不織布列伝/魅力いっぱい~不織布新商品~
2004年09月29日 (水曜日)
カネボウ合繊「エスパンシオーネ」/接着不織布を拡大
ポリウレタンを原料とするメルトブロー不織布(MB)。ウレタンだけを使用するのは同社のみ。カネボウの事業再生計画の中で、防府合繊工場で生産するナイロン事業の内、継続が決まった4品目の一つ。
ウレタン原料による伸縮性、柔軟性、透湿防水性、低発塵性などの特徴を生かし、救急ばんそうこう、クリーンルーム用手袋、マスクなどが主力。スポーツ靴のアッパー素材としても使用される。
同技術を改良した「エスパンシオーネFF」は接着する素材の間に挟み、熱プレス機やアイロンで加熱押圧するだけで、素材同士をしっかりと接着。乾燥時間も不要で、作業性に優れている。ウレタンの弱点であった耐光性も向上している。無溶剤タイプのため、環境や人にも優しいという特徴を持つ。「エスパンシオーネ全体の20%を目指す」(原田啓介ナイロン販売部長)。
東邦テナックス「パイロメックス」/NAS電池のコスト削減めど
アクリル繊維を空気中で酸化することで、耐炎性を付与した国産唯一の素材。耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性に優れ、無機繊維にはない紡織加工性やドレープ性、柔軟性もある。生産能力は年産700トン。
パイロメックスの将来を担うのは電力の負荷平準化用途や落雷などによる瞬時の電圧低下、停電発生時のバックアップ用の大容量二次電池であるNAS(ナトリウム硫黄)電池用電極材。同電極材は不織布製造のフジコー(兵庫県伊丹市)、日本ガイシ(名古屋市)と共同開発したもの。同電極材はパイロメックスを原料に、フジコーがニードルパンチ不織布(NP)を製造。この不織布を東邦テナックスが、焼成して炭素繊維化する。
日本ガイシは03年に量産工場(6万キロワット)を建設済み。フジコーも専用NP設備、東邦テナックスはこのNPを炭素繊維化する専用設備(年産120トン)を導入するなど体制は整備済み。課題のコスト削減策も「半年遅れながら技術確立にめどが付いた」(溝端聖インダストリー販売課長)。
東レ・デュポン「ケブラー」/RUBA 吸音材で先行
強くて、伸びないスーパー繊維の代名詞。国内では東レ・デュポンが生産販売する。東海工場(愛知県東海市)に年産2500トンの設備を持つ。米デュポンから輸入販売するパルプのほか、タイヤコード、防護衣料、光ファイバー、構造物補強などに使用するが、「タイヤコード向けの拡大が課題」(上妻正博取締役ケブラー事業部門長)。
不織布用は一村産業(石川県金沢市)、高安(岐阜県各務原市)と共同開発した「RUBA」に力を入れる。難燃性と吸音性を併せ持つ。ケブラーペーパーとケブラーポリエステル混不織布の2層構造からなり、吸音特性は従来品の約2倍。難燃加工も不要のため、焼却時の有害物質の発生を抑え、簡単な方法でリサイクルできる。
現在はクリーンルームの空調機用で先行、自動車用も「年内にはめどを付けるとともに、海外からは大型クルーザーのエンジン回りで引き合いがある」。その他、電池セパレーターや配線基盤、さらに耐熱フェルトなど不織布(湿式含む)への展開がある。
ダイワボウ「アレルキャッチャー」/アレルゲン分解不織布
花粉・ダニのアレルゲン(アレルギー誘引物質)分解不織布。同社が信州大学と共同開発した消臭繊維「デオメタフィ」を使用したサーマルボンド、ニードルパンチ、ケミカルボンドによる各不織布。
すでに東芝テック、日立ホーム&ライフソリューションの掃除機フィルターに採用済み。デオメタフィが花粉やダニアレルゲンのタンパク質を構成する高分子鎖を切断し、分解・不活性化することを確認。さらに、分解能力も高く、効果も長期間持続することが解明されたことから、不織布として発売した。
アレルゲンの分解率は99.99%、デオメタフィの特徴である窒素酸化物や硫黄酸化物などの除去、消臭・抗菌性もある。素材構成はデオメタフィ20%、ポリエステ80%中心。価格は平方メートル当たり500円。不織布だけでなく、加工品でも展開、車両用、空調用、寝装品にも。
三井化学「テクノロード」/針金のようなプラスチック
ポリエチレン製プラスチック線材。針金のように自由に折り曲げられ、形状を保つ。
繊維のように紡糸、延伸して生産する。針金とは異なり、引っかき傷や突き刺しによるケガが発生し難く、焼却処理可能なほか軽量。食品・医療用品での金属混入の確認が容易にできる。現在、マスクや結束材向けに販売中。
同社試験によると、戻り量は針金の5°に対し、テクノロートは8°、結束量は2キロに対し、1キロ。価格は1メートル数十銭から10円。今後はメディカル用途などの開拓を進める。
新日石プラスト「ミライフ」/印刷特性に優れたFEタイプも
タテウエッブ(MB)、ヨコウエッブ(特殊紡糸)を別々に製造した後、ヨコウエッブにタテウエッブを挿入して積層した独自不織布。ポリエステル製。織物ライクな構造と寸法安定性に優れるほか、光沢感があり、表面が平滑性のため印刷特性に優れる。芝山工場(千葉県山武郡)に年産7500万平方メートルの能力を持つ。6グラムの低目付品による高級菓子包装、平滑性を高めたFEタイプも本格投入し、壁紙などインテリア用途も狙う。
ミライフの平均目付は現在、13グラムで、製品幅は2.2メートルまで対応可能。主にフラワーラッピングなど包装材料向けに展開する。
同社(東京都港区)はミライフを主力の割繊不織布「日石ワリフ」(年産2億4000万平方メートル)に並ぶ柱商品に育成する考え。
クラレ「ベクルス」/「ベクトラン」製MB
高強力ポリアレリート繊維「ベクトラン」と同じ液晶ポリマー使いのメルトブロー不織布(MB)。プリント配線基盤用に開発したもの。
ベクトランは高強度・高弾性率が特徴で、汎用繊維の約3倍の強度、約5倍の弾性率を持つ。火星探査機のエアバッグに採用されたことで有名。
このポリマーをMBで不織布化したのがベクルス。吸水率が低く、吸湿寸法安定性が良い、優れた電気特性、耐薬品性、耐放射線性、耐電圧性などが特徴で、耐熱絶縁紙、工業資材などに展開する。
04年2月に、プリント配線基盤のほか年産150トン(400万平方メートル)の専用設備をクラレ西条(愛媛県西条市)に設置済。04年の販売計画は30トン、06年130トン。
ベクトランの液晶ポリマー使いでは精密印刷用スクリーン向けの複合繊維「ベックリー」、プリント配線基盤用フィルム「ベクスター」も開発している。
東レ「テファイヤーHG」/バグフィルター用NP廉価品
フッ素繊維「テフロン」とガラス繊維を混綿したニードルパンチ不織布(NP)。都市ゴミ焼却場のバグフィルター(ろ過布)用不織布の代表格である「テファイヤー」は02年5月に特許切れ。
これに対応するため、廉価品として開発した。細く捲縮のある特殊なガラス繊維を使用しており、補集性、均一性などを高めるとともに、価格を従来品に比べ10~15%安に抑えることができた。
同社は02年、米デュポンからフッ素繊維を買収。これまでは米デュポンに生産を委託していたが、04年9月に、炭素繊維製販子会社、トーレ・カーボン・ファイバーズ・アメリカ(TCA)隣接地への設備移設を完了し、自社生産を開始した。
同社によると、都市ゴミ焼却場は新設が一巡。ピーク時の01年に比べ4割減。これらの取り替え需要が始まるまで、バグフィルター向けは苦戦が続く見通し。
タピルス「コルケミシート」/機能性粉体充填シート
不織布の片面ダンボール形状に成型し、波型部分と平シートとの空間部分に機能性粉体を重点したもの。粉体は乾燥剤、消臭剤、防虫剤、抗菌剤を入れることができ、用途に応じたシートが作成可能。
ふとん乾燥シート、脱臭シート、防虫シート、台所抗菌シート、老人用抗菌シートに展開するほか、光触媒を使用した土壌汚染対策などでも開発が進む。
同社(東京都港区)はメルトブロー不織布(MB)専業。親会社である日栄工業(同)に2系列・年産600トンのMB設備を持つ。電池セパレーター、液体フィルター、マスク、エアフィルターが主力用途。03年12月、生産委託先の日栄工業の子会社となり、東燃タピルスから現社名に変更している。