合繊・婦人服地の中国輸出/“大手3社もうで”で競争激化
2005年08月12日 (金曜日)
量こなすアパレルに限り
「兄弟・阿瑪施、白領、菲姿」。日本の合繊大手が、中国の婦人服大手3社もうでを繰り広げている。「中国は沿岸地域で高所得者層が育っている。高価格でも高感性を表現できる日本製テキスタイルの販売先がある」。一般論として、こうした推測は成り立つ。婦人服でも同様だろう。ただ、今のところ、日本の合繊大手が期待する量をこなせる婦人服アパレル・SPA(製造小売り)は限られており「3社ぐらいしかない」と合繊大手は口をそろえる。それが冒頭のブランドを有する3社。そこに合繊大手だけでなく、中国輸出を狙う日本企業が殺到し、競争が激化。限られたパイを争っており、日本国内と同じ様相を呈している。
各社集中で日本と同じ様相
合繊大手は婦人服地の輸出市場として中国開拓に取り組んできた。その成果は生まれている。東レは04年度の中国向けの婦人服地輸出が2000疋と少ないが「確実に伸びている」と手応えを感じており、05年度は倍増を狙うと意気込む。帝人ファイバーも05年度は前年比3割増の1万5000疋を見込むなど着実に販売量を伸ばしている。
しかし、「スポーツウエアなどに比べると、市場が育つスピードが遅い」と帝人ファイバーは指摘する。「月100疋程度の企業は増えている」(東レ、旭化成せんい)ものの、婦人服では個々の企業が小さく、日本の合繊大手が期待するような量を購入しないからだ。
その婦人服アパレル・SPAの中で、日本製高価格生地を大量にこなすのが、広東兄弟時装、北京白領時装、上海菲姿時装の3社。中でも台湾系の広東兄弟時装が突出しているという。
「兄弟(GIRDER)」「阿瑪施(AMASS)」などのブランドを展開する広東兄弟時装。帝人ファイバーによると「社長が日本の高品質な生地を使うと明言している」そうで、採用すれば月1000疋は購入する。北京白領時装、台湾系の上海菲姿時装がこれに次ぐ量をこなすとされる。
しかし、その他アパレル・SPAは小粒なため、日本企業は3社に殺到。競争が激化している。
旭化成せんいはキュプラ繊維「ベンベルグ」使いの婦人服地を中国へ輸出するが、その規模は年間3000疋で、増えていないという。むしろ、売りを控えている。「販売先が限られるうえ、競争も激しい」ためで、価格面で厳しさを増していると指摘する声は多い。
ユニチカサカイは国内でもヒット商品であるナイロン・ポリウレタン混によるハイテンショントリコットを婦人服用として中国へ輸出する。すでに、国内販売量の3分の2ぐらいにまで成長し、中国側からは増産要請もあるが「ほかにはない商品であり、価格は維持しているものの、日本企業との競争が激化しているのは事実」と語る。
「限られたパイを奪い合う」。巨大市場である中国において、日本と同じ様相を呈するのは不思議な話だが、その面で他社にはない商品を開発できるかどうかは中国においても同様のカギとなる。それが「強気で価格を通す」(東レ)ことにもつながる。
よく似た商品を安く提案するような、無為な競争は日本製テキスタイルの価値を下げることにつながりかねない。