不織布新書05秋/三澤繊維、トーア紡マテリアル、双日、NI帝人商事

2005年09月28日 (水曜日)

三澤繊維/6月から2交替にシフト

 三澤繊維(大阪府阪南市)は、03年11月から不織布事業に参入し、少しずつ事業が軌道に乗り始めてきた。今年6月には生産体制を1交替から2交替にシフト、積極的な営業活動で受注を増やしている。

 昨年の春に開発した綿100%不織布は、衣料資材向けに月3000~5000平方メートルまでに生産が拡大。肩パット、キルティング用中わた、便座シートなどの用途にも広がりを見せる。土木用や詰めわた用などの不織布の開発も進める。

 また「自動車業界を中心にエコロジーに対する意識が高まってきた」(三澤猛史経営企画室長)ことから、“先手”を打って、天然素材を用いた不織布の開発も進める。現在、具体的に開発を進めるのが、竹そのものの繊維100%の不織布だ。ただし、繊維の特徴から100グラム以上の目付けがないと生産できず、レーヨンを50%程度混ぜれば、60グラムの目付けでも対応できる。

 設備はニードルパンチ、ケミカルボンド(スプレー)、サーマルボンドなどの不織布の生産が可能。三澤経営企画室長は「付加価値の高い商品を展開していきたい」と、幅広い用途に営業活動をする方針だ。

トーア紡マテリアル/今上期は微増収に

 トーア紡マテリアルの今上期(1~6月)不織布事業は、微増収となった。ベッド資材は苦戦したものの、災害復旧作業に伴う土木資材向けが増えた。また、自動車資材用不織布も堅調に推移したが、ポリプロピレン短繊維は原料の高騰によって厳しい状況だった。

 今下期は上期に引き続いて増収を狙う。7、8月と良くなかった自動車資材が9月以降は回復してきたことや、土木資材向けで、引き続き増加を見込めることなどが背景にある。

 また、原料高騰で利益面は厳しい状況にあるが、その高騰分を販売価格に転嫁させる作業も進める。同時に歩留まりを高めるために生産面の効率化も図る。

 将来に向けては土木資材、ベッド資材以外の開発も進める考えで「新たな柱をもう一本作りたい」(米田文隆取締役NW事業本部長)と言う。

 なお、持ち株親会社のトーア紡コーポレーションは8月に前中期計画を前倒しで終了させ、今下期を初年度とする中期3カ年計画を策定した。この中ではインテリア・産業資材分野について「戦略的事業として中核に位置づけ、成長を図る」方針。その拡大策としては(1)新技術導入によって付加価値の高い資材を開発する(2)中国で不織布製造の合弁を立ち上げ、現地供給、現地販売や日本への持ち帰り輸入も行う―の2点を発表している。

双日/レンチングの素材を核に

 双日生活産業部門パルテックス事業部の原料資材ユニットは、オーストリアのレンチング・ファイバーズ社の原着レーヨン、難燃レーヨン、そして「テンセル」を中心に不織布原料事業を展開する。名古屋、神戸、熊本の国内3カ所に倉庫を構え、国内不織布メーカーに1ベールから原料を供給できる体制を敷いている。

 同社が供給するレンチングのレーヨンは環境や人に優しい塩素フリータイプで、世界的な流れに対応した差別化原料だ。同ユニットの中安一仁第一チームリーダーは、ワイピングクロスやウエットティッシュ向けの展開で「着目してくれるお客様が確実に増えている」と胸を張る。

 同社の不織布原料事業は、中心となるレーヨン素材以外にも国内の大手合繊メーカーとの取り組みによる化合繊系の幅広い商品をそろえ、国内の顧客に原料を供給している。また、国内だけでなく海外の不織布メーカーと共同で商品開発を進め、北米向けを中心に現地法人と連携しながら、グローバルに販売を展開する。

 中安チームリーダーは「われわれの不織布関連事業は、値段で勝負するものではない。品質と差別化された特色で業界に貢献する」と、目先の利益だけにこだわらず、業界全体が繁栄できるビジネスの構築に意欲をみせる。

 同社は今後も“差別化”を全面に打ち出して、レンチングの原着レーヨン、難燃レーヨン、テンセル素材を中心とした不織布事業の展開を図る。

NI帝人商事・山本亨常務繊維資材部門長兼インテリア本部長/メーカーとの協働に注力

――今上期の業績は。

 上期は前年並みを維持するが、計画には少し届かない予定。下期に向けては明るい材料が出てきた。

――苦戦の要因はどこにあったのか。

 アラミド繊維、炭素繊維など高機能素材の供給不足が響いている。昨年良かった液晶関連分野で在庫調整が行われていることも苦戦要因のひとつ。インテリア、寝装関連商材も不振だったが、これは構造的なものだと考えている。一方で自動車分野は堅調を続けている。

――下期の好材料とは。

 アラミド繊維、炭素繊維に代わる新たな機能商材の手当が進むことや液晶関連の在庫調整が一巡することなどが挙げられる。好調を堅持するカーシート関連商材ともあいまって、06年3月期は、通期で3~4%の成長を見込んでいる。

――不織布をどう見ているのか。

 不織布は織物や編み物と同じように商材の一つの形として完全に定着してきた。マーケットが広がったため、不織布事業という一つの括りで見ることはできない。各分野で用途に合った不織布を拡販している。

――まだまだ伸びる?

 資材用途の断熱材や自動車向けなどまだまだ伸びると見ている。オーツカ(岐阜県羽島郡)さんとの資材分野での協力や日本不織布(滋賀県東近江市)さんとのコラボレーションなど、今後も不織布には注力していく。

――繊維資材の海外加工拠点は順調に進んでいるのか。

 タイのカーシート、車両資材関連の加工拠点はすでに生産体制を確立したため、06年度から本格化する。ゴム資材対応の加工拠点も順調に準備が進み、06年度に稼働し始める予定だ。

――中国は。

 ゴム資材向けの加工拠点が年内にも製品供給を開始する。一方、カーシート、車両資材関連向けの加工拠点は06年の立ち上げに向けて着々と準備が進んでいる。われわれの製品は、限りなく日本品質に近く、限りなく中国コストに近い。中国自動車産業は今後大きく伸びる予想されるため、期待している。