花粉対策特集/花粉対策、基本は“衣”から
2005年05月23日 (月曜日)
栃木県日光市で1963年、スギ花粉症の存在が日本で初めて医学的に確認されてから約40年経った。現在では花粉症にかかっている人は1500万人とも、国民の3分の1とも言われ、今後も増え続ける傾向にある。もはや国民病とも言える花粉症による経済損失も図りきれない。第一生命経済研究所が1月下旬に出した「花粉症が及ぼす被害額想定」は7549億円。実際のところ、そこまでの経済的なダメージがあったかどうかは、これからの報告で分かってくることだろう。とにかく「花粉を少しでも遠ざけたい」と願う人にとって、衣類での花粉対策が注目されてきた。
<ダイワボウ「アレルキャッチャー」>
ダイワボウの「アレルキャッチャー」は、もともと“消臭”を意識した機能素材だったが、ダニ、花粉のアレルゲンの吸着分解性があることが開発途上で分かり、商品化した。アレルゲンの分解能力は99.99%(1平方メートルの標準ダニ数約3000匹分のアレルゲンを同素材約0.3グラムで吸着分解)と非常に高く、効果が長期間持続。もちろん、消臭、抗菌効果もある。
<クラレ「クラフレックス」>
クラレは、乾式不織布「クラフレックス」の花粉症向けマスクの販売に力を入れている。同マスクは1箱30枚入りで、小売価格を1500円前後に想定。極細繊維不織布を使用したフィルターで、2ミクロン以下の粉塵を95%以上補集する。フィット感にこだわり、形状記憶性のある樹脂製ノーズブリッジを採用。金属部品を使わないことで廃棄の際、分別する必要がないのが便利だ。
<シキボウ「カウンターペインP」>
シキボウ独自のナノテク加工シリーズ「ナノスタイル」としても展開する「カウンターペインP」は、花粉が付きにくく、かつ脱落しやすいことに加え、残存花粉のアレルギー原因物質が肌に接するのを防ぐ効果もある。花粉の付着防止を狙った加工は同業他社も商品化しているが、残存花粉にも配慮した提案は珍しい。寝具(シーツ、カバー、ふとん)やシャツなどに展開する。
<東レ「アンチポランNT」>
東レは花粉付着抑制機能を持つ素材「アンチポラン」にナノテクノロジーである「ナノマトリックス」技術を応用し、機能性に高めた「アンチポランNT」を開発した。従来品よりも緻密構造と制電機能で高度な花粉付着抑制機能を実現。長繊維だけでなくポリエステル綿混などの短繊維にも花粉付着抑制の基準値をクリアできる加工ができ、加工可能な織組織の幅も広がった。
<サカイオーベックス「ポルテクト」>
サカイオーベックスの花粉ガード加工「ポルテクト」の花粉付着防止機構は、繊維一本ずつに耐久性のある均一な特殊樹脂被膜を形成したもので、環境にも配慮してホルマリン系樹脂は使用していない。この加工は、繊維の表面に花粉が付きにくく、また付着した花粉も簡単にたたき落としやすくなる。とくにポリエステルなど、化合繊フィラメント織物に施すことで、高い効果を発揮する。
<帝人ネステックス「クロスキャビン」>
帝人グループの帝人ネステックス(石川県加賀市)が開発した網戸用高密度メッシュ織物「クロスキャビン」は花粉などを80%以上遮断。丸断面ポリエステルやナイロンのモノフィラメントを使った高密度織物のため、表面が平坦で滑り易く、塵・花粉などが侵入しにくい。着色や柄のプリントも可能で、難燃、抗菌、消臭、UVカットなどの各種加工も付与することができる。
<日清紡「フレッシュバリア」>
日清紡の「フレッシュバリア」は、花粉がテキスタイルに付着しにくく、また付着した花粉も落としやすくすることで、屋内への花粉持ち込みを最小限にとどめる花粉付着防止加工だ。「フレッシュキャッチャー」の方は逆に花粉を付着させやすくし、飛散を抑制する加工。両加工とも、花粉の多い屋外環境においても体内への花粉侵入を極力防止し、花粉を身の回りから遠ざけるために開発した。
<大和染工「花粉バリアー」>
浜松の大和染工は、花粉付着防止の新加工「花粉バリアー」を開発した。この加工品の特徴は、花粉が表面生地に付着しにくく、付着しても軽くたたけば、即座に花粉が脱落すること。同社は、「花粉バリアー」に香り(ミント)加工なども付与ができる。素材組織の凹凸やケバが性能に大きく影響するので、反染め加工後の性能をチェックする必要がある。シャツ、ブラウスなどにも提案する。
<日本毛織「ポランブロック」>
日本毛織が新しく開発した「ポランブロック」は、花粉の付着防止加工、脱落促進加工に、積水化学工業の抗アレルゲン加工剤「アレルバスター」を使用しアレルゲン(ダニや花粉など)抑制機能を付与した複合加工だ。花粉リリース試験では、脱落率90%以上と高い数値を示し、花粉の持つアレルゲンも80%低減。ウールの風合いはそのままで、洗濯耐久性も持続する。
<富士紡「花粉クリーン」>
富士紡は、花粉が付きにくく、付着しても落ちやすい織物「花粉クリーン」を商品化している。擬似花粉を散布した生地を摘み上げて軽く振るい落とし、生地のハンター白度と拡散反射率を測定した実験によると、通常品が5割未満の脱落率なのに対し、「花粉クリーン」は8~9割。30回洗濯後でも、7~8割の脱落率を維持する。保湿、形態安定などの複合加工もできる。
続々と花粉対策素材が登場
花粉対策の加工、素材はほとんどの素材メーカーが展開するまでになってきた。第一紡績の「花粉ガード」加工、大同マルタ染工の「エアーリング」、ユニチカテキスタイルの「エスピュアー」、東海染工の「カフントール」「ディスポリン」などだ。クラボウもニット素材対応に先行して来春夏向けから衣類への花粉付着を防止する「フランカー」を開発した。今年も猛暑が予想されている。そのため花粉飛散量も例年並かそれ以上とも言われる。花粉対策素材に対する需要は今後、増加していくだろう。