商社のスーツ販売善戦
2004年10月05日 (火曜日)
紳士服チェーン好調で
郊外型や都心型2プライス紳士服チェーン店へ製品を納める商社は、市場の好調さを映して業績を伸ばしている。今年7月までのスーツ輸入は、財務省の貿易統計によると610万着と昨年に比べ8%増え、金額ベースでも4%増加した。小売りの在庫調整が進み、市場が好転したとの見方が支配的だ。
オフィスのカジュアル化対応も進む
販売量の9割以上を大手チェーン2社に納める住金物産メンズ衣料第二部。郊外店の新規出店などを受け好調に推移した。中村英一部長は「今年の販売量は昨年比10万着増の55万着に達する」と強気の見通しを示す。中国の縫製主力拠点である常州ハートマンで、これまで十数万着だったスーツ生産能力を最近2年ほどで20万着まで拡大、販売量の増加に備えていた。このほか、大連の自社工場2社では操業時間を延長し増産に対応している。
同じくチェーン2社に販売するNI帝人商事衣料第三本部は、今秋冬物の販売量を前年に比べ20%以上増やした。北野弘取締役本部長は「来期はベトナムの生産量を現状の6万着から12万着へ倍増させたい」としている。ベトナムの協力工場、フート荘内スーツは、荘内スーツ(山形県飽海郡)の技術力を生かし、総毛芯仕立てのスーツを日本向けに生産してきた。
大手郊外店との結びつきを強化する蝶理アパレル第3部は「05年度の年間販売量を50万着へ拡大する」(山下幸雄部長)という。同社は今秋冬、20%増の20万着のスーツを販売する。年間では40万着強を見込む。50万着体制を達成するため、今年末には生産地での一貫物流体制を支える倉庫が完成する予定だ。
伊藤忠商事ブランドマーケティング第一事業部第八課は、郊外店向けで27万着と昨年並みの販売量を確保。田村駒は郊外店向けが減少した。同社では「春夏物の販売量が減少し、秋冬物に対して慎重に構えていた」(尾崎正浩第1事業部第3部第2課長)。しかし、百貨店のプライベートブランドや催事売り場向けで前年並みを確保した。
ジャケット対応が増加
スーツ販売の一方で、オフィスのカジュアル化の影響で縮小する市場への対応を迫られている。対応策の一つがジャケット。ジーンズに合わせることを意識しながら、オンタイムにも着用できるアイテムとして注目を浴びる。
NI帝人商事は今年春、上海に4000万円を投じてジャケットの専用ラインを確保、今秋冬物から本格的な生産に乗り出した。秋口の滑り出しは好調で、初年度10万枚の販売を計画する。
蝶理はジャケット販売量が今秋冬、20%以上増えた。ジャケットをはじめ、オンタイムに着用可能な紳士服カジュアルへ展開し、機能強化で団塊世代を取り込む考えだ。
オフィスのカジュアル化に合わせることで、スーツを扱う商社は、カジュアル化の波を商機ととらえ、その布石を打ち始めた。