寝具・寝装特集/ホームファッション商社の新展開を見る

2004年11月24日 (水曜日)

 商社のホームファッション展開は大きく変わった。寝具市場は需要の減少と販売単価の下落で、その規模は10年少しの間に半分近くまで縮小した。販売単価の下落は、SPA志向の強まりで、流通経路の短縮化が進んだこと、生産基地が中国に移転し、コストが下がったことが原因だ。この結果、すべての段階が薄利になり、商社もつなぎの商売だけでビジネスが成立しなくなった。このため、商社は得意とする海外オペレーションのノウハウを生かしながら、差別化商品の開発、提案が求められ始めた。また、マーケット創造を伴う販路開拓も必要になってきた。

特徴あるモノ作り目指す/伊藤忠ライフスタイル事業部

 伊藤忠商事で寝具・寝装品を扱うのは、繊維資材・ライフスタイル事業部の第一課。昨年4月に2つの課が合併してできた。寝具・寝装品、靴、バッグ、レインウエアを扱う。同課の寝具・寝装品のウエートは45%に達する。

 同課は機能のないものの扱いは意識して減らす方針だ。そのために特徴のある商品開発に力が入る。NASAが宇宙船の内装材などとして開発した「プリマロフト」使いの寝具は発売4年になり、通販などで好調だ。羽毛が遠赤外線を発生する「エクラアクア」は特許出願中で、羽ふとん、敷きパッド、枕などの商品化を進める。わたに防風撥水加工した「コンフォーマックス」でもひざ掛けなどの商品開発を推進中だ。また、高反発ウレタン「マニフレックス」では枕やマットレスを拡販している。羽毛はハンガリー産の羽毛のみを扱う。原産地表示を明確にして供給する。

 大量販売、価格訴求は避けて、いいものだけを手がけていく。単品販売は限界がいつか来ると予測する。将来、ブランドを含めたライフスタイル提案を目指す。その一つが、健康であり、介護だととらえる。これに環境を加えた頭文字から3Kビジネスと名づけて取り組みに力を注ぐ。

 生産基地として中国を積極的に活用する。同社がメーカー的ポジションを取れる分野と考えており強化する。主に現在、青島、寧波を含む上海地域のメーカーと提携してモノ作りを進める。

 合弁では寧波に寧波興洋を設立して10年近くになる。綿マイヤー毛布の工場で、綿毛布のほか、ハーフケットなどを生産する。最近は0・9ミクロンのマイクロファイバーを使った毛布生産に力を入れる。日本への持ち帰りのほか、米国へも輸出する。

 昨年5月に日清紡などと合弁で設立した紡績工場、日清紡ベッケンが稼働し始めた。織機も設備しており、今後、ふとんの側地、織物を生産販売する計画だ。当面は持ち帰りだが、将来は中国での内販も目指す。

商社の強み生かす/双日パルテックス事業部

 双日パルテックス事業部の主力取引先は大手の専業問屋だ。商品開発したものを問屋に提案、採用されると問屋の企画としてOEMに徹する。最近は市場規模が縮小する中で流通も激変した。取引先もモノ作りを行うようになり、商社機能が発揮しにくくなってきた。強みを発揮できる分野の開拓を進める。

 同社は寝具業界の主力商品、羽ふとんの原料、羽毛の扱いに強い。国内シェアの35%ほどを占める。羽ふとんが登場してからいち早く、羽毛メーカーとタイアップし、選別、洗浄して販売するシステムを作ったのが生きている。このような分野を構築して、その開発に力を入れる。

 商社の強みの一つに海外の生産ネットワークの活用がある。単に商品を買い付けるだけではなく、原料から製品まで、商社の機能を生かして活用する。

 寝具・寝装品で、中国に生産3大拠点を構築した。3年前に上海に富嘉綿業を合弁事業で立ち上げた。羽毛の洗浄から、掛け・敷きふとんを製造する一貫工場だ。SARS問題が起こり、立ち上がりが遅れた。今年の前半からやっと稼働し始めたばかりだが、現在、生産は順調だ。

 ふとんの縫製では蘇州の昆山に大隆綿業蘇州を合弁で運営する。敷きふとん、ウールふとんの縫製などを行っている。もう一つの拠点は山東省にある保新双日家紡。110インチの広幅プリント機を設備しており、軽寝具用の側地のほか、カバーリング類を生産する。

 これらの拠点を活用して日本向けの商品を生産する。今後はこれらの提携工場を利用して、第三国への輸出用モノ作りも考える。来年から米国、EUは中国に対する輸入制限であるクオータを順次、撤廃する。これらの国への輸出拡大も期待できる。

 現地企業と同じモノ作りでは競争していくことができない。日本から差別化素材や特殊な素材のほか、色、柄デザインや商品構成なども含めたモノ作りを行う。それらの商品を使って対欧米輸出にも対応する。

新商品、新市場開発に力/NI帝商 リビング部

 NI帝人商事インテリア本部にあるリビング部は寝具・寝装品を扱う。昨年9月に新組織で発足、新商品開発と新しいマーケット作りに力を入れる。今年に入ってからは新商品の投入を積極化させた。

 寝具・寝装市場は市場規模の縮小が続く中、専業問屋が力をつけた。商社が介在する余地が小さくなってきた。同社も原料売りは減少を続け、製品まで仕上げて提案、売り先との取り組みでモノ作りすることが多くなった。

 現在では大きな数量を追わず、新商品開発に軸足を置き、存在感の発揮を目指す。今年で14年目を迎えるロングセラーに「ミクロガード」という防ダニ商品がある。寝具は売れ始めるとすぐに競争が激化し、価格競争に走って短期間で商品をつぶしてしまう。同商品はまったく薬剤を使わない防ダニ商品で、同類の競合相手がいなかった。その特性が商品生命を守った。

 このようなロングセラーの経験を生かして商品開発と育成を目指す。3月に繊細でソフトな感触を備えた立毛ボア素材使いの「エンジェルフィール」を市場に投入した。ポリエステル100%マイクロファイバー使いのボア素材だ。ふとん、こたつ掛け、同敷き、クッション、抱き枕、着ぐるみなどを発売する。OEM対応で現在、「予想以上に好評だ」(佐藤博士部長)。

 4月から超ハイテク敷きふとん素材「フォームエース」で、練りこみの蓄熱、防ダニ、抗菌・防臭などの機能加工を加えた商品を発売した。古河電工が開発した超軽量の発泡ポリエチレンを使っており、敷きふとんの芯材として拡販してきた。

 8月にはほこりの出ないノンダストふとん「ピュアエール」を発売した。帝人が開発した側地とインビスタが開発した中わたを使用したふとんで、水洗いができる上、ほこりを通さないし、側地か発塵が起こらない清潔寝具だ。

 今後も機能を持ち差別化された新商品の提案に力を入れ、新しい市場作りを進めていく。

対中、対米輸出取り組む/トーメン リヴィング部

 トーメンのリヴィング部は寝具・寝装、インテリアの3課体制。寝具・寝装は中国生産がほとんど。インテリアは国内生産が多い。

 主な取引先は専業問屋筋。市場の縮小に見舞われて厳しい。このような中で、商社が力を発揮できる分野、部分の見直しを進めた。商品開発を柱に、素材メーカーと組んで商品の差別化に取り組む。その中で、市場の開拓を進める。

 国内販売ととともに、輸出に積極的だ。10月からは中国にタイルカーペットの本格輸出を始めた。また、シーツやカバーリング、カーテンを中心に、対米輸出にも取り組む。中国の提携工場で生産した商品を輸出する第三国間ビジネスだ。米国で小売店への販路を持つテキスタイルコンバーターに向けての輸出にチャレンジする。

 寝具・寝装品は中国生産が多いが、合弁事業は検品、ミシン掛け工場のみ。ほかにインドネシアで家具調こたつを一貫生産する工場を稼働させる。「こたつの需要は減少を続けているが、“残り福”のようになってきた」(河野義郎部長)。

 中国で使用する工場との取引の見直しを2、3年前から進め絞り込んだ。納期、品質管理のできる工場との取り組みを強化した。現在では現地に、日本から差別化原料や高機能素材などを持ち込んでモノ作りを進めている。

 インテリアはカーペット、カーテンの生産、販売が中心だ。カーペットは家庭向けで国内市場の50%ほどのシェアを持つと推測される。しかし、参入は遅く、製品事業に傾注した。カーペットは国産比率が高い。輸入品のほとんどは日本のメーカーが合弁で進出して生産するリサイクル原料使いのカーペット類だ。

 製品展開の強さを生かして、中国への輸出に取り組み始めた。トーメン・ブランド「東京ベイ・フロアリング」で見本帳も作った。中高級品中心に、4タイプ22柄を収録した。低級品は現地物と競争できないので収録しなかった。販売は代理店を通じて行う。

建物全体の提案を志向/田村駒ホームファッション事業部

 田村駒のホームファッション事業は2部1室に再構築された。1部は羽ふとん側地など寝装テキスタイル、カバーリング中心に製品も扱う。2部はブラインドを中心とするインテリア部隊だ。非繊維も含めて、家庭用品に関わるいろいろな分野を攻める。もう一つの部隊は物流を担当する。

 1部は今春夏、テキスタイルの苦戦が目立った。しかし、製品は健闘した。テキスタイルの落ち込みは年初、鳥インフルエンザが流行したのが原因。その後、羽毛原料が高騰した。猛暑と相まって羽ふとんの製造が進まなかった。高額品への影響は小さかった。量販適品を直撃したのが影響した。

 寝具は厳しいが新規が増えた。テキスタイルはプリントだけではなく素材開発にも取り組む。かつて素材開発は紡績に任せてきたが、今日では自ら開発する。そのために、中小紡績、機屋などを活用していく。コラボレーションを通じて、新商品の開発に努める。

 海外商品が増えた今日、国内でのこだわったモノ作りは一つの特徴となる。「MJ(メードインジャパン)」は日本製にこだわった素材や製品をそろえたハウスブランドだ。国内で素材の開発を推進めるために企画した。素材の開発は進み、来春夏企画では、一部取引先が「MJ」商品を採用し、問屋の企画の一部に使われた。OEM対応し、黒衣に徹する。

 インテリ事業を推進する2部は建物の内装材を含めた建物全体の商品販売の強化と、販売の仕組みを含めて市場開発型ビジネスの強化を進める。子会社に田村駒エンジニアリングがある。建物の一部材を扱う会社から現在、建物全体のコーディネートする会社に変身中だ。また同じく子会社のムーラントータリアは卸売りをやめ直販に力を入れ始めた。今日では工務店がメーンの顧客になりつつある。2部はこれらの商材開発、売り先の開発を行う。機能のない商材の扱いはできるだけやめ、価値を認めてもらえるところに、開発商品を売り込む。ホームファッション・フロンティア部隊だ。

新業態に活路見いだす/エスビーリビング

 エスビーリビングは住金物産から移管されたテキスタイル部隊と物流加工センター、寝具問屋だった毛布の大手、山賢から毛布の商権を引き継いだ製品部隊からなる。最近はテキスタイル部隊も製品を少しずつ強化し始めた。

 既存の寝具専門店につながる問屋や地方卸は年々、縮小傾向を見せており、回復の可能性は小さくなっている。新業態が販売する寝具、寝装品が増加傾向を見せる。このような市場の変化を背景に製品の強化を進め、新販路の開拓を進める。

 ドラッグ・チェーンや家電チェーンなどを新業態として注目する。商売を具体化するために、今期から東京支店に新業態開拓チームを設置し、本社から人員も補強した。まだ大きな商売になってはいないが、新しい芽が少しずつ現れてきつつあるという。

 新業態の販路開拓を進める前に、生産基地の整備を進めた。一部特殊品や機能商品を国内で生産している以外、ほとんどが中国生産だ。昨年まではその多くがスポット発注で、継続的な取引を続けようという考えが薄かった。

 品質の向上、商品開発を進めていく上で、取り組みが必要と判断。取引先を洗い直し、品質基準に耐える工場を選別した。30社ほど使っていた工場を半分に絞り込んだ。

 選別した工場とは継続的に取引を続け、相手の経営の安定にも資する。そして一層の品質向上と納期管理の徹底を求め、より高いレベルのモノ作りを進める。例えば設備投資が必要なら、その援助も行い、協力工場作りを目指す。

 扱い商品は毛布、カバー類など軽寝具が大半を占める。重寝具はほとんど扱っていない。秋冬は毛布が主力になる。来春夏物の展示会を10~12日に開いたが、タオルケット中心に、すべて自社でデザインした敷きパッド、ダウンケット中心に、綿毛布などを発表した。

小売り部門再構築進む/伊藤忠ホームファッション

 伊藤忠ホームファッションは卸売り機能とともに、小売り機能も持つ専門商社だ。インテリア生活雑貨の直営専門店「リシェラリシェ」を現在、5店舗展開する。

 同社の寝具・寝装品事業は、販路がGMSなどの小売りから通信販売など新業態ににウエートが移ってきた。単に物流だけの商品から、機能重視の商品へのシフトも進んだ。機能付き商品を販売するルートが好調だ。

 その一つ「マニフレックス」は高反発弾性機能を持つ商品で、素材は環境にやさしい「オコテックス」を使用している。「バイオシェイプまくら」やマットレスを販売する。とくに枕は好調で、売り上げ規模は小さいが倍増していている。

 もう一つ「プリマロフト」の掛けふとんも好調だ。ケーブルテレビを使用した通販で、すでに7000万~8000万円の売り上げ(小売りベース)がある。米国のNASAが宇宙船の内装材などに使用しているわたを使用したふとんで、軽くて保温性に優れる。同社の米原工場(滋賀県)で生産しており、一貫生産・販売のメリットを発揮する。

 インテリア生活雑貨の店「リシェラリシェ」は期初から再構築を進めた。結果、粗利率は現時点で5%改善した。経費の節減を行い、アイテムの見直しを進めた。8000点あったアイテムは現在、半分の4000点まで絞り込んだ。商品数の絞り込みに合わせて、売り場作りも変えた。カーテンやカバーリングなどファブリック類の商品構成を従来に比べ強化した。売り場全体に占める比率は5ポイント上がり45%になった。将来、55~60%に引き上げていく。その分、ぬいぐるみや雑貨類が減る。

 再構築を進めて半年が経過したが、店によっては黒字化も見られる。年度末までには全体で収支トントンの予定だ。近い将来、再び30坪程度の出店をスタートさせる考えだ。

通販ルートの強化推進/カネヨウ寝装インテリア事業本部

 カネヨウは寝装インテリア事業と生活関連事業の両本部体制を敷く。前者は寝具・寝装、インテリアといったホームファッションのほか、ムートンやレザーを扱う。後者は生活関連雑貨系と、毛製品、織物、ニット反物を展開する。売り上げ構成は寝装インテリア事業本部が7割を占める。

 寝装インテリア事業本部は今上期、売り上げが53億8200万円で、前年同期比9・9%の減収だった。その大部分がインテリアの低迷が原因だった。

 主力のカーペットは今期、通販事業への参入とともに、大手のホームセンターに口座を開くなど、新規の販売窓口拡大に力を入れた。しかし、それ以上に冷夏だった前期の持ち越し在庫処分、カーペット問屋の破綻などにより苦戦を余儀なくされた。

 そんな中で、寝装原料は健闘した。中身は取れなかったが、羽毛は中国品の価格高騰で売り上げが伸び、またキャメルも好調だった。羊毛ふとん原料は全体需要の減少が続いたが、市場シェアを拡大した。

 全体的に既存の販路での売れ行きが悪かった。下期は無店舗販売の中でもとくに通販に力を入れる。このため、期初から取り組んでいるカーペットを販売している通販に対して寝装、インテリア商品だけではなく、全社にわたる横断的チームを組んで、商材のトータル的拡販を目指す。

 寝装、インテリア商品は現在、そのほぼ6割が無店舗販売されていると分析する。今後もそのウエートが上がり、既存の有店舗販売は頭打ちから漸減傾向になっていくと予想する。その中で通販を新規ルートに位置づけて力を入れる。

 全国展開する専門通販、百貨店の通販などとの取り組みに力を入れ、新規の販売先を拡大を進めていく計画だ。