半歩先のモノ作り・産地編/一段の差別化が必要に

2005年04月27日 (水曜日)

中高級分野にも輸入品浸透

 中国を中心とする繊維製品の高水準輸入と国内繊維消費の伸び悩みによって、織布業界は依然厳しい状況にある。輸入品との住み分けが着実に進んでいるとみられた時期もあったが、従来のボリュームゾーン中心から中高級品の分野にも一部輸入品が浸透し、住み分けするラインの修正を余儀なくされるケースも出ている。輸入品との一段の差別化が求められている織布業界の動きを探った。

加工場との連携本格化/商品開発の加速に貢献

 染色加工大手の東海染工は今月20、21の両日、東京・港区のテピアホールで「第27回イデアトーカイ」を開いた(大阪展は5月12、13日、大阪・中央区の綿業会館で開催予定)。同社の差別化加工を中心に出展するこれまでの展示方法から、産地企業の開発商品も併せて出展。染色加工場と産地企業とのコラボレーションを推進する従来にないコンセプトを持った展示会として注目された。

 展示会に出展したのは、阿部織布工場(大阪)、一村産業(金沢)、シオタニ(大阪)、高橋織物(滋賀)、辰巳織布(大阪)、塔筋織布(同)、中川織布(同)、蓮池織布(同)、丸音織物(静岡)の短繊維織物産地の機業8社と北合繊長繊維織物の産元商社1社。3人のコーディネーターを介して、糸・織り・染色加工の三位一体で企画、開発した織物を提案した。

 03年度から実施された経済産業省の中小繊維製造事業者自立事業は「小ロットの高付加価値商品を企画、開発、生産して最終ユーザーに近いところで販売する」とうたっている。しかし、生機を生産する織布業者にとって、最終ユーザーとの間には幾つもの工程があり、一気に近付くことはできない。従って、自立事業では「一歩前に近付く動き」、織布業者で言えば、加工反の生産、販売を奨励している。

 今回のイデアトーカイは自立事業の理念を具体化すると同時に、機業、染色加工場の商品開発を加速する動きとしても大きな意義を持つ。イデアトーカイに次ぐ動きが今後、機業、染色加工場の両方から活発化しそうだ。

異なる産地の企業が協働/従来とは一味違う商品を

 異なる産地の企業が協働し、従来とは一味違う商品を開発する。こうした動きも商品開発の幅と奥行きを実現するものとして注目される。この典型的なものがジャクテック織物協同組合だ。

 同協同組合は「異なる産地の企業が産地の枠を越え複合的なテキスタイル創りを目指す」を目的に、3年前に設立したもので、現在の加盟企業は藍プランニング(岡山)、アヤベ(大阪)、エコウ商会(静岡)、木下商店(福井)、共立織物(群馬)、ケイティシー(新潟)、高島商事(大阪)、ケイライン(福井)、先繊(兵庫)、佐隆繊維(山形)、鈴憲毛織(愛知)、竹田(埼玉)、麻絲商会(滋賀)の13社。

 毎年2回、東京と大阪で素材展を開いている。

 06年春夏物素材展では「ナチュラル&フェミニン」をテーマに設定。生地、製品両段階の加工により様々な表面変化、風合い変化を持たせたテキスタイルを提案した。

 産地間の連携は個々の企業でも急ピッチで進んでいる。播州先染め産地では東海地区のほか、新潟や尾州産地に加工を依頼するケースが増加。糸染め、整理加工場でも他産地の商品を積極的に受注しようとする動きが目立つ。また、綿強撚織物の産地である高島では播州産地の企業と連携し、先染め織物を手掛ける動きが活発化している。

輸出振興で攻めに転じる/中国開拓で徐々に成果も

 日本綿スフ織物工業連合会は昨年2月、中国・上海に「上海常設展示場」を開設、中国市場の開拓に本格的に動き出した。

 中国はわが国最大の繊維品輸入先で、輸入の拡大に伴い、規模縮小を余儀なくされてきた綿織物業界にとっては言わば宿敵。中国からの輸入に守勢一方だった綿織物業界が中国に向けて攻めに転じたという点で、上海常設展示場は大きな意味を持つ。

 この背景にあるのが中国品にはない“ジャパンクオリティー”の確立で、国内品では満足できない沿岸部の富裕層をターゲットに日本産テキスタイルの浸透を図る。

 中国との差別化は織布業界にとって生き残りのために欠くことができない条件となっており、各機業は独自商品の開発を進める一方、海外品では対応できない小ロット生産、短納期を追及してきた。

 常設展示場の出展企業は阿部織布工場(大阪)、シオタニ(同)、ショーワ(岡山)、辰巳織布(大阪)、西脇小西(兵庫)、丸音織物(静岡)、丸忠織物(同)の7社。当初は引き合いや問い合わせが多かったものの、なかなか成約に至らなかったが、数社が数千メートル規模の成約を実現するなど、徐々に成果が出始めている。

 また、大阪南部産地の機業を中心に、欧米の有力アパレルへの成約も実現している。日本の高感性、高機能のテキスタイルを海外市場でも認知させ、安定した市場に育成する。この課題の達成にも商品開発の一段の加速が必要となる。

変わる北陸産地/非衣料化が奏功

 北陸産地は今、大きく変わろうとしている。同産地は、衣料用の長繊維産地として長い歴史を誇ってきたが、韓国・台湾、ASEAN、さらに中国との競合などを経て、一時は産地の存続さえ危ぶまれた。厳しい淘汰の中で、転廃業が相次いだ。

 この危機的な状況の中で、産地企業は、より高い機能やファッションを追求して付加価値衣料素材を開発展開してきた。さらに、これまで培ってきた技術を生かすとともに、他分野と協働することにより非衣料・産業資材分野の開拓に挑戦。その成果が実ってきた。

 福井県繊維業界の00年の非衣料比率は35%だった。これが04年には42%に達している。現実に福井産地では大手・中堅企業を中心に非衣料強化が実を結び、高収益企業が登場。新たな繊維産業に変わりつつある。

 石川県でも、石川県繊維協会、繊維リソースいしかわがニューフロンティア進出支援事業として、家庭インテリア、農業園芸、土木、建築資材など非衣料分野の強化に取り組んでいる。「非衣料分野研究開発プロジェクト事業」を今年度も継続実施する。

 産元関係では、一村産業(金沢市)がテクテキスタイル事業推進室設置。炭素繊維やパラ系アラミド繊維などで商品開発を進めている。旭陽産業(福井市)は、旭化成せんい製不織布使いの加工品を強化。広撚(福井市)もインテリア製品に加え、介護用品の開拓を強化。非衣料売上高を、現在の10%から将来的には30~40%に引き上げる。ユニチカサカイ(大阪市)も昨年末、ユニチカファイバーから資材経験者を招き、既存品に加え、新たな開拓に乗り出した。前多(金沢市)は、カーテン地など非衣料売り上げが55%を占める。

衣料用では特化進める

 一方、衣料用途は婦人外衣用を中心に、全般には苦しい状況が続いている。トレンドが依然として天然繊維によるカジュアルウエアに向いているためだ。輸出も、中国品などの跳梁で良くない。こういう中で、特化への動きに一段と拍車を掛ける。

 一村産業は、プルミエール・ヴィジョン(PV)への出展などを通じて欧州市場開拓を進めている。PVには3回連続で出展した。この1~2年で欧州輸出は5~10%増加した。さらに、新素材を開発しようとする社内のモチベーションアップにもつながった。

 前多は、スポーツウエア用素材の自販が新しく育ってきた。従来の国内用衣料、輸出用衣料、インテリア用各素材に加えて、同社事業の4本目の柱にする計画だ。同社は元々、合繊メーカーの委託によってスポーツウエア用ナイロン織物を生産してきた。発注元メーカーのこの分野からの撤退に伴い、その商権を引き継ぐ形で、3、4月から自販に乗り出した。輸出が大宗を占める。

 旭陽産業は、中国およびタイの生産拠点を含めて、アウター、裏地、芯地など衣料用でも多彩な展開を進めている。アウター用のテキスタイルでは小ロットのクイック対応に特性を発揮。中国での「ベンベルグ」裏地染色加工合弁の「寧波宜科賓覇紡織品」の工場をこの秋に立ち上げる。

 広撚は、非衣料分野の開拓に動いているとはいえ、あくまで婦人衣料が事業のメーン。この分野は、市況やファッショントレンドから北陸でも最も苦しい分野。このため、広撚ではコンパクトな体制でロスを減らし、小ぢんまりとしながらも利益の上がる体制を整備しようとしている。

 ユニチカサカイも婦人素材を中心とする事業体制を持つ。その第一のポイントは開発。ユニチカファイバーによる原繊開発と連動して、加工糸、テキスタイルの開発はユニチカサカイが担当する。極細糸や二成分糸をユニチカファイバーは得意とし、ユニチカサカイもその流れに乗る。同社は、婦人ボトムスに傾斜していたが、最近は上下に使えるやや薄い生地の方向へ動いている。高減量加工による。さらに、東京狙いの高級ゾーンの開拓を図る。

 北陸はさらに、セーレンによるカネボウの事業買収や染工場同士の吸収合併など、再編への新たな動きを見せている。この動きが、北陸の活性化につながることが期待されている。