ニューテクノロジー/進化しつつある撥水・撥油加工

2005年06月08日 (水曜日)

 最近、汚れが付きにくく、付いた汚れが落ちやすい撥水撥油加工の引き合いが市場で強まっている。従来は「風合いが硬い」「洗濯耐久性がない」などいろいろな問題点があったが、時代の流れで解決され、優れた撥水撥油素材を各社が相次いで開発。高温の油などの汚れを防ぐ技術や、口紅やボールペンなど付きにくくて、かつ落ちやすくする加工技術も出てきた。今回、紡績各社が開発した加工・素材を紹介しよう。

ユニチカテキスタイル「エーキューガード」/200回洗っても大丈夫!

 従来の撥水撥油加工は、洗濯するとその効果が目に見えて落ちていくのが分かるほど、洗濯耐久性がないのが問題だった。ユニチカテキスタイルは昨年末、純綿ツイル織物で洗濯200回後の撥水性が4級(最高値5級)、撥油性が6・5級(同7級)の性能を示す半永久的な撥水・撥油加工「エーキューガード」を開発した。

 藤原久開発部長・貝塚開発センター長は「従来の考え方ではできない、常識を外した部分」での発想で開発したと言う。実際、フッ素系薬剤の組み合わせと、熱処理による乾燥工程で、繊維表面の撥水・撥油基を規則的に配向させた。

 独自特殊技術で最も高い撥水・撥油性を示す「―CF3」基が最外部になるように操作。薬剤を確実に繊維と結合させることで、撥水・撥油基が不規則に配向する従来の加工よりも格段に高い撥水・撥油性を実現した。風合い面でも従来の加工とほとんど変わらない。綿だけでなくポリエステル、ナイロンなどの合繊にも応用ができる。

 加工は大阪染工(大阪府三島郡)で行う。加工賃は通常の撥水・撥油加工に比べ2~3倍程度を想定。アウトドア・スポーツウエア、コート、ジャケット、パンツ、屋内作業用ユニフォーム、傘、かばん、テントなどに用途開拓を進め、ウールや編み地などへの応用も研究中だ。

 新たに開発し、5月に発表したのが次世代型の新防汚加工素材「エバレッシュ」だ。これはポリエステル繊維に固着する親水性の高い防汚性樹脂の分子構造の末端に反応基を付け、グラフト重合する“連結基”を導入したもの。防汚性樹脂同士を結合させることで、洗濯時に基布から防汚剤が脱落するのを最小限にとどめ、防汚性能の耐久性を高めた。今後、エバレッシュの基礎である、ポリエステルを親水化し耐久性を持たせる技術をベースに、吸水速乾性や制電性の新規開発も進める考えだ。

日清紡「ナノサイエンス」/驚異の撥水と撥油加工

 日清紡のナノテクノロジー加工群「ナノサイエンス」シリーズで展開する撥水加工は従来と比べ耐久性が高く、タンブル乾燥では20回洗濯乾燥後でも4級、プレス乾燥なら50回洗濯後でも同4級を維持する。撥水性を出すにはできるだけ生地表面をきれいに配向することが必要であり、耐久性を出すにはどの繊維との結合をより強固にすることが重要だ。

 ナノサイエンスではそれらのナノ領域の配列を見直すことで通気性を損なうことなく高レベルの耐久性、撥水性、撥油機能を実現した。従来は耐久性を発現させるための架橋剤の影響で白度が低下、黄変やNOχ変色が懸念されたが、それらの欠点も解消した。

 また新防汚加工「DCIII(デュアルクリーンIII)」は吸水性が良く汗を吸うにも関わらず、ある程度の油なら弾いてしまうという画期的な性能を持つ。すなわち吸水性がありながら撥油性が2~3級程度あり、油汚れが付きにくく、付いても洗濯で非常に落ちやすいのが特徴だ。

 さらに汗とともに分泌され汗シミや衿垢、黄ばみの原因となる皮脂に対して抜群の防汚性能を持つ。皮脂の主成分である脂肪酸エステルは皮膚常在菌や酸素の働きで脂肪酸に分解され、これが汗ジミなどの原因となるわけだが、その脂肪酸を構成する主な物質がオレイン酸といわれる。

 そのオレイン酸を0・1cc滴下して洗濯し、オレイン酸の残留率を測定したデータが図2だ。DCIIIはオレイン酸の残留率が非常に低く、皮脂の汚れが蓄積しにくい。しかも、洗剤を使わなかった場合と比べても残留率は変わらない。皮脂は残留していても目に見えないので、一見汚れていないように見えても洗剤を使わないと生地に蓄積され黄ばみの原因となる。しかし、DCIIIなら洗剤なしでも皮脂の残留が少なく、大幅に洗剤を減らすことができて環境にも優しい。

 DCIIIのこれらの特徴は親水基と疎水基のバランスをナノレベルで調節したナノサイズの加工剤を新しく独自に開発したことで実現できた。

富士紡「清潔着族」/清潔機能加工をシリーズ化

 富士紡は、清潔機能加工シリーズとして高機能・高感性対応のコンセプトブランド「清潔着族」を打ち出した。これは肌に近い部分への提案を意識した4つの撥水や撥油、防汚などの加工を統合しブランド化したもの。今まで技術的に難しかった薄地などへの加工にも対応することで、一般衣料全般への幅広い展開が期待できる。

 清潔着族で展開するのは、それまで販売してきた高機能加工「ディスノーティス」「ツインセット」に、新たにテフコ社の最先端機能加工「フィットンウイット」、インビスタ社の「アドバンス テフロン」を加えた4加工。テフコ、インビスタとは富士紡が海外供給を見据えた契約も進める。綿を中心に天然系繊維への加工が中心だ。ポリエステル綿混への加工もできる。

 ディスノーティスは生地の表面に非常に薄い撥水層(0・03~0・05ミリ)を作ることにより汗をかいても目立たないようにした加工だ。生地の裏側には汗を瞬時に吸い込み拡散させる加工が施されており、汗は生地の隙間や繊維の表面から蒸発するので、汗の乾きは普通仕上げの生地とほとんど変わらない。連続シルケット加工処理した純綿糸で作った生地にもこの加工を施すことができる。

 フィットンウイットは米国デュポン社のフッ素樹脂を使って生地表面に極薄撥水撥油加工を施し、片面は撥水撥油、もう片面は吸水を実現したダブルフェース加工。撥水性を持ちながら通気性も確保した。

 防汚加工のアドバンス テフロンは、繊維の周りに分子レベルのバリヤーを形成するフッ素系加工剤を使用し、優れたSR性(防汚性)と撥水撥油性を兼ね備えたテフロン加工。汚れが付着した場合でも洗濯水となじむ親水性を実現することで汚れを落ちやすくした。

 ツインセットは裏で撥水、表で吸汗・発散性を持たせた着心地を重視した加工。サラサラでべたつき感がなく、さわやかな着心地を実現する。同加工とディスノーティスはいずれも富士紡の独自技術でニット地を中心に展開、織物の場合は糸番手や生地組織によって効果が違ってくる。フィットンウイット、アドバンス テフロンは織物、編み物両方に適し、薄い織物でも加工できる。

 販売計画は05年度3億円、06年5億円、07年度10億円を計画する。加工の生地値は通常加工のものより1~2割高を想定。今秋物向けからスポーツアパレルを中心に百貨店、専門店で展開を予定する。