反転の途上で・商社の9月中間決算(1)売上規模縮小の流れにピリオド

2004年11月15日 (月曜日)

 日本経済は、自動車、電機などの製造業にけん引されて着実に回復している。個人消費にも明るさが見え始めたが、「衣料の小売市場に景気回復の恩恵はまだない」との見方が商社関係者の間では支配的だ。それでも、「失われた10年」間ずっと低採算取引からの撤退で売上規模の縮小を続けた流れにピリオドを打ち、今期から増収に転じる商社が現れ始めた。9月中間決算から、商社が減収から増収へ反転する姿を探った。

 12日までに決算発表した大手商社繊維部門と専門商社(メーカー系除く)のなかで前年同期より連結売上高を増やしたのは、伊藤忠商事、丸紅、NI帝人商事、住金物産の4社。

 単体では増収を確保したが、ダイヤモンドシティの株式を社内別部門に売却したため連結減収になった三菱商事を加えた計5社が「増収組」だ。前年に増収だった三井物産は、今期から物資本部と統合してライフスタイル事業本部に衣替えする大幅な機構改革を行ったため、前年との比較が非常に難しい。

 逆に「減収組」は、トーメン、住友商事、蝶理、新興産業、兼松繊維の4社。増・減収で明暗が分かれた形だ。

 増収路線に操舵した背景は、「これ以上の規模縮小は、利益も減る」(丸紅の小籔博執行役員・繊維部門長)との危機感があったため。換言すれば、「商社の利益源泉は売り上げ」(伊藤忠の岡藤正広常務・繊維カンパニープレジデント)を再確認した。

 各商社はこれまで付加価値を生み出さない売り上げをそぎ落とし、利益体質の強化に専念してきた。それに伴い、人員も減らした。その企業体質改善が一巡し、ようやく事業規模の拡大に乗り出したのが今期だった。

 たしかに、売り上げ拡大に成功した各社とも、増収幅は大きくない。最大の増加率だったNI帝人商事でも5・4%で、数%が大半。しかし、わずかでも反転攻勢が数字で示されたという意味では、期を画する決算なのは間違いない。

 一方、減収各社では大きく落ち込む商社が残る。4割近く減少した住友商事は、まだ構造改革の途上といえる。衣料部門を分社したため、単体では中間期売り上げ200億円規模までしぼんだ。トーメンは連結で1000億円を割り込んだ。引き続く撤退に加え、通常事業も苦戦。これにより、営業総利益も減少を余儀なくされた。