日本企業の中国戦略/クラレ・ポバールカンパニー(上)

2004年11月25日 (木曜日)

差別化品で独自の市場開拓

 クラレが開発した機能性樹脂ポバールは水溶性、造膜性、接着性など、数多くの優れた機能を持ち、繊維から製紙、接着剤、フィルムなど、幅広い用途に使用される。クラレ・ポバールカンパニーの村上敬司副カンパニー長兼ポバール販売部長によると、自社消費を含めた世界のポバール生産量は年間約100万トン、このうち、市場に販売する出荷量は同85万~86万トンに達する。

 同カンパニーは日本のほかシンガポール、ドイツで生産・販売拠点を構築。現在進めているドイツのクラレ・スペシャリティ・ヨーロッパ(KSE)社の増設が終了すると、グループの生産能力は同21万4000トンとなり、21%強のシェアを占める。

 目覚ましい勢いで発展する中国経済。同カンパニーでも残された大市場として、中国に熱い視線を送る。しかし、中国は年間生産量40万トンを誇る世界一のポバール生産国。13のメーカーが繊維用途や接着剤に建築関連を含めたエマルジョン・接着剤用途中心にしのぎを削り、価格競争の様相が強い。

 このため、同カンパニーでは当初、中国市場の開拓に慎重な見方もあったが、中国ではできない差別化品を日本、あるいはシンガポールから輸出し、中国市場に根付かせることに成功している。

 その一つがポバールの最も古い用途である繊維用にある。これを中国産のポバールに30%前後混合して使うと、生産効率が向上し、かつ難度の高い織物が生産できる。

 中国は世界貿易機関(WTO)加盟後も樹脂関係の関税はあまり下げていない。ポバールは現在、輸入税14%で、これに増値税や国内輸送費などを加えると、商品価格は50%前後も高くなる。商品の優れた機能と十数年前から中国国内で進めていたプロモーション活動がこの厚い壁を乗り越えた。