繊維に首ったけ(上)竹は竹でも差別化 課題に
2005年03月24日 (木曜日)
日本人になじみの深い竹は、古来より様々な用途に使われてきた。竹の幹や皮、笹には殺菌作用があり、優れた抗酸化と防腐力を発揮することから、昔から竹の皮におにぎりを包み、竹の筒に飲み物を入れ、いわば天然保存材として活用してきた。また、生命力が強いことも知られる。約3カ月で成竹になり、その成長のスピードは1日に1メートル以上伸びることもあり、まさに“破竹の勢い”を示す。そのような竹に注目し、ここ数年で竹を原料にした素材が出そろってきた。
◇
竹繊維を大別すると、竹そのものを使ったものと、バンブーレーヨンがある。今回、竹そのものの繊維について見てみよう。
2001年、竹そのものの繊維と綿との混紡糸の商品化に初めて成功したのはクラボウだ。開発当初、ヘンプに似て柔らかい竹繊維を梳綿工程へ送る段階で目詰まりが頻発し、商品化には時間が掛かった。その前年に開発したケナフ、ヘンプコットンなどとシリーズ化し誕生したのが「植物楽園」だ。
その後、しばらく竹そのものの繊維を使った商品化はいったん途絶えたかに見えた。事実、紡績技術だけでなく、竹繊維が本当に竹から抽出したものか疑問の声が多かったためだ。もちろん、クラボウのバンブーコットンが本物の竹繊維かどうかということではなく、各社、竹繊維の中国での供給先を探して充てていたが、“竹”繊維とすぐに信頼して輸入できなかったことが背景にある。あまりにもラミーと繊維状が似ていることや、実際に竹から細い繊維が採れるとは、普段からいろいろな原料に接している技術者にとってもにわかに信じがたいことであった。
しかし、各社とも製造工程に竹繊維だと断定できる確信が持てたことで、04年から一気に商品化が進む。折しも「愛・地球博」開催に向けて環境配慮への認識が徐々に高まりつつあるころだ。
まず、富士紡が春夏向けに竹・ポリエステル・綿混生地のメンズ向けシャツのトライアル販売を開始した。綿混素材を中心に織物、ニットでの拡販も進める。
同じころ、糸・撚糸産元のグリーンワールド社(大阪府枚方市)も同時期に、竹繊維100%糸「純自然竹糸」を発売。100%の紡績糸は中国で紡績したものだ。現在、竹繊維わたと綿やウールなどとの混紡糸の開発にも着手している。
その後、日清紡、ダイワボウ、ユニチカテキスタイルが相次いで商品化。いよいよ“竹”ブームの到来となる。紡績各社が販売するのはほぼ竹繊維20~30%との綿との混紡糸が中心だ。竹繊維100%糸の開発はやはり技術的に難しい。
グリーンワールド社の100%糸はいわゆる湿式紡績によるもので、日本には湿式紡績の設備はほとんどない。若干毛羽が多く、ガス焼きや撚糸での提案も行う。ビスコース方式に比べ湿式紡績のため価格は約2倍と高いのが難点だ。
ほぼ、紡績各社で竹そのものの繊維を使った商品が出そろった。ただ、各社の持つ竹繊維が他とどう違うのか説明しづらいのが現状だ。今後、竹は竹でも他社とどのような違いがあるのかを、打ち出していけるか課題となってくる。