあるこの物質を繊維に加工したテキスタイルを欧米アウトドアアパレルへの販売に強いトーメンが担う。
8月に米ユタ州ソルトレークシティーで開かれた06春夏物向けの「アウトドアリテイラーショー」。旭化成せんいの吸汗速乾ポリエステル「テクノファイン」を使った生地に加工した商品など10品番を出品したところ、「早速サンプル依頼がくるなど予想以上の反響だった」(木村博人部長)。
輸出では純国産品のロングセラーで透湿防水機能素材「ジェラノッツ」でも開発を続けており、シリーズは200品番に達した。この種の商品は合繊メーカーなどと競合するが、「メーカー的な機能、開発力がないと生き残れない」とさらに磨きをかける。
豊島は抗菌・防臭などの効果がある銀繊維「ミューファン」を展開している。中心となっている十部は大手ユニフォームメーカーと取り組んでミューファン使いの素材供給を担っているほか、裏地では紳士服用からスポーツ用まで展開を広げてきた。03秋冬で大手インナーメーカーを通じて大手量販店のPBに採用された後、インナーメーカーが自社でも展開したいと希望、紳士物のみだったPBから婦人物へも使われ糸供給は増えている。台湾のインナーメーカーへの糸輸出も始めた。
一方で、ミューファンを従来のスリット糸にする使い方に加え、粉状にした「ミューファンパウダー」をプラスチック製の日用品に用いるといった開発も進んでいる。「浴槽やトイレ、食品用ラップ、壁紙など可能性は幅広い」(伊藤彰彦十部一課チーフ)と山積みになった案件を一つひとつ実用化につなげる活動を続けている。パン職人がパンの生地をこねる際に台の上に乗せて使うキャンバス地にも入り込んでおり、新潟の厨房用品問屋の商品カタログにすでに掲載されている。
十部はテンセルの生地開発・販売でも中心的な役割を果たしている。原料の複合から混紡・交撚、交織・交編、加工とあらゆる組み合わせのテンセル複合で、05春夏の紳士物向けは麻、綿各混などに先行発注がきている。
今後の開発は「逆転の発想」がテーマ。テンセル原綿の種類が増える中で、例えば細繊度わたで太番手糸を作り、ざっくりした風合いの生地にするなど一味違う素材の開発を推進する。
メリル/兼松繊維営業推進室長・岩野利彦氏
03年10月のインターテキスタイル上海で初めて「メリル」を用いたテキスタイルを披露して以来、この素材の可能性が広がってきている。
メリルのナイロン66マイクロファイバーはきれいめな表面感、柔らかくてしなやかな手触りが今の流行に沿っており、トップスからボトムスまで、薄地から中肉厚地まで幅広いため、数多くのアイテムに使うことができる。そのため社内でもテキスタイル貿易、ファッションアパレル各部門から岡山繊維部、スポーツカジュアル部と多くの部署がメリルを基にした提案を進めている。
まず大手総合アパレルの主にミセスブランドで採用され始めたが、ここへきてキャリアゾーン中心の有力セレクトショップにも認められるようになってきた。綿混の高密度織物の目面の美しさが好評で大手アパレルの基幹ブランドにも入った。メリル85%、ポリウレタン15%の丸編み地、経編み地に起毛加工したモノなどは今秋冬で販売を本格化できている。
開発は大手綿紡績、毛紡績のほか、有力産元、染色加工業者らとの共同体制。単純な糸売りで素材をつぶしてしまいたくないので、これにはとくに力を入れている。展示会に備えて開発するのは100品番。うち実際に展示するのが80品番。最終的にピックアップされるのは10品番と的中率は高くないが、顧客が使う際の独自性を大切にしており、大手生地商と協力しながら個別の客向けの開発にも取り組んでいる。
本国イタリアをはじめ欧州ではメリルの開発はもっぱらフィットネスウエアやインナーを中心としたニット生地。日本の技術と開発力を生かした生地、とくに織物はニルスター社から高く評価してもらっており、「欧州にもぜひ提案しにきてほしい」と要望が舞い込んでいる。ミラノの事務所を通じてメリルの逆輸出が始まりつつある。
田村駒ホームファッション事業部第2部長・金丸功氏
繊維関連製品への機能付与や美容・健康を切り口にした商材、産業資材などでたくさんの開発案件を抱えている。もともとはリネン、ホームファッション関連製品、下着などを扱う部だが、活性炭フィルターや不織布など品目の幅は広がっている。繊維からライフスタイルへ、が開発の大きな流れだ。交換した名刺のほとんどは繊維以外の業界の人のモノになってしまっている(笑)。
目指す開発とは、自社発信型であるのはもちろんだが、従来の商社の素材開発のように糸と糸との組み合わせといったものだけにはとどまらない。メーカーの立場に極力近付いた開発で、知的財産権と認められるような難度の高いものにも挑戦している。大学に研究開発を委託する産学共同も実際に進んでおり、大阪府立大学や信州大学とはすでに契約を結んで依頼している案件がある。その他大学にも接触している。
産学連携の例ではないが、身近なものでは岸和田だんじり祭でみこしを担いで走り回り人たちが着る頑丈な作りのズボンを開発した。縫製の仕方を工夫しており、伸び縮みすることにより激しい運動に耐えられる。これをきっかけにもうすでに全国へ波及した。大手下着メーカーのブラジャーのヒットブランドに“リラクゼーション加工”する役割も担った。
商社は独自性のあるこうした知的財産については無防備だった。異業種の企業と一緒になった動きを活発化させており、特許事務所通いが最近は頻繁になってきた(笑)。
商社は何十年と仲介業をしてきたわけだが、ここらでメーカー機能を付けて販売のあり方も改めて考え直す必要が出てきたのではないか。繊維は過去10年超は中国生産に傾斜し続けてきたことも反省材料の一つ。日本製にこだわった当社の独自ブランドの繊維製品「MJ」はそうした反動から生まれてきた。良いモノ作りができる国内メーカーと今後さらに積極的に協力したい。
ソレイユ/新興産業ニット衣料部素材課純綿糸特殊糸担当・大島亭氏
5年前から販売を始めた「ソレイユ」の長所の源は使用する綿花にある。
高級インド綿のシャンカー6長綿は通常品より繊維長が長い。インド産の特徴であるろう分の多さがしっとりした手触りになるためニット用綿糸として最適だ。
さらに、綿花の収穫から紡績工程までにもこだわっている。
インドの綿花の収穫は手摘み。米国や豪州では大規模機械化農業が進んでいるため年1回の収穫で済ませる。これに対しインドでの収穫は綿花の成熟度に合わせて5回。
1回目に穫った綿花は降雨によって汚れていることが多いし、4、5回目は木の下方になるため成熟度が低い。ソレイユにには最も良質になると言われる2、3回目に収穫したモノしか使っていない。
手摘みはコンタミネーション(異物)が混入することが多いという欠点があるが、このコンタミを分離する工程でも繊維を傷めないローラージンを採用している。手摘みとローラージンの計3回の工程を経ることでコンタミを大幅に軽減できる。一人当たりの1日の処理量は60キロと、機械によってくしで梳くソージンの方が圧倒的に生産性が高いが、この点は譲らないようにしている。おかげで繊維を傷めずに済むので、均整度が高くなる。
ソレイユのコンセプトは“ナチュラル&テンダー”。人の肌に優しいだけでなく、地球にも優しい点を売りにできるオーガニック綿花を用いた糸も05秋冬物向けから販売し始める。
入社以来ほぼ一貫して綿糸を担当しているが、縮小が続く国内素材取引市場でソレイユの販売は年々伸びている。
住金物産開発営業部長・渋谷龍一氏
――開発営業部の中身と役割は。
03年4月に発足した。原料、テキスタイル、雑貨、インドの各グループから成り、売上規模は年間約60億円。売り上げを大きく伸ばすために各グループがそれぞれに手を打っている。
――発足の狙いは。
4年前に作った素材開発チームがそもそもの前身。旧海外繊維部にあった原料部門に加え、最近とくに力を入れ始めた雑貨、昨年7月に組み入れたインドからの輸入チームを部として束ねた。テキスタイルグループは従来、アパレルとの直接取引だったが、提案した素材を製品へと縦につなぐ考えから、社内の製品部門に販売する形態に切り換わっている過程だ。当部が主体性を持ってアパレルに求められるような生地を開発して提案し、製品部門はその生地を一つの切り口にしながらアパレルのための生産受け皿機能を果たす。社として全体の機能を使って利益を残していこうという考えだ。そのために当部には高い開発能力が求められる。
――各グループが打っている手とは。
テキスタイルは国内外の素材メーカーとの共同開発に取り組んでいる。
雑貨は、アパレルからの要望が増えている。アパレルがとくにここ1年ほど衣料と合わせられる雑貨の提案を目指して雑貨の商品構成比率を増やしており、衣料とともに生産を請け負って欲しいと頼まれる。かばんや靴、ベルト、マフラー、帽子など手間はかかるが幅広い商品に対応していきたい。
――具体的な売上拡大計画は。
アクリルわたなどを扱う原料グループはメーカーの事業撤退でいったん縮小したため事業再構築を始めたところだ。テキスタイルは基礎が固まってきた手応えがあり、05年度30億円を目標としている。雑貨は早急に倍増させて20億円。インドは現在5億円を2年で倍増する。その芽はすでに出ている。
双日「レンチングFR」/次のステップは複合化
双日がオーストリアのファイバーメーカー、レンチング社から独占輸入するノンハロゲンタイプ難燃レーヨン「レンチングFR」。この販売戦略は転換点を迎えている。
「短所を補い長所を生かし切る複合を」とわたの複合化による機能性の向上を目指すのは中安一仁パルテックス事業部原料資材ユニット第三チームリーダー。アクリル、ビニロン、アラミド、ポリエステル、レーヨンと数ある難燃わたにはそれぞれの特性があるため、複合によってそれを補おうとする発想だ。レンチングFR、ひいては混合されるわたの販売を伸ばすため、メーカーと同業社間の協働を促すための意見交換をこのほど始めた。「競合から、協調による相乗効果発揮に変えられるはず」と次の段階へ歩を進める。
「モダール」を基に開発されたレンチングFRの販売は数年前に始めて「第1段階の目標数字は達成した」(中安氏)。販売分野は大きく分けて(1)消防着などの防護衣料やガソリンスタンド、電力会社作業員などのユニフォームを中心とした衣料(2)耐高温のエアフィルター用の不織布(3)インテリア――の3つ。香港の空港・市内間を走る電車のシートに使われており、現在その用途を日本でも開発中だ。