テンセル会2005秋冬コレクション/テンセルの真髄を提案
2004年10月18日 (月曜日)
テンセル会理事長・小島幹人氏/進化したテンセルを提案
精製セルロース繊維「テンセル」はかつて、ファッション衣料素材のステータスシンボルの地位を占めた。今テンセルは、単にファッション素材としてだけではなく、より普遍化された素材となった。シーズンを通して年間使われる素材となり、その用途もキャリア、ミセス向けのみでなくヤングへの浸透も著しい。「テンセル会」は、日本の、さらに世界のパイオニアとしてテンセルを育み、リーダーの役割と機能を果たしてきた。
テンセルは、常に“進化”し続けることによって新しい“テンセルの世界”を構築していくものでもある。テンセル原綿の消化量は中国や米州より量的には劣るものの、“質感”“価値感”“付加価値”作りでは、日本のテンセル会の右に出るものはない。このテンセル会が今月20、21日の両日、東京の恵比寿イーストギャラリー(3階)で「2005秋冬コレクション」を開催する。同コレクション開催を前に、この催しの狙いや出展商品を紹介し、“テンセルの真髄”に触れる。
テンセルジャパン代表取締役・住永憲治氏/テンセル会05秋冬展示会に寄せて
皆様すでにご存知の通り、今年5月4日付で、オーストリア・レンチング社はテンセル社を買収し、この統合によりレンチング社は名実ともにセルロース繊維市場における世界のマーケットリーダーとしての地位を固めました。中でもリヨセル繊維におきましてはオーストリア(ハイリンゲンクロイツ)に加え、イギリス、アメリカの工場を所有することになり、生産キャパシティーの柔軟性と商品の幅出しが充実致しました。
「BETTER TOGETHER」(レンチングとテンセルが力を結集した、融合ブランドの誕生)のキーワードの下、より良いサービス、より多くのノウハウ、より広い商品ポートフォリオを皆様にご提供できるものと思います。
テンセルはファッション、衣料業界では日本はもとより、アメリカ、アジアでもブランドとして有名で、深く浸透していることから、統合後のリヨセル繊維のブランド名は全てテンセルとすることに決定致しまし
た。ブランド名統一の時期は全世界的には05年6月からとなります。(ただし、日本のみは例外措置とし
て、それ以降も一定期間、「Lenzing Lyocell」のブランド名を継続使用できることとされています)
テンセル・ロゴ、デザイン、ブランドイメージについては現在準備中で、05年3月初旬には「ニュー・テンセル・イメージ」が発表される予定です。
テンセルがそのブランドとして存続することはテンセル会にとりましても喜ばしいことと思いますし、テンセル育ての親あるいはテンセル事業のパイオニアとして業界を牽引されてきた皆様には、今後も引き続きテンセル・ブランドを開発、発展させて頂きたくお願い申し上げます。
X―CREATION委員長・橋田佳雅氏/エコライゼーションを追求
今年度の開発テーマは「エコライゼーション」。エコロジー、リラクゼーションとの共生の中で、「新しいタイプのテンセル、また、テンセルの進化」を訴求した開発に取り組んできました。今回のテンセル会2005秋冬展では、糸開発の2点、加工開発の1点をとくに強調したいところです。加工開発では、ナチュラルストレッチは緯伸びだけでなく、経伸びの商品も提案致します。
また、テンセル会と豊島紡のコラボレーションによるテンセル×アンゴラ、テンセル×カシミヤの複合素材で横編み(「ホールガーメント」)も提案します。
従来にない新紡績技術による効果で、軽く、ソフトで、ぬくもりがあります。
H・Lタイプ糸(仮称)は毛羽の少ないコンパクトヤーンより、さらに上質の糸ができました。ニット用として価値のある素材でもあります。A―100を秋冬としてでなく、フルシーズン用としても提案し、近々布帛テキスタイルにも応用開発していくつもりです。
白化現象に対しては、ノンフィブリル原綿のA―100、A―200を活用します。レギュラーテンセルは、高度な樹脂加工をすれば、防止は可能です(ただし、強度が若干低下する可能性があります)。
テンセル複合で、ポリウレタン弾性糸使いはフィット感があって、シルエットが描けます。また、PTT繊維「ソロテックス」については、ハリを持たせてコンフォートでキックバック性もあり、楽に着脱できるという点ではキャリア、ミセス向けが最適ではないかと思われます。
硫化・顔料、などの染色方法も、在来からあるものをある程度進化させています。
テンセル製品の「洗い加工」は、トレンドと目先を変えた小回りで、反染めとは違う商品群があるので、このあたりも見所の一つです。
当日会場で、各位様のご評判、ご要望をお聞かせいただければ幸いです。
豊島十部一課/進化したテンセルを提案
豊島は「テンセル」のパイオニア商社だ。川上、川中、川下のあらゆる部分で接点を持ち、テンセルオルガナイザーの機能を果たし、そのリード役を常に担っている。
「テンセル会2005秋冬コレクション」では、全160点中の50%を占める80点を出展。ナチュラル・ストレッチ、テンセルコアヤーン、テンセル複合、加工など各段階での進化したテンセルを提案する。
テンセルは、フルシーズンの衣料向け素材として定着しつつある。このため、“秋冬展”のタイトルにこだわらず、同社は、“豊島発信型”のテンセルテキスタイルを幅広く提案していく。
ナチュラル・ストレッチは、豊島ブランドである「TST」の発表以来、輸出・国内双方での継続商品としてすでに好評だ。従来緯伸びのみであったものが、経伸びも可能になったことが特筆される。つまり、ナチュラル・ストレッチは、緯伸びと経伸びの2タイプを提案する。ポリウレタン弾性糸との複合で、テンセル「C・S・Y」を使ったテキスタイルもある。
複合品種では、綿混、ポリエステル混、ウール混、ナイロン混でレギュラーテンセル、テンセルA―100タイプを使う。
毛羽の少ない糸使いによるクリアなテンセルテキスタイルも見所の一つ。これは在来のコンパクト糸よりさらに上質な糸であり、通常糸の半分以下の毛羽指数を誇る。
加工については、特殊起毛、硫化染色、顔料染色(ムラ糸使いデニム調)のものを提案する。
モーリタン テキスタイル事業部/多様な丸編みを提案
モーリタンは、ニット生地設計、編み、染色加工までを一気通貫で行う、編みの総合メーカーだ。テンセル会2005秋冬展では、そのテキスタイル事業部が参加する。
同テキスタイル事業部は、丸編みテキスタイルの自社販売を業務として、月間約50トンの加工反を販売している。染色生産部の約30%を消化していることになる。
同展では20~30ゲージの丸編みを計50点提案する。その内訳は、起毛5点、中衣・インナー向け20点、アウター(一部インナー含む)向け25点だ。
主な素材は、ベア天竺同士の三重構造の編み物。テンセル×ポリウレタン弾性糸「ロイカ」、テンセル×ナイロン、テンセル×ポリエステル(機能糸)によるテンセル複合で、アウターの世界からインナーまでをカバーしている。また、スポーツ衣料にも対応し、とくにフィットネス用として提案する。
ベア天竺も単なるベア天竺ではなく、梨地、タック入りボーダー、ピケなどの変化編みは異色でもある。ミセスゾーン向けでは、おしゃれインナーにも通用するレギュラーテンセル×ポリウレタン弾性糸、テンセルA―200・綿混糸とポリウレタン弾性糸との組み合わせなども提案。変わったところではSZ追撚の丸編みもある。
吸水、吸湿、速乾、抗菌の機能商品は、高機能糸とテンセルを合撚した丸編みでエコロジーと機能を追求したもの。主にTシャツなどの中衣や外衣向けに提案する。
モーリタン発信によるカラー提案や生産での再現性(リピートの色合わせ)は万全の構えだ。
同テキスタイル事業部は、単なる加工反販売からもう一歩踏み出し、コラボレーションを強く展開できる縫製のパートナーを探している。
村松産業/テンセル複合化を強化
浜松の村松産業はテンセル・コーデュロイのパイオニアでもある。今回のテンセル会秋冬コレクションには、15点をハンガー提案する。
今回展に向けての開発コンセプトは「テンセル複合化へのさらなる進化」。このコンセプトをベースに、今春から開発に取り組んできた。具体的には、テンセルとPTT繊維「ソロテックス」との複合およびテンセルとスパン「ベンベルグ」(キュプラ)複合の2マークだ。
テンセル・ソロテックス複合素材は、伸縮性機能より、▽“キックバック性”がありヒザ抜けしにくい▽しわになりにくい▽着用感がソフト――という特徴を前面に出す。織り組織はツイルで、ボトム向けに提案する。
また、テンセル・スパンベンベルグは肉厚感を持つ、コーデュロイとベルベッチンの中間に位置する商品で、ウネが見えにくい。
このほか、コーデュロイのカッティング手法に一工夫したブロックコーデュロイも提案する。
フルシーズン向けには、レギュラーテンセルの30単糸、50単糸を使った薄地織物で中衣向けを提案。これに塩縮加工を施したものも出展する。
同社の継続商品のコーデュロイについては、テンセル・綿による14ウエルの細コーデュロイで、クリアな加工品もある。一見ピケ風に見えるのがミソだ。
また、テンセル・キュプラで太コーデュロイから親子コーデュロイも見せる。コーデュロイのカット手法の妙を取り入れたものだ。
志田/複合中心にニドム加工で特徴
志田は「テンセル」などを中心染色加工に造詣が深い産元の1社である。とくに、テンセルに必要なニドム加工の手法には一日の長がある。
今回のテンセル会秋冬コレクションでは、ニドム加工機で揉み、たたき、酵素処理および付帯加工したテンセル、ナイロン、綿、ポリウレタン弾性糸の複合織物を志田発信型テキスタイルとして提案する。
織り組織は、二重織り、サテン、オックスなど。従来のニドム加工と硬めの風合い作りをしたものは異色でもある。サテンブームの中、60単糸で、綿とテンセル、ポリウレタン弾性糸の複合によって、テンセル複合サテンとオックスを提供する。
加工では、ニドム加工とそれ以外の付帯加工を駆使して、新しい“風合”を表現したものを提案していく。