在中国日系商社のOEM事業/生産背景の見直し進む
2006年06月01日 (木曜日)
中国の日系商社は年々、日本向けOEM(相手先ブランドによる生産)製品事業を拡大、今期も数量ベースで前年を上回る企業が大半を占め、今後ますますOEM製品ビジネスが増加する傾向にある。一方で為替、人件費、小ロット短納期化などによるコスト上昇で、現地生産拠点の見直しを迫られている。 (上海オフィス)
春夏の日本向けOEM製品は各社好調に推移した。丸紅繊維〈上海〉(MTS)では、メンズシャツが数量ベースで前年比1・5倍に増えた。伊藤忠繊維貿易〈中国〉(ITS)では婦人物が数量、金額ベースともに同10%増で推移。取り扱いの50%をレディースが占める菱華商業〈上海〉(三菱商事)も数量ベースで同約10%増と、押しなべて堅調だった。
今秋冬向けでは「昨年は厳冬で、仕込みが遅くなかったことから在庫を売り切ったアパレルが多かった」(蝶理〈中国〉商業の榎本寿夫副総経理)ことで、とくにダウンジャケットやウール素材関連などの婦人物の動きは比較的活発になっている。
ただ、昨年に比べ協力工場の工賃が“爆発的に”上がっている感触はないものの「為替、電力、人件費など、コストが下がる要因は何一つない」(菱華商業〈上海〉の妹背伸宏第一事業部長)と、各社一致した懸念材料が浮上する。「受注が拡大しただけに、手間が増え、適正な人員配置が難しくなってきた」(MTSの杠俊彦生産管理部副部長)ことで、生産背景の見直しが各社の今後の課題として昨年以上に重くのしかかってきた。
生産拠点は着実に沿海部から内陸部へ拡散しつつある。内陸部の工場を活用した場合、トータルコストを見れば、生産管理費などが間尺に合わず、新たに生産拠点を求めるのは「すでに限界だ」との声も聞こえ始めた。ITSの岩成斉営業第三部長は工場の選定基準として「品質面はともかく、売上高・生産数量よりも月に何品番をこなせるかを重視する傾向にある」と、今までとは変化が出てきたことを指摘する。
さらに現地の協力工場自身でも、工場間での生き残りを掛けた競争が激化、「工場自体をブランド化して、外注コストを抑える」(MTSの橋本雅至総経理)方針を打ち出す工場も増えてきた。すでにCMT(副資材込み縫製工賃)ビジネスは軽衣料では利益をひねり出すことが難しくなってきており、素材調達までを含めた縫製品のFOB(本船積込み価格)を契約条件にした取引をするケースに移り代わりつつある。
なかには一貫生産の責任を持つ代わりに、受注先から素材の持ち込みを断り、独自調達ルートで対応する工場も見られるという。工場自身の素材調達力も問われる時代に入ってきた。
中国国内だけでなく海外に新たな拠点を求める動きも依然強い。中国製品比率が9割を占める住金物産のアセアン諸国へのシフトはその一例だ。もちろん、単なる生産拠点の移転ではなくアセアンでの拠点作りに並行して、中国の生産拠点の強化も進める。
同社の場合、中国の自社工場15社、協力工場約100社を活用し、SCM(サプライチェーン・マネジメント)を構築するツール「WINDS」(ウインズ)が軌道に乗り始めた。同システムは電子通関や生産管理を中国にある中国生産管理センター(CPC)で行い、日本の港から各店舗に数枚ずつからでも直送できる。ICタグによるコスト削減も研究段階で、トータルコスト削減に向けての仕組み作りを加速する。




