商社の婦人アパレルOEM事業/ブランド・素材提案一層重要に

2005年01月26日 (水曜日)

 防寒衣料の販売不振で、多くの百貨店・SPA婦人アパレルは昨年12月に春夏物の発注に急ブレーキをかけ、企画の見直しを進めた。しかし、バーゲンセールの販売は好調で不良在庫を残さずに済んだと推測される。ショッピングモールの新設など売り場は拡大し続けており、マーケット規模は縮小していないと言える。したがって、商社のアパレルOEM事業部門は受注拡大の余地もあるとみられるが、非常に厳しい対応が必要になりそうだ。

防寒不振も前年実績は確保

 今秋冬物は防寒衣料など重衣料の販売不振が目立った半面、ハイゲージのニットやカットソー製品など洋品は好調だった。トレンドから見て、ニットやカットソーの得意な商社の方が有利だった。温暖化の傾向は今後も続くと考えられるため、アパレルの商品構成は今後、大きく変わっていくと予想される。アパレルにとって流通の変化、消費マインドの変化への対応も大きな課題だ。

 このため生産背景に加え、「ブランド、企画、素材提案の強化がますます重要だ」と、トーメンの小出一夫繊維本部衣料部長は指摘する。関係会社であるトーメンファッションエクスプレスをコントロールタワーに、提携する企画会社を整理、体制を強化したい考え。各商社はこのところ嘱託などで、デザイナーや生産管理など後方支援の体制を積極的に強化している。布帛中心だった商社では、ニット・カットソー企画の提案力強化を図る動きが目立つ。

 商社のアパレルOEM事業部の多くは今上期が好調だった。このため下期の減速をカバー、昨年度実績を維持または上回りそうだと言う企業が多い。もっとも、小ロット・短納期対応が一段と進んでいるため、OEM部門の業務はこれまで以上に激務となっている。「スタッフの強化が課題。人員を増強しないと、過労で社員が倒れてしまう」と、ある商社役員は指摘していた。

 丸紅は昨年10月までは堅調で前年同期比15%増の手応えだったが、11月から減速、12月に急ブレーキがかかった。カットソーも積極的に増やしたが、重衣料の落ち込みをカバーできるほどではなかった。しかし、11~12月も前年同期比では横ばい、1~3月はほぼ横ばいの見通しで、今期は前年実績を上回る見通し。

 「素材提案ができているためで、さもなければ大きく落ち込んでいただろう」と、同社の青木均アパレル部長。素材提案では、タイにあるエラワンの高級細番手を使った中肉の綿高密度織物が好評だ。05秋冬向けには、同じくエラワンから重衣料向け綿織物を提案する計画で、試織中だ。

 伊藤忠商事ファッションアパレル事業部のレディスアパレル部門は「厳しいが、何とか目標を達成、増収増益の見通し」(西川弘也レディスアパレル第一課長兼同第二課長)だ。東京テキスタイル事業部との連携を高めて素材から提案、顧客と情報を共有化し、細かい仕事の積み重ねで契約につなげている。もともと第一課は全体の8割がニット、第二課はカットソーと布帛の比率が半分ずつで、洋品のウエートが高くなる需要に対応しやすかったことも幸いしたという。

 また、各社とも旧正月対応が焦点だ。今年の旧正月は2月9日。旧正月を挟んでスペース確保と納期管理が重要課題となっている。