染色加工特集/長繊維染色 独自色鮮明に

2004年12月08日 (水曜日)

和歌山染工/マイブランド工房で顧客開拓

 和歌山染工(和歌山市)は一昨年度、最終赤字を強いられたこともあり、人件費はじめ『聖域』なきコスト削減を実行、前11月期は大幅に収益改善を果たしている。

 しかし、同社主力のふとん側地は、縮小傾向が続く。秋冬物のリピートがなく、来春夏向けも仕掛かりも11月後半には息切れ状態。

 依然として厳しい環境下だが、その中で生き残るには「同業他社との差別化、新用途開拓、中国輸出に力を入れる企業への参画が課題」(松本卓也経営企画室長)と言う。

 とくに、新用途開拓として取り組むのは03年度の中小繊維製造事業者自立事業に採択された「マイブランド工房」だ。

 デジタルカメラで撮影した画像をインクジェットで生地にプリントできるというもの。インターネット上のショップを通じて販売する。1メートルから生地対応するほか、大阪の縫製工場とタイアップし、皮製バッグ(プリント部分は綿布製)も製品販売する。

 URLはhttp://www.mybrand-kobo.com/

 3月からスタートし、皮製バッグは月20個の規模にあるが、来春から製品アイテムを拡充。アロハシャツや羽毛ふとんの販売を開始、布製バッグも加える。

 アロハシャツや羽毛ふとんは世界遺産に登録された紀伊山地の霊場と参詣道をプリントしたものも展開する予定だ。

 「製品だけでなく、生地販売も1メートルから対応できることから、顧客が増えており、本来の狙いである新規開拓に結びついている」と言う。

 本業である布団側地などでは「結果的に価格競争に陥ってしまうのは、明確な差別化ができていない」ためと分析。差別化加工の開発に向けては人的、設備的にも充実を図る方針だ。

大同マルタ染工/丸編み捺染に自信

 大同マルタ染工(京都市南区)は新たに小型ガスボイラーを8台導入、12台に増やした。既存の大型ガスボイラーでは「月後半に集中するようになったいびつな生産に対応できない」(田中頌社長)からだ。

 同社の頭を悩ませるのは原燃料高だけではない。多品種小ロット化や月間での発注量の後半集中型だ。前半は閑散、後半は残業して何とか対応する形が強まっている。既存の大型ボイラーはまだ使用できるものの「コスト上昇になってしまう」。小型ボイラーを導入せざるを得なくなった。

 こうしたコスト削減策も講じながら、念願の黒字浮上を目指す。営業面では相変わらず厳しいものの、明るさも見え始めている。丸編み地の捺染本格化を表明して1年。前工程となるオープンシルケット機、仕上げ加工機の増強も完了し「量的に伸ばせる自信がある」と田中社長は言う。

 オープンシルケット機を生かした丸編み地の捺染は日本で数少ないだけに、独自性がある。その強みを生かすため、03年から本腰を入れ始めたもので、月60万メートルまで対応可能だ。

 一方、主力でありながら減少が続く寝装向けでは新開発のソフト加工「オンディーナ」が順調に伸びており「市場に認知され始めた」と自信を見せる。

 羽毛ふとん側地は高密度織物に羽毛の吹き出しを防止する加工を施すため、カサカサ音がするが、側地にオンディーナ加工を施すとソフトになるため、この音が少なくなると言う。

 綿の暖かさと優れた吸湿・吸水性はそのままに、繊細なタッチ、ソフトでしなやかな風合いを持ち、シワが寄りにくく、反発弾性に優れるなどの特徴もあり「少なくとも現状の倍増。月10万メートルが目標」だ。

 オープンシルケット機による丸編み地の捺染という新規事業、オンディーナのような新加工強化など、同社は方向性は明確になってきた。

大日本晒染/独自技術の加工が広がる

 「来期は期待が大きい」と話すのは大日本晒染(和歌山市)の喜納浩常務だ。第3四半期(7~9月)の業績は前年同期比で売上高8%増、経常利益3割増で推移した。

 「サプライズを起こす」を合言葉に、企画開発提案型のビジネスモデルで、東京などの顧客開拓が快進撃を続ける。新規取引先が増え、大手紡績を通じて大手専門店から6万メートルの発注が入るなど、とくに無地染めが好調だった。

 小ロット短納期対応を徹底する。他社では敬遠する1反からでも受注。「そこからこなしていくことで、次のバルクにつなげる」。多くのユーザーが同社に染色加工を委託する理由がここにある。

 設備投資も怠らない。11月には7500万円投資し、都市ガス用のボイラーを導入。これにより、A重油を使用するボイラーに比べ「月400万~500万円のコスト削減ができる」。都市ガスのボイラーは、従来のボイラーよりも大きさは半分。その空いたスペースには、連続染色機パットドライを年内にも設置する。

 春夏向けに提案するのは、耐久ジワ加工「ロッキーバル」。どんな素材にもシワを付けることが可能。ファッション性や洗濯耐久性は抜群だ。反応染料によるムラ染め「マーブリー」加工は鮮やかな色彩が楽しめる。ソフトな風合いを追求した「クタロン」加工、それを進化させた超ソフト加工「シルフィーナ」などを独自加工の開発に余念がない。

 秋冬向けにはウレタン、アクリル樹脂、ラメ、アルミなど様々なコーティング加工を用意。顔料で染色し、洗い加工をすれば面白い素材もできあがる。

 「よそではできないことをやる」。その言葉が示すように同社の加工は多彩だ。

日出染業/QRと品質向上が基本

 日出染業(和歌山市)は「多品種小ロット対応と品質向上」(森田幸三常務)を基本戦略としている。そのための投資は惜しまないし、限界はないとして、毎年可能な限り設備投資も行っている。

 多品種小ロット対応については一定の自信を示す。そのためには営業担当者の意識改革も必要だが「期近発注に対応できる染工場として、認知されてきた」と手応えもある。

 その成果が数字にも表れている。11月の受注量は前年比5%増。市況が芳しくない中では健闘している。これも「顧客の要望にクイックレスポンス(QR)できる」点が大きい。

 同社は捺染で月250万メートル、無地で同100万メートルを生産するが、起毛加工、しわ加工など豊富な表面加工機を有する点も強み。一貫生産体制を敷く染色加工場は少ないからだ。

 05年春夏向けも表面変化を施した商品を、自ら客先である生地商などに提案する。こうした試みは04年秋冬向けからで、顧客からも評価されている。

 表面変化だけでなく、新たな商品開発については意欲的。QRや品質向上に加え「差別化も生き残るための手段」ととらえているからだ。昨年、染料メーカーで研究開発担当者を研修させたのもその一環だ。

 現在、染料選定も含めた研究開発担当者は5人。さらに拡充していく意向を示す。

 今後の期待は、10月に導入したロータリープリント機「サムライ」。(1)型狂いがない(2)均染製が高い(3)小回りが利く(4)効率に優れる――などの特徴がある。日産5万メートルの能力があり、すでに「オーダーが入りつつある」と言う。

クラボウ徳島工場/環境に配慮した工場に

 クラボウ綿合繊事業部の徳島工場は今年4月、約2億5000万円を投じて、同社エンジニアリング部の開発したUASB(アップフロー・アンエアロビック・スラッジ・ブランケット)嫌気性水処理装置「クラーキア」を導入した。

 徐々にその効果も見え始めた。UASB装置では空気不要のバクテリアを利用し、従来型のような空気を発生させる必要がなく、その分の電気代が節約できる。排水処理も02年9月に比べ6割まで削減できた。

 また、排水中の有機物成分を分解し処理することでメタンガスも発生。そのガスも有効利用できる。さらに汚泥の発生量も3分の1以下に減らせ、環境負荷低減の面で優れたシステムだ。

 加工の面では、来年3月の技術確立を目指し、連続式電子照射による綿布帛加工用のグラフト重合装置の活用を研究する。この機械が実用化されれば、通常の加工法よりも効率よく加工できる。薬剤の吸着性がよくなり、熱、電力エネルギー消費も抑えるため、コスト削減につながる。分子レベルで結合が強固になることで、洗濯や摩擦に対する耐久性が向上。ノンホルマリンで環境に優しい。もちろん、同工場自身もSO14001を99年に取得済みだ。

 開発加工素材も豊富だ。ふくらみ感に優れ、毛羽が少なく、シルキーなタッチが特徴の「スベーニュ」は、美紡シリーズの紡績糸「コレーナスピン」「クリアスピン」との相性は抜群だ。「ピュアセーム」は手に絡みつくような、なめし皮調のタッチで非常に表面が美しくなる。

 「ウォッシュエンドライ」はタンブラー乾燥機対応で防シワ、防縮加工素材。蛍光洗剤による白化も抑える。「フェデムス」は製品洗い後に中白感が得られ、カジュアル素材には最適。数年前まで稼働率の低かったアンモニア・シルケット加工もスベーニュやピュアセーム加工との複合素材が増え、フル稼働の状態だ。

 他工場とのつながりも密接。2カ月に一度、他の工場長や本社の営業部隊などが集まり、新商品の開発を3件ずつ生み出す。

 飛躍的な革新を続ける同工場だが、佐野高司工場長は、品質の安定のためにも「基本を見直し、原点に戻る」ことを現在は徹底している。工場の強みとして真っ先に掲げたのは「下晒し」と「起毛」だ。「染色にとって前の工程は、後ろにつなげていく重要な工程」と佐野工場長は強調。品質の安定こそが「クラボウ・ブランド」を支える。

三木理研/新しい繊維仕上げ剤開発

 三木理研工業(和歌山市)は樹脂加工剤を主力商品とする合成樹脂の総合メーカーだ。同社は、最優先の課題として繊維加工仕上げ剤に取り組んでいる。来期に期待されている最新の形態安定加工剤を紹介する。

<低ホルマリン樹脂 リケンレヂンMS―250>

 「リケンレヂンMS―250」は従来200ppmのホルマリンが発生していた形態安定加工を、75ppm以下で可能とするよう検討され開発されたグリオキザール樹脂だ。同社で20年来使用している「リケンレヂンRG―85」と比較し、6割の樹脂量で同物性の加工が可能。ホルマリンは50ppmと3分の1に低減できる。

 また「MS―250」に適した触媒「リケンフィクサーMX―27」を開発した。リケンフィクサーMX―27は従来品「リケンフィクサーMX―18」よりも強い触媒であるがMS―250との併用によりバランスの優れた加工が可能である。

<低ホルマリン樹脂 リケンレヂンRG―220>

 ポリエステル綿混などで風合いが硬くなる場合が従来あったが、「リケンレヂンRG―220」は素材を問わず風合いがソフトだ。また残留ホルマリンも低く、強度とホルマリンのバランスは非常によいものとなっている。ポリエステル綿混向けの形態安定加工剤として、今後期待されている。

<ノンホルマリン樹脂 リケンレヂンNONF―33>

 「リケンレヂンNONF―33」は新しいノンホルマリン樹脂だ。物性、白度のバランスをさらに高め開発された。推奨触媒である「リケンフィクサーMX―7」を併用することにより非常に優れた効果を発揮する。

 同社では上記以外に、従来品をマイナーチェンジした「リケンレヂンRG―30」「同RG―2」も開発した。

来期はこれら新しい樹脂加工剤でより高品質な樹脂加工されることを、同社は希望している。

日清紡美合工場/カジュアル素材もこなす

 日清紡の美合工場(愛知県岡崎市)は、昨年よりも少し操業率を落とした。とくにデニムが不調で、液体アンモニア加工の受注量が減ったことによる。しかし、内村文夫工場長は「今が谷の部分」と考える。すでに定着した顧客層ができているためだ。むしろ、液アン加工の前後での加工に工夫を凝らすことで差別化した加工技術の開発を進める。

 デニムの落ち込みを埋める形で「ナノサイエンス」シリーズは好調だった。銀のナノ加工で制菌、防臭加工「エージーフレッシュ」や撥水加工「DCIII」は上期(4~9月)で50万メートル強の生産量で、通期で見れば100万メートルを超える勢いだ。

 「エージーフレッシュだけも10月で13万メートルを越えた」。ナノサイエンスシリーズ全体で今期500万メートルの生産量は確実だ。

 日清紡の開発素材は「使ってもらっているうちに良さが分かる」ものが多いのが特徴であり「最初はなかなか売れない」のが悩みの種だ。しかし、それだけに売れればリピート客も多

い。「DCIII」など、素材そのものの風合いを保ちながら防汚、撥水加工を施したもの。しかも適度な吸水性も持ち「汗ジミ対策にもなる」。大きな期待商材だ。

 設備投資では8月にサーキュラー型液流染色機を2台導入。布帛だけでなく編み地の染色も可能だ。もともと薄地が中心だった加工も、今では厚地もこなす。内村工場長は「今まで不得手な加工は問題が出やすいためやっていなかったが、これからはやっていく」方針。機能素材「ガイアコット」のように異業種との取り組みで、新しい視点での開発も進展する。