植物原料繊維特集(1)

2005年07月13日 (水曜日)

アセテートって何?/タバコのフィルターにも

 タバコの吸い口に詰まっている硬いスポンジのような円筒状フィルター、これがアセテート。アセテートはレーヨンと同じように、木材パルプを原料にした化学繊維だが、酢酸を化学作用させて作るので、植物性繊維と合成繊維の2つの性質を持ち、半合成繊維と呼ぶ。

 絹のような光沢と感触があるところから「美の繊維」と呼ばれ、日本では三菱レイヨンだけが生産、量は多くないが、米国では衣料用として大量に使用される。比重は綿、レーヨン、キュプラなどより軽く、毛とほぼ同じ。吸湿性はレーヨンやキュプラの半分程度。熱可そ性があるので、プリーツスカートなどに使用できる。

 アセテートにはジアセテートとトリアセテートがある。トリアセテートはジアセテートよりも酢酸が多く結びついた繊維のため、耐熱性に優れている。トリアセテートは婦人服地、ジアセテートは裏地が主力用途。

キュプラって何?/世界でもオンリーワン

 世界でもオンリーワン。旭化成のキュプラ繊維「ベンベルグ」。綿花の種子を包むうぶ毛状の短繊維(コットンリンター)を原料にしたもので、別名、銅アンモニアレーヨンとも言う。

 一本一本の繊維が細くて断面が真円に近く、綿やレーヨンとは違い表面が多孔質なので、発色性や吸放湿性に優れ、シルクのようななめらかさと光沢を生み出す。

 主力用途は裏地。高級婦人服、紳士服では必ずベンベルグ裏地が付いている。高級ブランド品をお持ちの方は一度、見てみると分る。すべり性に優れ、しなやかな感触を持つからだ。続いて婦人服地、昨今は肌着やスポーツ、寝装品などにも広がり始めている。

 ベンベルグをそのまま不織布にしたのが「ベンリーゼ」。ガーゼやクリーンルーム用ワイパー、化粧雑貨などに使われている。

レーヨンって何?/木材を溶かして繊維に

 レーヨンは木材パルプを原料にした化学繊維のこと。木材パルプに含まれる繊維素(天然の高分子)を一度薬品で溶かして繊維にする。昔は長繊維を人造絹糸(人絹)、短繊維をスフと呼んでいたが、現在の品質表示は長繊維、短繊維ともレーヨン。吸湿・吸水性が高く、様々な染料に良く染まり、深みのある美しい色が出るほか、レーヨンの織物や編物はドレープ性に優れ、美しいシルエットが表現できる。

 現在、日本でレーヨンを生産するのはオーミケンシとダイワボウレーヨンのみ。ナイロンやポリエステルなど合成繊維の拡大により、事業撤収する企業が相次ぎ、02年には日本でレーヨン長繊維を生産する企業はなくなった。オーミケンシとダイワボウレーヨンはレーヨン短繊維を作る。今は生産していないポリノジックは普通のレーヨンとほぼ同じ作り方だが、濡れた状態での強さを高めたもの。

精製セルロース繊維って何?/世界で唯一のレンチング製

 精製セルロース繊維は木材(パルプ)を原料とするので、レーヨンと同じセルロース繊維の仲間。ただ、溶剤でパルプを溶かし作るので、製造法が異なり、繊維としての特徴も異なる。品質表示では繊維素系繊維(指定外)と表示される。

 レーヨンとの違いは強度が高く、寸法安定性に良い。レーヨンは湿ると弱くなるという欠点があったが、精製セルロース繊維はほとんど変らない。

 現在、世界で生産販売するのは精製セルロース繊維の代名詞「テンセル」を買収したオーストリアのレンチング。レンチングも独自に精製セルロース繊維を生産販売していたが、一部を除き、ブランドは「テンセル」に統合した。

 精製セルロース繊維は短繊維だけで、長繊維がなく、紡績にして織布、編み立て、染色加工する。

竹レーヨンって何?/作り方はレーヨン、原料は竹

 バンブー(竹)レーヨンは竹原料のレーヨン。作り方はレーヨンと同じ。レーヨンは、ユーカリやアカシアなど木材が原料にするが、育つのに8年かかるので計画植林が必要になる。一方、竹は2年で育つ上、竹林を計画伐採すれば、山林の土壌破壊も防げるなど環境保護にも役立つ。

 バンブーレーヨンは高い吸放湿性、接触冷感、独特のハリコシのほか、抗菌性などの特徴を持つ。バンブーレーヨンを作っているのは中国のレーヨンメーカーで、短繊維が中心。

 日本では野村産業、東レ、クラボウ、日本毛織、東亜紡織、中央毛織などがバンブーレーヨン短繊維を輸入し、日本で綿やウールや合成繊維と組み合わせて紡績糸にして、生地販売する。

 さらに、東レは05秋冬向けからバンブーレーヨン長繊維使いによる販売を始めている。

PLAって何?/トウモロコシ原料の合繊

 ポリ乳酸(PLA)繊維は生分解性繊維の一つ。トウモロコシのでんぷんから作る乳酸を原料したポリ乳酸を、ポリエステルやナイロンと同じように、溶かして糸を作る。

 PLA繊維には、生分解性以外の特徴がある。その一つが原料段階のほか、製造工程におけるエネルギー使用量や炭酸ガス排出量の低いなど、環境負荷が少ない点。例えば燃やした時の熱が低く、燃やしても窒素酸化物が発生しないなどの特徴がある。

 PLAの原料を生産するのは米カーギル・ダウ。01年に年14万トンのPLA商業設備を立ち上げている。

 日本でPLAを購入し、繊維を作っているのはクラレ、東レ、ユニチカの3社。東レ、ユニチカは繊維だけでなく、スパンボンド不織布やフィルム、樹脂など総合的に生産販売しており、次世代素材として位置づける。