麻素材・来季に向け開発加速
2005年08月23日 (火曜日)
「ブームに終わらせるな!」
来年も麻ブームが続きそうだ。今までにも麻ブームは何度かあったが、今回のブームで「市場に麻が定着してきたようだ」(帝国繊維の徳田淳大阪支店長)との認識が強い。リネン100%素材などはまだまだ高級ゾーン向けだが、綿やレーヨン、その他の混紡素材が増え、顧客の選択肢が増えていることも麻好調の要因に挙げられる。「一過性のブームに終わらせない」ためにも、麻を使った差別化素材の開発は今後、ますます過熱しそうだ。
紡績/販促にも積極
日本麻紡績協会がまとめた麻潤紡糸の今年1~6月の輸入量は409トンで、これは前年に比べ50トン増となっている。昨年全体では1117トンの輸入量があったが、下期に輸入が増加することを考えると、前年実績を大きく上回りそうだ。
ところが価格ベースで見ると前年同期比で約4000万円も落ち込んだ。背景には中国や東欧から価格的にこなれた潤紡糸の輸入が増加しているためだ。価格競争に巻き込まれない、新素材の開発が素材メーカーで活発化してきた。
帝国繊維の場合、繊維事業部の今中間決算(1~6月)は特需がなくなったため、前年同期比減収減益となったものの、衣料部門は前年からの麻ブームを受け、増収増益に推移した。今年は「クールビズ」の影響もあり「例年9月から注文が入るのが、盆明けからすでに動いている」(徳田支店長)と、麻・ポリエステル混糸「リネトロン」や麻綿糸「アスロン」などの販売に力を入れ、前年比5割増の販売量を目指す。
とくに伊藤忠商事と取り組み、拡販を進めるリネン・綿のコンパクト糸「テイセン リネデラン」は、販売2年目に入り「今年は市場に定着させる大事な年」と位置づける。従来品種から30単を新たに追加し、販路を広げる。
トスコはハリコシや光沢感に特徴のあるラミー80%・綿20%の梳毛糸「ラミーエース」の販売を本格化。三原工場(広島県三原市)では細番手を中心に紡績し、海外品との差別化を図る。水溶性ビニロン使いの麻100%糸は180番(麻番手)を供給でき、昨年から糸売りも開始した。湿式紡績による潤紡糸で同程度の細番手が1キロ当たり3万~4万円するのに対し、同社の水溶性ビニロン使いは1万円以下と、非常に値ごろ感がある。
富士紡では綿・ラミー混糸「リネローレル」(織物「ランライル」商標)をシャツ地などの織物だけでなく丸編み向けに販路を拡大している。綿麻混のムラ糸を開発中だ。通常、綿麻同混率素材の場合「他社では20番手までしか紡績していないが、当社では40番手まで紡績することが可能」(山口寿男紡織営業部次長兼原糸課長)と細番手を展開するのが富士紡の強み。大分工場(大分市)では麻の高混率化、細番手化した素材の開発も進める。
形状変化糸を得意とするミマス(三重県度会郡)も麻混素材の販売が好調で、昨年は「前年比で10~15%近く販売量が伸びた」(清水映次取締役営業統括部長)。ポリエステルやレーヨンと麻混のスラブ糸では多数の品番を手張りでそろえ、1キロからの短納期対応できることが同社の強みだ。
他にも新内外綿がブルーリネンを使った綿や「テンセル」混素材を、ダイワボウが人気の空紡糸「エアコンパクト」でリネン混を来春夏向けに打ち出す。