クラレ/独・HTトロプラストのPVB事業買収へ

2004年11月10日 (水曜日)

 クラレは8日、ドイツのHTトロプラストのポリビニルプチラール(PVB)事業買収を決定、同社の親会社であるルトガーAGと契約を締結したと発表した。これはクラレの基幹事業の一つである「酢ビ・ポバール系事業」強化策の一環。同事業の買収により、合わせガラス用中間膜の生産販売まで垂直に事業を展開することになる。

 クラレは「酢ビ・ポバール系事業」を強化する狙いで、01年に同じくドイツでクラリアントのPVA・PVB樹脂事業を買収、事業継続会社としてクラレスペシャリティーズヨーロッパ(KSE)を運営している。KSEは計画より1年前倒しで黒字化を達成。欧州市場の需要・用途拡大に対応するため、PVA樹脂「モヴィオール」の増設に着手、05年初めには生産能力を年産2万トン増設して同7万トンにする。

 HTトロプラストはKSEのPVB樹脂の主力販売先の一つで、同樹脂を使用して合わせガラス用中間膜を生産販売している。合わせガラスはPVBフィルムを貼り合わせた三層構造の特殊ガラスで、衝撃を受けてもひび割れや飛散を起こしにくく、自動車のフロントガラスや建築用途に使用される。HTトロプラストは同分野の世界市場で13%のシェアを持ち、建築用途ではナンバー1のリーディングカンパニーだ。同社のPVBフィルム事業は年商が約1億ユーロ。従業員は250人。ドイツのほかロシアに生産工場を持ち、米国やマレーシア、インドに販売子会社がある。

 買収は所管当局の正式承認を受けた後になるが、来年1月にはKSEの傘下に組み込み、同社の事業部の一つとして運営を開始できる見通し。合わせガラスの世界市場は14万~15万トンといわれ、自動車用が全体の3分の2、残り3分の1が建築用。