北陸産地特集/非衣料と独創性がカギ
2005年02月17日 (木曜日)
環境悪化は自助努力で
北陸産地企業が自助努力により事業構造を転換しつつある。原燃料高による糸値の上昇、天候不順による衣料品の売れ行き不振、円高ドル安に伴う輸出採算の悪化など産地を取り巻く環境は一段と悪化している。しかし、合繊メーカーや大手商社には頼れない。自らの力で、この逆境を乗り越え、繊維最強国、中国との戦いに勝ち残るため「非衣料化」と「独創性の追求」へ向け、産地企業は地道な努力を続ける。その努力が実った時、バイヤーは中国ではなく、北陸に対し今まで以上の目を向けるに違いない。
進む非衣料化 着実に成果/福井産地はリヨンを目指す
北陸産地では昨年後半から「商況は急速に悪化している」との声が強いが、それは衣料用に限った話。非衣料用では決して悪化しているわけではない。むしろ活況を呈している。
福井県では00年、衣料から非衣料へと大きく舵を切る。セーレンという良い手本があったことも大きいが、その成果が現れている。福井県繊維協会の小山英之調査部長によれば、同県繊維業界の00年の非衣料比率は35%、これが04年には42%に達している。
同協会の荒井由二会長は年頭あいさつで「世界大競争の一段の激化、国内衣料分野のビジネス縮小の危機に対処するには、ハイテク産業資材、高機能資材の開発を促進し、非衣料比率を早急に5~6割にまで高めることが課題の一つ」と述べた。
荒井会長は仏リヨンを例に挙げ、10年前、衣料用から非衣料への転換を図った結果、現在、非衣料比率6割の産地になったと指摘。福井産地はそのリヨンを目指せとげきを飛ばす。
現実に福井産地では大手・中堅企業を中心に非衣料強化が実を結び、高収益企業が登場しており「新たな繊維産業に変わりつつある」。03年度、福井県の繊維企業で4000万円以上の申告所得は全国一の51社、その3分の2が非衣料分野を手がけている。
こうした動きは石川県も同じだ。石川県繊維協会、繊維リソースいしかわでも、ニューフロンティア進出支援事業として、非衣料強化に取り組んでおり、過去2年は家庭インテリア、農業園芸、04年度は、土木・建築資材における環境配慮型製品の研究、開発、勉強会など開催。衣料用での市況低迷が伝えられる中「非衣料系の織布、編み立て企業は好調」(石川県繊維協会の福田洋之専務理事)だと言う。
こうした動きは産元商社も同様。一村産業(金沢市)はテクテキスタイル事業推進室を設けて、炭素繊維やパラ系アラミド繊維などで商品開発を進める。親会社である東レの炭素繊維「トレカ」の受託以外に、東レ・デュポンのパラ系アラミド繊維「ケブラー」使いで土木資材の自販も始めた。
旭陽産業(福井市)では親会社である旭化成せんい製不織布使いの加工品を強化。分母は小さいものの、倍増ペースで売り上げを伸ばしており「近い将来には20億円の売り上げを目指す」(藤田保社長)。
広撚(福井市)もインテリア製品に加え、介護用品の開拓を強化。現在、10%の非衣料売上高を「将来的には30~40%に高める」(藤原宏一社長)方針を示す。ユニチカサカイ(大阪市)も昨年末、ユニチカファイバーから資材経験者を招き、既存品に加え、新たな開拓に乗り出した。
石川県ではカーテン地など非衣料売り上げが55%を占める前多(金沢市)のほか、岸商事(同)も10%の非衣料比率を3年内に30%に高める計画。そのために「官学とも連携しながら開発部門を強化する」(鈴木賢二社長)考えだ。
大手商社でも伊藤忠商事金沢支店では非衣料比率を「少なくとも5割以上に高める」(北一彌支店長)考えで、同支店に置く北陸開発センターには1年前から非衣料担当者を置くほか、技術者も配置している。
このように、北陸産地の非衣料シフトは強まる一方だが、それは北陸産地企業が有する高い技術開発力が評価される世界でもあるからだ。
世界の開発センターとして/市況悪化は技術で乗り切る
高い技術開発力は非衣料用だけで生かされているわけではない。衣料用でもカギを握る。衣料用中心の産地企業は今、厳しい環境下にある。
原燃料高、天候不順、円高など外的要因が悪化、過去2年間何とか埋まっていたスペースは空きが見られ、工賃も下落傾向にある。1~3月の落ち込みは4~6月発注にも響きかねない情勢にある。
全般的には厳しいものの、存在価値が認められた企業は好業績を挙げている。ファッション情報に迎合したモノ作りなら、どこでもできるし、海外でも可能だろうが、とことんこだわった技術、地球で1件だけなら世界から声が掛かる。そんな企業が小規模、零細企業で生まれている。
福井県織物構造改善工業組合では、その企業の数を増やそうと試みている。22、23日、東京で開くふくいテキスタイルステージもその一つ。石川県でも小松織物工業協同組合が5、6日開いたコマツテキスタイル・ワークショップを開いている。
「職人芸と感性が結びついたものは消費者も認める」との自信を持ち、自助努力で生き残ろうとする産地企業。「まさに衣料用ではイタリア型の繊維産業を目指す」(福井繊維協会)との考えが強まっている。
クオータフリーに伴う中国への一極集中。それに伴い中国輸出の可能性がけん伝されるが「それが北陸産地を支えるわけではない」という意見もある。
中国市場に期待するだけでなく、北陸産地企業がやるべきことはいかに、独自性ある技術によるモノ作りができるかどうか。それ次第で世界の開発センターとして、新たな産地として生まれ変わることが可能だ。




