機能素材・加工特集/機能素材の宝庫、ニッポン
2006年02月28日 (火曜日)
差別化商品企画にも役立つ
日本の繊維素材産業は縮小均衡の道を歩んできた。中国など近隣諸国の成長によって、定番品を中心に競争力が低下。輸入攻勢を受け、必然的に量の減少を余儀なくされている。そのなかで、繊維素材メーカーは世界的に秀でた技術力を生かし、機能性を重視した開発に力点を移している。例えば、かつてファッション性が高い婦人服地が主力であった合繊メーカーの生地販売は昨今、インナー、スポーツ、ユニフォームなど機能性を重視する用途へ比重を移している。本特集では数多くの機能素材を開発する日本の繊維素材メーカーの技術力の高さを証明する一方、アパレル・小売りなどの商品企画に役立つ話題の機能素材を紹介する。
昨夏、衣料用繊維業界の話題をさらった「クールビズ」。環境省が「地球温暖化防止国民運動」(愛称・チーム・マイナス6%)の推進の一環で、夏の新しいビジネススタイルとして提唱したものだが、紳士服業界には特需と言える効果をもたらした。
そんなクールビズは今年で2年目だけに、ブームかどうかの真価が問われる。ただ、色柄、デザインだけではインパクトに欠ける。それだけに、吸水速乾性をはじめとする日本の機能素材が活躍する場が広がっている。
東洋紡が昨年発表した「クールサイエンス」企画や東レの「クール白書」企画などはクールビズをターゲットにした商品企画だが、それぞれ独自に設定した基準値があり、それをクリアした機能素材を使用する。
こうしたクールビズや冬の「ウォームビズ」に限らず、繊維素材メーカーは機能素材の開発、上市に力点を置いている。
例えば、東レが昨年発表した新素材をみると、非ハロゲン系難燃加工素材、花粉付着抑制素材、耐塩素性水着素材、耐久撥水加工素材、汗冷え軽減ストレッチ素材など、大半が何らかの機能性をうたったものだ。
合繊メーカーのなかで、ファッション性の高い婦人服地に比較的力を入れる東レでさえ、こうした方向なのだから同業他社は推して知るべし。
衣料に使用される機能素材は着用時の快適性をいかに高めるかが焦点だ。熱い時は涼しく、寒い時は暖かくというもので、各条件に応じた機能性はますます高い性能を求められる。それを実現できるのは、中国などの海外ではなく、やはり日本の繊維素材メーカーしかない。
欧米のスポーツメガブランドがあえて高価格の日本の機能素材を使用しているのも、その性能の高さを評価しているからにほかならない。
その最たるものが、産業資材用繊維だ。基準を満たす性能を実現しなければ、需要家には見向きもされない世界。そこでは機能そのものがモノを言う。
繊維素材のなかで脚光浴びる炭素繊維は代表格。東レ、帝人グループの東邦テナックス、三菱レイヨンが世界シェアの大半を握る。それは日本の技術開発力がいかに優れているかを証明しているとも言える。
こうした産業資材用繊維は少しかけ離れた存在かもしれないが、同質化が問題となっている衣料製品を企画するうえでは、日本の繊維素材メーカーが開発している機能素材の活用は一つの武器になるのではないだろうか。
色柄、デザインが同質化するなかで、素材、そして機能性が一つの売り文句になるはず。事実、ファーストリテイリングの「ユニクロ」製品も色柄、デザインにとどまらず、機能性をうたった商品が多い。
婦人服で機能を訴える製品はあまり多くないものの、こうした機能素材を取り入れることで、新たな切り口が見つかる。その面で世界的にも例がないほど多種多様な機能素材を有する繊維素材メーカーがある日本。そこに居を置くアパレルなど川下業界はある意味、恵まれている。日本の機能素材を使わない手はない。
ゲルマニウム/健康志向の中注目高まる
健康志向が高まるなか、ゲルマニウムの機能が注目されている。他の分野でも話題を集めているが、繊維関係では清川が特許を持ち、オーミケンシが生産するゲルマニウム練り込みレーヨン「チオクリーン」などの素材が展開されている。
ゲルマニウムは32番目の元素で炭素元素の一つ。接触面の温度が32℃以上になると、一番外側のマイナス電子が外へ飛び出し、電子浸透圧が働いてイオン化して皮膚組織の下に浸透。その電子特性によって血行を促進し、細胞を活性化させて細胞内の電流バランスを整えるという。その身体の生体電流を活性化させることで血行をよくすることで筋肉のコリ、痛み、疲労を緩和させる働きが期待できる。チオクリーンは鉱石から精製した酸化ゲルマニウムを使用。これとマイナス電子の放出を助けるための材料であるジリニウムの混合粉末をレーヨンに練り込んでいる。同社の調査では生地にした際のゲルマニウム含有量は4700PPB(ゲルマニウムレーヨン50%・綿50%の交編ダンボール素材)。練り込んだゲルマニウムが落ちておらず高い数値が得られたという。
モノポリーでナイティ商品を展開するのがカイタックファミリー。母の日や父の日といったイベント企画を中心に展開しているが、「健康志向が高まるなかで好調に動いている商品。今後も継続する」と話している。
調温素材/衣服内の温度を快適に調整
屋外と冷暖房の効いた室内との両方で快適に過ごすことのできる素材が商品化された。それが温度調節素材で、相変化物質を繊維に練り込んだ商品と後加工によって付与した商品が展開されている。とくに効果が期待できるインナーなど肌に接する商品での採用が進んでいる。温度を調整する役割を果たす相変化物質が溶融解する温度は調節できるため、オールシーズン対応素材として注目を集めている。
温度調節素材の仕組みは、素材に付与した相変化物質が溶融解することで温度を調整するというもの。気温が上昇した際には相変化物質が溶け、融解熱の吸収によって生地の温度上昇を抑える。また、気温が下がった際にはそれが固まって凝固熱を放出するため、衣服内の温度変化を緩やかなものとする。相変化物質は潜熱量の高いパラフィン類が主流だ。
練り込みタイプを展開するのがオーミケンシ。「97.6F。」はパラフィン類の相変化物質を練り込んだレーヨンで、インナーなどの用途で販売が進んでいる。練り込み型のため、耐洗濯性がより高いという特徴がある。交編・交織によって素材バリエーションも幅広いものとなる。
また、相変化物質を含有したマイクロカプセルを後加工によって付与した商品では、富士紡の「サーマライブ」、ダイワボウの「サーモカプセル」などがある。加工は素材との親和性が高く様々な素材に応用が可能となる。
花粉症対策/数多いが、手法様々
春先。道にはマスクをした人が目に付く。毎年恒例の風景とも言える花粉症対策の一例。その姿は毎年増え続けている。これに対応し、花粉症対策の機能素材も数多く開発されている。
花粉症とは花粉が割れ、そのなかのアレルゲンが放出されて、粘膜に浸透しアレルギー症状を起こす仕組みで、アレルギー疾患の一つだ。アレルギー疾患としては、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などもある。これらは、室内に居住するダニ(チリダニ)が原因で、駆除しても死骸や糞からアレルゲン性の高い物質を放出する。そして花粉症同様に粘膜に浸透してアレルギー症状を引き起こす。
こうしたアレルギー、なかでも花粉症を防ぐために、様々な機能素材が開発されている。その一つが花粉の付着を防止するものだが、これではアレルゲンを防ぐことはできない。しかし、アレルゲンの活動を抑制する、あるいは低減する機能素材も開発済みだ。
手法としては(1)ポリマーでアレルゲンの表面を覆う(2)アレルゲンにアタックして構造を変える(3)アレルゲンを吸着する(4)アレルゲンと数多くの手で結合し覆う――などがある。
代表例をあげると(2)はダイワボウの「アレルキャッチャー」、(3)はシキボウの「カウンターペインP」、(4)は小松精錬が積水化学工業と共同開発した「アレルバスター」になる。
今年の花粉飛散は少なめだが、備えあれば憂いなし。そして、日本の花粉症対策素材も十二分に揃っている。
鳥インフルエンザ対策/日清紡、ダイワボウが開発
鳥インフルエンザの人への感染がじわじわと拡大している。今年に入りトルコ、イラクなど東アジア以外で初めての死者が出たうえ、中国やインドネシアでも死者が増加。欧州ではウイルス感染した野鳥も見つかっており、EUも対応を急いでいる。
そんな鳥インフルエンザに対応した素材開発が日本で進んでいる。昨年12月、日清紡、ダイワボウが発表した。日清紡は帯広畜産大学、ダイワボウは用瀬電気(鳥取市)、鳥取大学との産学共同で開発したものだ。
日清紡が開発したのはコットンとゼオライト(アルミとナトリウムとケイ素からなる無機鉱物)の複合繊維素材「ガイアコット」が鳥インフルエンザウイルスを不活性化するというもの。
共同研究によれば、ガイアコットと鳥インフルエンザウイルスが10分間、接触するだけで99%以上の不活性化効果が得られると言う。
一方、ダイワボウが開発した抗ウイルス不織布は、共同研究結果によると、鳥インフルエンザウイルスの数を1分間で99.99%減少させるという。
繊維表面に固着した抗ウイルス剤が繊維中に埋没するのを防ぐため、芯鞘型複合繊維を使用。鞘部分に抗ウイルス剤を接着固着させる特殊樹脂を、約5マイクロメートルの厚みで構成し、抗ウイルス剤は繊維表面に露出した状態で保持する。
日本ではこうした医療に近い分野でも開発が進んでいる。日本の技術開発力の高さを証明している。




