半歩先のモノ作り・紡績編

2005年04月22日 (金曜日)

新内外綿・カミドーリー繊維/こんなものも糸にするの?

 日本の紡績が他国の紡績と違うのは何でも紡績してしまうことだろう。もちろん“どんなものでも”というわけにはいかないが、研究に研究を重ね、様々な原料が紡績しやすいように工夫され、糸として誕生する。

 紡績各社の中でもとりわけ、他社とは一線を引いた原料を使って開発を進めるのが新内外綿だ。昨年8月、さとうきび繊維を使って綿との混紡糸の紡績に成功した。さとうきび繊維は繊維質が粗く、非常に紡績が難しい繊維だ。

 12月にはインドなどに自生する植物の一種「カミドーリー」の種子毛繊維を使った綿との混紡糸も開発。カミドーリーとは聞きなれない植物だが、カポックに似て中空で非常に軽く、空気中に繊維が舞いやすいため、紡績は難しい。

 今年に入って、バナナ、パイナップル、ハイビスカス繊維と再生セルロース繊維「テンセル」を混紡した「トロピカルヤーン」を開発。バナナ、パイナップル、ハイビスカス繊維を合わせて10%程度の混率だ。いずれ30%までに混率を高め、テンセルだけでなく綿との混紡糸の開発も進める。

日東紡・横編み用「ロンフィット」/専売特許のコアスパン糸

 海外でも存在が知られるようになってきた自動横編み機「ホールガーメント」。しかし、その機械で使用する原糸は、高い品質のものでないと、思い通りの製品に仕上がらない。ましてやストレッチ素材であれば、品質の安定は一段と難しくなる。

 コアスパンヤーンに定評のある日東紡は昨年、横編み向けに「ロンフィット」を開発した。もちろん、この原糸もコアスパンヤーンだが、ストレッチ性をソフトにするとともに、肌触りの良さなど快適性も追求したこだわりの原糸だ。鞘部の素材としては綿のほかマイクロモダールを配したタイプも開発した。

 同社は05秋冬に向け「C・S・Y」ファミリーを拡充しており、原糸ではケバが少ない「パーフェクトC・S・Y」、テキスタイルではポリエステルやナイロン長繊維を経糸に配したタイプや、高度撥水撥油「ナノ・ペル」を施した新素材も投入。他社とは一線を画すコアスパンヤーンを打ち出す。

ユニチカテキスタイル・プラズマ加工/登場が早すぎた先端技術

 ユニチカテキスタイルは、技術力で他社とは際立った独自性のある素材を多くそろえる。昨年末に発表した撥水・撥油加工「エーキューガード」はその一例だろう。純綿ツイル織物で洗濯200回後の撥水性が4級(最高値5級)、撥油性が6.5級(同7級)を示す半永久的な性能には目を見張るものがある。

 意外に知られていないのがプラズマ加工だ。「早すぎた先端技術」と同社が表現するほどで、実は20年前に開発された加工技術だ。ただ、コスト面や理解がされにくいとの問題で、大きく広がらず、現在は特定の顧客との取り組みで続いている。

 プラズマとは気体分子に高周波によりエネルギーを与え、陰と陽の荷電粒子に分けて活性化させた状態を指す。特定のガス(酸素、アルゴンなど)を0.001~0.0001気圧に減圧、電気放電してプラズマ状とし、これをコントロールして加工処理することで、繊維表面に親水性を持たせ、縮みを防ぐ。

 この加工をウールに施した場合、スケールを残したまま防縮加工が可能で、通常の塩素による防縮加工と違い、ウール本来の吸湿性や保温性、風合いを残しつつ、環境にも優しい。ウールだけでなく、ポリエステルにもプラズマ加工を施すことも可能。この場合、商標を「デュアルプラスEM」として展開する。

同興紡・精紡交撚「アルティマDUO」/コンパクト糸を究める

 国内に自社工場を持たない同興紡だが、モノ作りに対する姿勢は国内工場を持つほかの紡績会社と変わらない。海外の生産拠点を活用することで、むしろ独自性を打ち出してきたのが同社の特徴と言えるだろう。

 紡績各社の中でも早くからコンパクト糸に着目したのも、海外に拠点を置く同社が、世界の先端技術という「情報」をいち早く仕入れることができたためだ。

 同社がインドの提携先のラムコグループと取り組み、技術者を派遣、コンパクト糸「アルティマ」の輸入販売を始めたのは01年。翌年には一角上のエジプト超長綿を使った「eアルティマ」を開発した。

 そして、昨年新たに開発したのはコンパクトの精紡交撚糸「アルティマDUO」だ。「毛羽の少ないコンパクト糸なのにさらに精紡交撚を掛けてどうなるのか」という意見もある。

 だが、コストメリットがある。通常のコンパクト糸80双よりもコンパクト精紡交撚糸80双級の方が当然価格的に求めやすくなる。また精紡交撚なので毛羽もより極少化される。

 「コンパクト糸を究める」。原綿にもこだわったものも今後打ち出す方針だ。

ダイワボウ「アレルキャッチャー」/多機能かつ高機能繊維

 開発されてから少しずつ効能が発見されてきた機能繊維も珍しい。それがダイワボウの「アレルキャッチャー」だ。もともと金属フタロシアニン化合物に消臭機能があることから“消臭”を意識した機能素材だったが、用途開拓が進むにつれ、次々と新しい機能が見つかった。その一つがダニ、花粉のアレルゲンの吸着分解性だ。

 アレルゲンたんぱく質には硫黄原子(S)同士の結合(S―S結合)が存在する。アレルキャッチャー繊維はアレルゲンを吸着すると、酸素を利用しS―S結合を切断。切断されたたんぱく質はアレルゲンたんぱく質ではなくなる。つまり、たんぱく質を構成する高分子鎖を切断して分解、不活性化にする仕組みだ。アレルゲンの分解能力は99.99%(1平方メートルの標準ダニ数約3000匹分のアレルゲンをアレルキャッチャー約0.3グラムで吸着分解)と非常に高く、効果が長期間持続。もちろん、消臭、抗菌効果もある。

 昨年から不織布分野で販路を拡大。家電用や車両用、建物空調用などのエアフィルター向けに販売が進む。寝装品でも百貨店販売、直販などで展開。カーペットなどのインテリア分野や、ベビー・カジュアル分野への提案も進める。